研究領域 | グリアデコーディング:脳-身体連関を規定するグリア情報の読み出しと理解 |
研究課題/領域番号 |
20H05897
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター (2024) 東京大学 (2020-2023) |
研究代表者 |
小山 隆太 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第二部, 部長 (90431890)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
114,010千円 (直接経費: 87,700千円、間接経費: 26,310千円)
2024年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2023年度: 12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
2022年度: 12,610千円 (直接経費: 9,700千円、間接経費: 2,910千円)
2021年度: 12,870千円 (直接経費: 9,900千円、間接経費: 2,970千円)
2020年度: 63,700千円 (直接経費: 49,000千円、間接経費: 14,700千円)
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キーワード | ミクログリア / アストログリア / 細胞相互作用 / シナプス / 貪食 / ライブイメージング / ネットワーク / シナプス貪食 / アストロサイト / トリパータイトシナプス / 4者間シナプス / ミクログリアルネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、脳内の複数の機能要素(神経回路、グリア、血管など)の統合メカニズムを探索し、末梢臓器や全身レベルでの応答と関連付けることで領域全体の推進と当該学問分野の変革を目指す。また、特に、脳機能の要となる神経回路の形成・成熟におけるミクログリア・アストログリア・神経細胞間の相互作用によって生じる、ミクログリアの細胞構造変化・細胞内シグナリング変化・遺伝子発現変化を3つの主要な情報としてデコーディングする。
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研究実績の概要 |
本年度は、前年度までに部分的に明らかになった、ミクログリアによるシナプス貪食における、シナプス部位におけるカスパーゼ活性の関与を詳細に検討した。神経細胞におけるカスパーゼの活性化は、細胞死の誘導だけではなく、神経新生やシナプス活動の制御といった多様な機能を有する。近年では、シナプスにおける局所的なカスパーゼの活性化と、ミクログリアによる貪食に重要な補体のタグ付けとの関連が示唆されている。しかしながら、シナプスにおけるアポトーシスの誘導メカニズムや、シナプスにおけるアポトーシスがミクログリアによるシナプス貪食を制御するかは不明である。本年度では、神経活動依存的なカスパーゼの活性化がミクログリアによるシナプス貪食を促進することを見出した。ミクログリアによるシナプス貪食を高解像度でライブイメージングする系の構築により、補体が軸索の中でもシナプスだけを選択的にタグ付けし、ミクログリアが軸索をちぎることなくシナプスの一部のみを貪食することが明らかになった。さらに、神経活動依存的なシナプス部位でのカスパーゼの活性化をリアルタイムで捉えるとともに、光遺伝学的に誘導したシナプスにおけるカスパーゼの活性化が補体によるシナプスのタグ付けおよびマイクログリアによる貪食に十分であることを示した。最後に、熱性けいれんモデルマウスでは、抑制性シナプスにおける活動依存的なアポトーシスとマイクログリアにおける補体経路の活性化が生じる結果、マイクログリアが抑制性シナプスを貪食し、けいれん発作の感受性が増大した。本研究により、カスパーゼと補体が協調してミクログリアによる特定のシナプスの除去を制御することで、神経回路の再編成に関与することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、ミクログリアによるシナプス貪食のメカニズムについて、論文投稿に足る一通りのデータを獲得することに成功した。また、前年度の推進方策として、これまでのグリア神経培養系をさらに三次元化し、より生体内の細胞構造に近い培養系の確立を目指すことを掲げた。それは、これにより、各種脳細胞(ミクログリア・アストログリア・ニューロン)の相互作用における分子メカニズムの、より詳細かつ正確な理解につながることが期待されるためであった。本年度は、本培養法の一定の確立に成功した。すなわち、スフェロイド型のGlioneuronal unit(GNU)培養系と名付けた系を作成し、GNUにおける、シナプス構造、ミクログリア構造、そしてアストログリア構造が生体内の各構造と非常に近似していることを確認した。また、シナプスとグリアの相互作用のライブイメージングにも成功した。ただし、ライブイメージング中の微小構造操作や各種細胞に生じる変化(遺伝子発現・細胞内シグナリング)の検証にはさらなる方法論的検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、ミクログリアによるシナプス貪食のメカニズムについての論文報告を目指す。次に、構造的にはin vivoの状態を良く反映したGNU培養系における、グリアやシナプスの「操作」の手法の確立を目指す。すなわち、グリア細胞(ミクログリアとアストログリアの両者を含む)とシナプスの新しい相互作用形式に関して、そのメカニズムを明らかにするための研究手法の確立に重点を置く。そのために、光遺伝学的手法やケージド化合物の利用により、ライブイメージング中にシナプスやグリア突起などの微小構造の機能や形態を調節することを試みる。以上の様な細胞機能や構造の操作によって、シナプス可塑性の変化や、グリア細胞に生じる変化(遺伝子発現・細胞内シグナリングなど)を検証する。細胞内シグナリングとしては、新しい指標としてグリア細胞突起内やシナプス内の温度の変化にも着目する。
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