研究領域 | 散乱・揺らぎ場の包括的理解と透視の科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05887
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
粟辻 安浩 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (80293984)
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研究分担者 |
角江 崇 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (40634580)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
148,590千円 (直接経費: 114,300千円、間接経費: 34,290千円)
2024年度: 23,530千円 (直接経費: 18,100千円、間接経費: 5,430千円)
2023年度: 20,800千円 (直接経費: 16,000千円、間接経費: 4,800千円)
2022年度: 26,390千円 (直接経費: 20,300千円、間接経費: 6,090千円)
2021年度: 13,130千円 (直接経費: 10,100千円、間接経費: 3,030千円)
2020年度: 64,740千円 (直接経費: 49,800千円、間接経費: 14,940千円)
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キーワード | 光工学・光量子科学 / 超高速動画 / ホログラフィー / フェムト秒テクノロジー / イメージング / 高速度イメージング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,散乱媒質中を伝搬する光の動画像記録技術の極限を追求する.性能的には毎秒100兆コマ相当の動画像を可能にする方法を検討し,実証にチャレンジする.さらに,散乱媒質中を伝搬する光の動画像記録に展開する.その後,光伝搬動画像記録における光散乱特性の解析と散乱の補償方法を検討し,コンピュータによる計算補償の実証にチャレンジする.さらに,顕微鏡技術とこの技術を融合し生細胞おける完全データ取得を行う技術の創出を目指して,生細胞中を伝搬する光の様子の動画像記録と観察方法を検討する.
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研究実績の概要 |
前年度に構築した,光パルスが伝播する様子の拡大像のディジタル動画像記録・観察するための基本光学系では拡大率7.8倍であり,微小領域や生物細胞中を伝播する光パルスを動画像として記録・観察するには,倍率が低いという問題があった.生物の細胞のように,より微小な領域を伝播する光の動画像を記録できるように拡大率の向上方法を検討した.拡大率を向上させる場合,参照光パルスが撮像素子を横切る速度と物体照明光パルスが物体を横切る速度との差がさらに大きくなる.その差を補正するために,物体照明光パルスが被写体に入射する角度が,参照光パルスが撮像素子に対する入射角度より大きくなるようにホログラムを記録する必要がある.それぞれの適切な入射角度を計算により明らかにした. 伝播する光の拡大像動画像を,より長時間記録するための技術とその実現方法を前年度に検討し,時空間的により広範囲にわたる光の伝播の様子を記録可能にする方法を考案した.この方法では,複数のホログラムをシングルショットで記録できるが,この方法では,偏光イメージングカメラという特殊なカメラが必要であった.偏光カメラが不要で通常のカメラを用いることで,光が伝播する様子の複数の動画像の同時記録を,より一般的に実現できる方法を考案した.考案方法では,参照光パルスを複数に分割し,それぞれの参照光パルスをイメージセンサーに異なる角度で入射させるという角度分割多重により複数の光伝播の動画像をシングルショットで記録する.実験により考案方法の有効性を確認した. 一般に,光の散乱特性は,光の波長に依って異なる.伝播する光パルスの動画像記録技術において,記録に用いる光の波長に対して得られる再生像やその特性については,報告例が無い.そこで,光パルスの動画像記録に用いる光パルスの波長を変えた場合の像再生計算のアルゴリズムを開発しそのプログラムを実装した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光パルスが伝播する様子のディジタル動画像記録と観察が可能なシステムにおいて,より微小な領域を伝播する光の動画像を記録できるように拡大率の向上方法の考案した.また考案方法に起因する問題である,動画像の記録可能時間が減少するという問題を解決できる方法も考案した.考案方法では,物体照明光パルスが物体を照明する角度と参照光パルスがイメージセンサーを照明する角度を同一にするため物体照明光のパルス面を傾けることで問題を解決する.物体照明光パルスのパルス面を傾ける方法として回折格子を利用して実現する方法を考案し,その有効性を実験により既に確認できている.また,生物の細胞レベルの微小な領域を伝播する光の動画像を記録できるシステムの構成を明らかにした上でこのシステムの設計ならびに予備実験に成功しており,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に構築した,光パルスが伝播する様子の拡大像のディジタル動画像記録・観察するための基本光学系では,拡大率7.8倍であり,微小領域や生物細胞中を伝播する光パルスを動画像として記録・観察するには,倍率が低い.そこで本年度は,より微小な領域を伝播する光の動画像を記録できるように,拡大率を30倍にした光パルスが伝播する様子のディジタル動画像記録・観察するシステムの設計と構築を行う.拡大率の増大に伴い動画像の記録可能時間が減少するという問題を解決するために必要な物体照明光パルスの光パルス面の傾き角度を明らかにする.また,この傾き角度を実現する回折格子を設計,製作し,その有効性を実験により確認する.また,製作した回折格子を拡大率30倍にした光パルスが伝播する様子のディジタル動画像記録・観察するシステムに導入して,生体試料を伝播する光パルスの拡大動画像記録可能性を試験する. 一般に,光の散乱特性は,光の波長に依って異なる.伝播する光パルスの動画像記録技術において,記録に用いる光の波長に対して得られる再生像やその特性については,未だ報告例が無い.そこで,前年度に開発した伝播する光パルスの動画像記録に用いる光パルスの波長を変えた場合の像再生計算プログラムを用いて,超短光パルスを構成する波長成分がどのように伝播するかを調べることで,伝播する光パルスの動画像記録技術の波長特性を明らかにする.また,超短光パルスを構成する波長成分の伝播を動画像記録するための実験システムを設計・構築する. ホログラフィーの記録について高度な知識を持つ(株)久保田ホログラム工房 久保田敏弘博士,神戸大学 的場修教授,産業技術総合研究所 夏鵬研究員,京都工芸繊維大学 Sudheesh Kumar Rajput博士研究員,広島大学 井上智好特別研究員と議論ならびに助言を受けながら研究を進める.
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