研究領域 | マルチファセット・プロテインズ:拡大し変容するタンパク質の世界 |
研究課題/領域番号 |
20H05925
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田口 英樹 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (40272710)
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研究分担者 |
茶谷 悠平 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (30794383)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
196,950千円 (直接経費: 151,500千円、間接経費: 45,450千円)
2024年度: 34,580千円 (直接経費: 26,600千円、間接経費: 7,980千円)
2023年度: 34,970千円 (直接経費: 26,900千円、間接経費: 8,070千円)
2022年度: 34,970千円 (直接経費: 26,900千円、間接経費: 8,070千円)
2021年度: 33,280千円 (直接経費: 25,600千円、間接経費: 7,680千円)
2020年度: 59,150千円 (直接経費: 45,500千円、間接経費: 13,650千円)
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キーワード | リボソーム / タンパク質 / 非典型的な翻訳 / RAN翻訳 / 翻訳バイパス / プロテオミクス / 翻訳 / 新生ポリペプチド鎖 |
研究開始時の研究の概要 |
本計画研究では、非典型的な翻訳の普遍性、分子機構、細胞内での動態、機能などを解析することで、マルチファセットなタンパク質の世界の一端を解明することを目的として以下の研究を実施する。研究1.新生鎖に依存したリボソーム不安定化の普遍性と分子機構。本年度は、翻訳途中終了の大腸菌での分子機構解析、真核生物への拡張とその分子機構を調べる。研究2.非典型的な翻訳から産まれるタンパク質の多様性。本年度は、大腸菌で見つかった翻訳バイパス現象の特徴付けを行う。研究3.非典型的な翻訳過程の分子機構。本年度は、非典型的な翻訳として塩基リピート病に関連した非ATG翻訳の再構成系や生細胞内での可視化技術を構築する。
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研究実績の概要 |
2022(令和4)年度は以下のような研究を推進した。【研究1】私たちは負電荷に富んだ新生ポリペプチド鎖(新生鎖)に依存して翻訳の一部が途中で終了する現象(IRD)を2017年に大腸菌で明らかとした。この現象が広く真核生物でも保存されているのかを検討した結果、出芽酵母やヒトの培養細胞でもIRDが起こること、さらには、その分子機構の一端、プロテオームレベルでのIRDの影響について解析を行い、論文発表した(Ito Y et al Nat Commun 2022)。【研究2】非典型的な翻訳から産まれるタンパク質の多様性:非典型的な翻訳動態を考慮に入れると、細胞内で産み出されるタンパク質のレパートリーは増大する。非典型的な翻訳に由来するタンパク質がどのくらい存在するのか系統的に探索を試みた。2022年度は特に、私たちが見出したIRD現象に起因する翻訳バイパス現象を含めたフレームシフトによる新規タンパク質を調査した。翻訳バイパスとは、二つの不連続な遺伝子読み枠から1本のポリペプチド鎖が合成される非典型的な翻訳で、これまでにT4ファージのgp60でしか知られていなかったが、本研究により、大腸菌のゲノム内に翻訳バイパス現象を起こす遺伝子読み枠があることを見出した。また、バイパス現象の再構成も試みた。【研究3】非典型的な翻訳過程の分子機構:疾患に関わる非典型的な翻訳現象(塩基リピート病に関連した非ATG翻訳:RAN翻訳)の研究をスタートし、ヒト因子由来の翻訳再構成系でRAN翻訳を再現した。その結果、塩基リピートの長さ依存性に関して興味深い知見を得た。また、生細胞内でRAN翻訳を可視化するための実験系の準備を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
負電荷に富んだ新生鎖に依存して翻訳が途中で終了するという新規の非典型的な翻訳現象は、私たちが2017年に大腸菌の研究から発見し、研究を進めている。2022年度は、大腸菌で見つけたIRDが真核生物でも起こること、さらには、プロテオームレベルでIRDが影響を及ぼしていることを見出した点は大きな成果であると考える。また、学術変革(A)の支援も受けて実施している質量分析を用いたプロテオミクス研究は、領域内外で多くの共同研究を行っており、多数の成果を得ている。これらにより「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2023(令和5)年度より、これまでIRD研究を率いてきた茶谷が岡山大学で准教授(PI)となったので分担者に迎え、引き続きIRDならびに他の研究を推進する。【研究1:茶谷・田口】1-1)大腸菌でのIRDの分子機構解析:翻訳の不備とも言えるIRDがどのような分子機構で起こっているのか、再構成型翻訳系(PUREシステム)を駆使してIRDがどのように引き越されるのか、その仕組みやIRDが起こる際の立体構造解析の準備となる生化学解析を行う。1-2)IRD予測ツールの開発:負電荷に富んだアミノ酸配列でも周辺配列によってIRDの起こりやすさに違いがあることがわかっている。そこで、どのような配列だとIRDが起こるのかについて定量的な予測ができるように実験データを得て、予測アルゴリズムを開発する。1-3)真核生物のIRD:大腸菌で見つかったIRDが出芽酵母やヒトの培養細胞でも起こることを昨年度報告した(Ito Y et al Nat Commun)。出芽酵母でのプロテオーム解析や遺伝学的な解析などを駆使して、IRDの生理的な意義を追究する。【研究2:田口・茶谷】従来のタンパク質データベースにないタンパク質を質量分析によって探索・同定する新規手法を開発する。具体的には、これまで見過ごされてきた小さなタンパク質を解析する新手法を確立する。【研究3:田口】疾患に関わる非典型的な翻訳過程の分子機構:塩基リピート病に関連した非ATG翻訳(RAN翻訳)をヒト因子由来の再構成型翻訳系や生細胞イメージングで調べる系を確立し、in vitro、in vivoの両面から、より詳細に分子機構を追究する。
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