研究領域 | 散乱・揺らぎ場の包括的理解と透視の科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05891
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 (2024) 宇都宮大学 (2020-2023) |
研究代表者 |
松田 厚志 (2024) 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所神戸フロンティア研究センター, 研究マネージャー (20585723)
玉田 洋介 (2020-2023) 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (50579290)
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研究分担者 |
坂本 丞 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設), 生命創成探究センター, 特任研究員 (80804145)
友井 拓実 東京理科大学, 創域理工学部生命生物科学科, 助教 (70880996)
松田 厚志 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所神戸フロンティア研究センター, 主任研究員 (20585723)
平野 泰弘 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 特任講師(常勤) (10508641)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
133,770千円 (直接経費: 102,900千円、間接経費: 30,870千円)
2024年度: 25,610千円 (直接経費: 19,700千円、間接経費: 5,910千円)
2023年度: 23,790千円 (直接経費: 18,300千円、間接経費: 5,490千円)
2022年度: 24,830千円 (直接経費: 19,100千円、間接経費: 5,730千円)
2021年度: 24,050千円 (直接経費: 18,500千円、間接経費: 5,550千円)
2020年度: 35,490千円 (直接経費: 27,300千円、間接経費: 8,190千円)
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キーワード | 生細胞・組織 / 散乱 / 揺らぎ / 蛍光イメージング / 透視 |
研究開始時の研究の概要 |
生きた細胞や組織は特に強く複雑に光を散乱させる。しかし、微細な細胞構造や複雑な組織などによる光の散乱に関して、光学と生物学が一体となった包括的な研究は未だに存在しない。本研究では、所属する学術変革領域における異分野融合研究により、生体における光の散乱を詳細に計測し、散乱の根源となる生体構造を解明するとともに、生体における散乱をモデル化する。この情報に基づき、散乱を抑制する光波を合成して生組織深部に入射することで、生組織深部を透視する。また、散乱の少ない生物を遺伝子操作により作出し、生物学的に光学特性を向上させる。以上の研究により、生体深部の細胞核における染色質動態を分子レベルで解明する。
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研究実績の概要 |
早野計画研究の服部 雅之博士(国立天文台)、および三浦 則明博士(北見工業大学)との共同研究によって、点光源がなくても光の乱れを計測できる画像相関による波面計測法を、補償光学を用いた生細胞イメージングに高精度に適用する研究を継続した。さらに、画像相関による波面計測法を用いて生物の明視野像から光の乱れを計測する際に必要となる明瞭なコントラストを得るための適応的な光学系を用いて実際に生きた植物(ヒメツリガネゴケ)細胞の計測を行った。また、どのような生体物質が細胞内の光の擾乱に寄与するかを解明することを目標として、公募研究の渡部、計画研究の的場と強度輸送方程式について理論的な改変を行い論文として発表した。さらに、強度輸送方程式により測定した物体面の位相分布から瞳面の位相分布の導出を試み、導出した波面を用いて全視野顕微鏡における補償光学が実施可能かシミュレーションを行ったところ、光の乱れが補正され改善された像が得られた。 遺伝子操作によって散乱・揺らぎの小さい生物を作出する研究について、生きた植物細胞では葉緑体が散乱・揺らぎの主な原因であることを明らかにしており、クロロフィルなど油性の色素による高屈折率が光を乱す原因であると考えられた。これまでに作出した葉緑体の配置が変化する変異株や葉緑体における油性色素の量が低下するヒメツリガネゴケ変異株に加えて、薬剤に応答してクロロフィル分解酵素の発現が上昇する株などの新しい株の作出が進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生きた細胞や組織における光の乱れの計測と補正、遺伝子操作によって散乱の少ない生物を作出する研究について、おおむね順調に進展している。強度輸送方程式の理論的な改変や、強度輸送方程式から得られた位相情報をもとに光の乱れを補正するシミュレーションに成功するなど新しい成果も得られている。これらのことから、現在までの進捗状況を「(2) おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
生きた植物(ヒメツリガネゴケ)、動物(ミナミメダカ)、繊毛をもつ微生物(テトラヒメナ)、繊毛を持たない微生物(分裂酵母)における光の散乱・揺らぎを計測する研究と、それらを克服して生きた生物深部をイメージングする研究を継続する。的場・粟辻・渡邉計画研究との共同研究のもと、ホログラフィーや強度輸送方程式による光の散乱・揺らぎの計測と、光伝搬の直接可視化のための実験を進める。渡部、的場とともに理論的な改変を行い発表した強度輸送方程式を、これまでに遺伝子改変した生物試料へ適応し、どのような生体物質が細胞内の光の擾乱に寄与するかの検討を行う。また、公募研究との共同研究のもと、生きた生物における散乱・揺らぎを計測する研究を行う。以上の研究をもとに、的場・早野計画研究との共同研究のもと、散乱・揺らぎを打ち消す光波の入射や高精度補償光学の研究を進める。画像相関による波面計測法を、補償光学を用いた生細胞イメージングに高精度に適用する研究を継続する。また画像相関とは別の波面計測法として、強度輸送方程式により測定した物体面の位相分布から瞳面の位相分布を導出する方法を補償光学に応用する。そして、全視野顕微鏡において人工的に収差を付与した蛍光ビーズサンプル、または生物試料に対して光の乱れの補正と像の改善を行う。 上記に加えて、生きた動植物組織深部や微生物内部における散乱・揺らぎの解析のため、また透視の標的として、細胞核や染色質構造などを蛍光標識した生物の作出を継続する。また、遺伝子操作によって散乱・揺らぎの小さい生物を作出する研究について、昨年度までに作出した株に加え、薬剤に応答してクロロフィル分解酵素の発現が上昇する株などを作出する。これらの株についてホログラフィーや強度輸送方程式、位相差顕微鏡法、点像分布解析などを駆使して光の散乱・揺らぎを計測し、光学特性の改善を詳細に解明する研究を進める。
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