研究領域 | 散乱・揺らぎ場の包括的理解と透視の科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05889
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
木村 建次郎 神戸大学, 数理・データサイエンスセンター, 教授 (10437246)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
140,790千円 (直接経費: 108,300千円、間接経費: 32,490千円)
2024年度: 25,740千円 (直接経費: 19,800千円、間接経費: 5,940千円)
2023年度: 27,040千円 (直接経費: 20,800千円、間接経費: 6,240千円)
2022年度: 29,640千円 (直接経費: 22,800千円、間接経費: 6,840千円)
2021年度: 32,370千円 (直接経費: 24,900千円、間接経費: 7,470千円)
2020年度: 26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
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キーワード | イメージングの数理 / 散乱トモグラフィ / 逆解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、物体表面で得られる観測結果から物体内部の構造を、多次元散乱場に関する偏微分方程式を逆解析することにより断層映像化する世界初のイメージングの数理を創出する。映像化のための理論では、この多次元散乱場に関する方程式を、双曲型の偏微分方程式として導き、表面での観測結果を境界値として解析的に解き、一意性を持つ断層映像を高速に再構成する。本プロジェクトでは、理論の深化と共に、この映像化の理論を基にした、ソフトウェア研究を進め、原理実証、アプリケーション開発を目的とした試作装置の開発を実施する。
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研究実績の概要 |
波動を用いた物体内の透視を行うために波動散乱の逆問題を解析的に解く、散乱場理論を構築してきた。2022年度は、これらを多重散乱の伴う逆散乱問題という難問の解決のために発展させた。我々が導いた散乱場理論においては、散乱場関数を定義するが、例えば、誘電率の空間分布を示す関数の値が大きなところで散乱する現象を波動の(放射点,受信点)の関数として捉え、(放射点,受信点)を領域内全体に拡張し、散乱場と称する。散乱場の関数は、散乱場方程式を満足し、その一般解は解析的に導くことができ、一般解に含まれる核関数は、領域の境界における観測結果により完全に決定される。映像化関数は、放射点と受信点の極限操作によって導かれる。このプロセスの中で、散乱場関数が直接領域の境界における観測結果と結びつくというのは多重散乱が無いという前提に基づく。しかし多重反射を無視できない場合には、2次、3次、4次の散乱の存在を考慮しなければならない。2022年度は、多重反射を考慮した散乱の逆問題を解く方法について理論的考察を纏めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
散乱場理論は、単に理論上の美しさや新しさというだけではなく実用上もコンピュータソフトウエアの基礎として優れた数学的アルゴリズムを生み出すために役立った。観測結果から瞬時に正確な3次元再構成画像を計算できるので画像診断分野への応用が計り知れない。2022年度は、散乱場理論に多重散乱問題を組み込む研究を実施した。2次以上の多重反射を、先に述べた散乱場の偏微分方程式の4種類の基本解を組合わせて表現する。4つの基本解を合成して多重散乱を表現することから、多重散乱を考慮した逆解析を行うためには領域の境界全体での散乱波の観測結果が必要になることは明らかである。散乱場の基本解は4種類あるが、E3とE4は複素共役の関係にあるので、独立に考えるべきは3種類である。これらの値を観測結果から決定するためには2つの後方散乱と前方散乱による計測が必須である。3次元領域での多重反射を考慮した逆散乱解析は、これまで数学的に困難とされる問題となっており、散乱場理論を用いて逆散乱問題の解を与える本研究が当該分野で最初のことである。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、波動散乱の逆問題を解析的に解き、領域内部の構造を断層映像化する散乱場理論・映像化理論の確立に成功してきた。断層映像化においては、観測結果を境界値として導かれた散乱場関数の時間空間の極限操作によって映像化関数を導く。これまで、本研究では、領域内における電磁波の伝搬媒質が誘電分散を示す際に、電磁波の伝搬速度の周波数依存性を取りこみ、領域内部の断層映像化を行う、“誘電分散を示す媒質中における散乱場理論”の確立と実証を行ってきた。さらに、波動の減衰が少なく、多重散乱が観測しえる領域での波動散乱の逆問題にむけて、多重散乱の効果を組み込んだ散乱場理論・映像化理論の構築を完了した。今後の研究としては、これまでの成果を踏まえて、工学的見地において重要な映像化理論の確立を進めていく。具体的には、有限の広さをもつ波動送信領域、受信領域が設定され、これを観測器とした場合、観測器が観測対象空間内の、選択した領域に波動を照射し、その領域内での散乱逆問題を解く理論の構築を進める。さらに、波動の伝搬において減衰著しく、透視が困難な観測対象において、静的もしくは準静的な場を用いた映像化理論の研究を行い、工学的限界を組み込んだ普遍的な理論体系の確立を行う。
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