研究領域 | 不均一環境変動に対する植物のレジリエンスを支える多層的情報統御の分子機構 |
研究課題/領域番号 |
20H05909
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
吉田 聡子 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (20450421)
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研究分担者 |
白須 賢 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, グループディレクター (20425630)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
92,690千円 (直接経費: 71,300千円、間接経費: 21,390千円)
2024年度: 21,190千円 (直接経費: 16,300千円、間接経費: 4,890千円)
2023年度: 21,190千円 (直接経費: 16,300千円、間接経費: 4,890千円)
2022年度: 21,190千円 (直接経費: 16,300千円、間接経費: 4,890千円)
2021年度: 20,150千円 (直接経費: 15,500千円、間接経費: 4,650千円)
2020年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
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キーワード | 寄生植物 / 吸器 / 窒素 / 栄養 / 吸器形成 / 長距離シグナル / 窒素栄養 / 全身シグナル / 栄養環境 / 土壌栄養 / 鉄 |
研究開始時の研究の概要 |
寄生植物は、本来独立栄養生物である植物の中で、従属栄養生物への転換という大きな生存戦略の転換に成功した生物である。この中でも、ハマウツボ科の条件的寄生植物は、土壌中に散在する宿主植物の根を認識し、寄生器官を作り宿主植物と維管束を連結させることで宿主から栄養を獲得する従属栄養生物として生育するが、環境条件が良い場合、すなわち土壌栄養が豊富な場合は、宿主無しで独立栄養生物として成長できる。本研究では、寄生植物が如何にして土壌中の不均一な栄養環境を認知して感染への判断をおこない、宿主シグナルを統合し感染を成立させて従属栄養生物への転換を可能にしているのかを分子レベルで明らかにする。
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研究実績の概要 |
一つの植物体の根を2つに分け異なる環境に晒すスプリットルート法を用いて、栄養濃度が高い培地と低い培地にコシオガマ個体の異なる根を配置した場合に、長距離栄養シグナルが生じ、吸器の形成を抑制することを見出した。また、影響を与える栄養条件が、局所的なシグナルと、長距離シグナルで異なることも見出した。この結果は、栄養そのものが長距離移動するわけではなく、何らかのシグナル分子に置き換わって離れた根を制御することを示唆している。長距離シグナルの実態に迫るために、 不均一栄養条件に置かれた寄生植物の異なる根および地上部でのRNA-seq解析をおこない、シグナル分子の候補を洗い出した。その中で、窒素栄養シグナル制御に関わる転写因子の発現変動が起こっていることを見出した。今後、これらの遺伝子の過剰発現などにより、機能解析を進める予定である。また、吸器誘導物質処理条件下でTSS-seq解析をおこなった。その中で、吸器誘導物質特異的にTSSが変化する遺伝子が見つかった。これらの遺伝子をクローニングし、機能解析を進めている。また、本年度は、宿主植物と寄生植物の相互作用により、体内の栄養環境がどのように変化するかを解析した。まず、寄生条件下においては、非寄生条件に比べて寄生植物のバイオマスが増加し、宿主植物のバイオマスが減少することを確かめた。さらに、元素濃度をIPC-MSを用いて解析した。その結果、多くの栄養元素が宿主植物から寄生植物へと移行していることが確認されたが、その移行には選択制があることが示唆された。さらに、遺伝子発現解析を行い、栄養点週に関わるトランスポーターを同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
寄生植物においても全身的な栄養シグナルが存在することを明らかにし、その制御因子の候補を同定した。また、TSSseq解析により、宿主因子の有無で転写開始点が変わる遺伝子を複数見出した。
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今後の研究の推進方策 |
長距離シグナルの実態に迫るために、 RNA-seq解析によって得られたシグナル分子の候補遺伝子の機能解析を行う。シグナル分子を合成し、植物体に与えることで、植物体に対する効果を検証する。また、 シグナルの下流で働くと考えられる転写因子について、その抑制型の過剰発現をおこない、機能欠損時の影響を検証する。吸器誘導物質処理条件下でTSS-seq解析をおこなったので、転写開始点が変化する遺伝子に着目して研究を進める。興味深い変化を引き起こす遺伝子がいくつか見つかっているため、異なる転写開始点で作られる遺伝子の生体内での機能と遺伝子産物の機能を検証する。また、最終年度として研究成果を論文として発表する。
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