研究領域 | グリアデコーディング:脳-身体連関を規定するグリア情報の読み出しと理解 |
研究課題/領域番号 |
20H05896
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田中 謙二 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (30329700)
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研究分担者 |
松井 広 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (20435530)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
103,220千円 (直接経費: 79,400千円、間接経費: 23,820千円)
2024年度: 18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2023年度: 19,370千円 (直接経費: 14,900千円、間接経費: 4,470千円)
2022年度: 19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2021年度: 18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2020年度: 27,300千円 (直接経費: 21,000千円、間接経費: 6,300千円)
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キーワード | アストロサイト / 血管 / シナプス / 小脳 / てんかん / グリア神経相互作用 / ファイバーフォトメトリー / 血流 / ノイズ / オプトジェネティクス / 神経-血管機能連関 / 末梢-中枢機能連関 / 血管オプトジェネティクス / 神経活動 / 自由行動 / 神経-血管機能連環 / 末梢-中枢脳機能連環 / 末梢中枢機能連関 / 神経-血管機能連関 / 末梢中枢脳機能連関 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は、神経回路、グリア細胞、血管等の複数の異なる脳内機能要素間を統合するメカニズムを探索する研究である。また、脳内エネルギー代謝は、脳のサバイバルを担うに留まらず、神経回路を流れる情報そのものの特性を左右する存在であることを明らかにする。さらに、本研究では、末梢から中枢へと伸びる迷走神経を、生来の中枢へのアクセスルートとして人為的に活用し、脳内環境を遠隔操作することにも挑戦する。グリア細胞を起点とするエネルギーのスマート供給システムを調整し、神経・精神疾患の治療原理を開拓する。
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研究実績の概要 |
本計画研究班では、脳と心の身体性を理解し、脳内情報処理におけるエネルギー代謝の役割を、光操作・光計測法を駆使して解明することを目指して研究を進めている。本研究班ではエネルギー消費が増大するてんかん病態に特に注目し、脳内環境の病態と生理を明らかにすることに取り組んできた(Onodera et al., J Neurosci 2021; Shimoda et al., Neurobio Dis 2022)。2022年度は、光ファイバーを視床下部に刺入して蛍光計測するファイバーフォトメトリー技術を使い、てんかん発作の増悪化時、ならびに、てんかん脳におけるレム睡眠時の脳内環境の変化を調べた(Ikoma et al., Brain 2023a, b)。いずれの場合も、血流量が増大するにもかかわらずグリア細胞内は酸性化するという予想外の結果が得られ、脳内エネルギーの供給と消費のバランスが崩れる事態が生じることが示唆された。また、血管が閉塞する脳梗塞時において、グリア細胞のうちのアストロサイトが活性化され、梗塞巣周辺(ペナンブラ)において、神経回路の再編のために神経組織の貪食が生じることは、これまでの研究を通して明らかにしていた(Morizawa et al., Nat Commun 2017)。2022年度の研究では、小脳依存性眼球運動学習時という生理的な状態でも、小脳バーグマングリア細胞の貪食能が活性化されることが示された(Morizawa et al., Nat Neurosci 2022)。病態時だけでなく、レム睡眠や学習・記憶時等において、脳内血流を含めて様々な脳内局所環境変動が生じ、これがグリア細胞からの伝達物質放出やグリア細胞による貪食能に影響を与え、脳内情報処理をメタ制御している実態が浮かび上がってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳血流量の変動による脳内情報処理への影響をダイレクトに検証するには、脳内血管を自在に拡張・収縮させる技術が必要である。本計画研究班では、血管オプトジェネティクス技術を完成させており(Abe et al., Cell Rep 2021)、研究代表者・分担者の双方の研究室において協力し、生体内in vivoで、血管動態制御による影響を調べる研究を進めている。また、細胞内外の代謝関連分子を含む各種の生体分子を追跡する蛍光プローブを実装した遺伝子改変マウスも次々と開発している。なお、生体内での蛍光計測において、脳血流量や細胞内pH変動が蛍光値に大きく影響を与えることが明らかになったため、蛍光に影響を与える複数の要因を要素ごとに分離して計測するマルチプレッキシング技術も完成させた(Ikoma et al., Brain 2023a, b)。本技術の登場によって、これまでの生体内蛍光イメージング計測に対する解釈を大きく変更する必要が生じることが予想されるため、この技術のいち早いサイエンス・コミュニティーへの啓蒙と普及が必要であると考えている。脳と心の身体性理解する研究目標に向けて、本計画研究は極めて順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
てんかんに代表される脳内エネルギー代謝が病的に亢進した状態と、迷走神経刺激に代表される脳内エネルギー代謝変化が明らかになっていない身体変化におけるグリア細胞の機能を明らかにしていく。
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