研究領域 | 散乱・揺らぎ場の包括的理解と透視の科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05890
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
谷田 純 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 特任教授 (00183070)
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研究分担者 |
中村 友哉 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (70756709)
西崎 陽平 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (40768933)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
149,500千円 (直接経費: 115,000千円、間接経費: 34,500千円)
2024年度: 18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2023年度: 24,440千円 (直接経費: 18,800千円、間接経費: 5,640千円)
2022年度: 18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2021年度: 16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)
2020年度: 71,110千円 (直接経費: 54,700千円、間接経費: 16,410千円)
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キーワード | 散乱透視学 / 散乱・揺らぎ場 / 機械学習 / スペックル / ディジタルツイン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、機械学習やスペックル相関イメージングなど情報工学に基づく手法を活用して、簡素な光学系による非侵襲な散乱イメージングを開発する。敵対的生成ネットワークなど最新の深層学習モデルによる高機能化と、スペックル相関イメージングの多次元化や視野拡大に取り組む。一方、時間変化する散乱媒質を介したイメージング技術の開発も進める。高時間分解能計測により、計測散乱場の逆関数を高速更新する手法、リカレントニューラルネットワークにより散乱媒質の時間変化を推定する手法などの研究を進める。さらに、ディジタルツインの概念により、情報工学に基づいた散乱・揺らぎ場の透視化に関する系統的学理の形成をめざす。
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研究実績の概要 |
機械学習を用いた散乱イメージングにおいて、敵対的生成ネットワーク(GAN)などの教師なし学習や半教師あり学習を活用し、時間コストや侵襲性の最小化と推定性能の最大化の両立に取り組む。本年度は、散乱体を通したイメージングに向け、符号化開口を利用したシングルショット散乱イメージングについて取り組んだ。瞳面における点像分布関数の未知数を削減させることにより、インコヒーレント光およびコヒーレント光を用いた散乱イメージングを実現させる。実験実証として、照明された対象に対して収差を与えて撮像し、再構成に取り組んだ。また、簡素な光学系で散乱体への侵襲を伴うことのないスペックル相関イメージングの高度化を図るべく、これまでの研究により3次元への拡張および波長次元への拡張に成功してきた。ただし、メモリ効果の範囲により、本手法の適用範囲は小領域に限定される課題があった。本年度は、対象推定と同時に散乱特性を推定することにより、制限の緩和を図る。実験実証として、インコヒーレント光を用いて、散乱体に挟まれた物体の再構成に取り組んだ。また、動的散乱イメージングの実現に向け、多重計測に基づく散乱行列の高速取得手法の開発について、実証実験を中心に実施した。多波長光源による散乱光を像面上で光学的に多重化し、これをモノクロセンサで計測する系によって得られた多波長の散乱強度画像群から、多波長散乱行列の推定を実装した。また、この多波長散乱行列を用いた計測対象の複素振幅再構成を実験的に確認した。その結果、提案する計測手法が実環境下で実現可能であることを示すことができた。さらに、多重化による高速化効果を、数値及び光学実験により検証した.それぞれにおいて、非多重化方式による方法よりも高速化されることを定性的及び定量的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
符号化開口を活用したインコヒーレント光を用いたシングルショット散乱イメージングを数値シミュレーションおよび光学実験にて実証し、論文化を完了した。本研究は国内・国際会議にて報告済みである。さらに、符号化開口を利用した本技術をコヒーレント光を利用した場合に拡張し、散乱体背後の複素振幅物体をシングルショットで可視化できることを数値シミュレーションおよび光学実験にて実証した。現在、論文投稿を完了し、査読中である。また、スペックル相関イメージングの視野制限緩和について、インコヒーレント光を用いた数値シミュレーションおよび光学実験にて実証を行った。対象の推定と同時に散乱特性を推定するアルゴリズムを導入することにより、散乱体に挟まれた物体の再構成に成功した。本研究成果は論文化および国内会議での報告を完了している。さらに、インコヒーレント光による散乱体を介したデジタル位相共役手法、シフト不変な散乱過程を用いたコヒーレント光回折イメージングについても論文化した。動的散乱イメージングに関する課題については、散乱行列の多重計測手法についての実験実証が概ね完了した。性能を評価する上で必要となる高速化効果と再構成精度についても、定性及び定量的な解析が完了した。動的散乱イメージングへの拡張については、まだ検討初期段階であるが、物理現象を観察するマルチモードファイバ光学系を構築し、手法設計に関する議論が進行している。次年度には計測データの解析や処理に基づく動的散乱イメージングの実現について、初期的な成果が得られる見通しである。以上の事から、本研究は計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
我々の研究グループではこれまでの研究により、散乱成分の低減や除去等を必要としない、スペックル画像による機械学習を用いた分類器の開発に成功してきた。今後、本技術を効率的かつ高性能化させるべく、散乱環境下であることを利用した本技術の拡張手法の数値シミュレーションならびに光学実験による実証に取り組む。また、スペックル相関イメージングに関して、これまでの研究により、3次元あるいは波長次元の対象にまで拡張することが可能となった。さらに、本年度の成果により、スパースな対象であれば、視野の制限緩和ができることを実験実証することに成功している。今後、機械学習を導入することにより、スパース性の緩和にも取り組み、スペックル相関イメージングの更なる高度化を図る。動的散乱イメージングについては、散乱行列による動的透視の実現のため、新規原理設計から実験実証まで実施することを目指す。散乱光学系のターゲットとしてマルチモードファイバから成る光学系を想定し、この散乱の複素場を観察する干渉計測系を構築し現象を観察する。その結果に基づき、行列の動的更新モデルあるいは形状不変再構成モデルを設計する。その後、数値及び光学実験による手法の妥当性の検証を進める。シンプルな系において、光学実験に基づく原理実証結果を得ることを次年度の目標とする。
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