研究領域 | マルチファセット・プロテインズ:拡大し変容するタンパク質の世界 |
研究課題/領域番号 |
20H05926
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
千葉 志信 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (20523517)
|
研究分担者 |
内藤 哲 北海道大学, 農学研究院, 農学研究院研究員 (20164105)
|
研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
177,190千円 (直接経費: 136,300千円、間接経費: 40,890千円)
2024年度: 30,810千円 (直接経費: 23,700千円、間接経費: 7,110千円)
2023年度: 31,330千円 (直接経費: 24,100千円、間接経費: 7,230千円)
2022年度: 31,330千円 (直接経費: 24,100千円、間接経費: 7,230千円)
2021年度: 29,770千円 (直接経費: 22,900千円、間接経費: 6,870千円)
2020年度: 53,950千円 (直接経費: 41,500千円、間接経費: 12,450千円)
|
キーワード | 機能性新生鎖 / リボソーム / 翻訳アレスト / 新生鎖 / 非典型的翻訳動態 |
研究開始時の研究の概要 |
典型的なタンパク質は、合成後に立体構造を形成することがその働きに必須である。一方、本研究で対象としている機能性翻訳途上鎖は合成の途上で生理機能を発揮するという点で典型的なタンパク質と異なる。本研究では、機能性翻訳途上鎖の分子機構と生理機能を解明し、それを通じてタンパク質の機能様式のもつ多面性(マルチファセット)を理解することを目指す。そのためには、様々な機能性翻訳途上鎖に共通の特徴である「タンパク質合成(翻訳)の一時停止現象」の分子メカニズムを理解することが重要である。そこで、本研究では、遺伝学や生化学などの手法を駆使し、翻訳の一時停止現象の分子機構の解明を行う。
|
研究実績の概要 |
本研究課題は、新生鎖の状態で細胞内環境をモニタリングし、遺伝子発現制御を介して細胞の機能を調節する「機能性新生鎖」の生理機能と分子機構の解明を目指している。 代表者・千葉は、昨年度に引き続き、放線菌由来のアレスト因子ApcA、ApdA、および、根粒菌由来のApdPについて、変異解析を行ってきた。本年度は、リボソームトンネルの変異によるアレストへの影響を検討しApcA、ApdA、ApdPが、リボソームトンネルの狭窄部位の変異に対して異なる影響を受けることを見出した。この結果と、昨年度までの変異解析の結果を合わせると、ApcA、ApdA、ApdPが、異なるリボソームとの相互作用を介してアレストを安定化させていることを示唆している。さらに、バイオインフォマティクスの手法を用いたスクリーニングから、これらの因子と類似のアレスト配列を持つ因子が様々な生物種に存在する可能性を示唆する結果を得た。 研究分担者の内藤は、真核生物における「機能性新生鎖」の生理機能と分子機構の解明に資する研究材料として、変異型リボソームのみを発現するトランスジェニック・シロイヌナズナ株の作出を継続して実施した。細胞質のリボソームタンパク質uL4は2つのパラログ遺伝子uL4AとuL4Dを持つ。uL4Dのノックアウト株に、変異型uL4D遺伝子を導入し、トランスジェニック・シロイヌナズナ株の確立後に、uL4Aのノックアウト株との掛け合わせを行う方策により,各種の変異を持つuL4D遺伝子を導入したトランスジェニック・シロイヌナズナ株の確立を行なった。同様の方策で、葉緑体とミトコンドリアのリボソームのuL4遺伝子(いずれも核コード)の変異株の作出を行なった。また、ウサギ網状赤血球ライセートの試験管内翻訳系での翻訳アレストを生化学的に記述する解析系を構築し,コムギ胚芽抽出液とは異なる点を見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
千葉は、アレストペプチドとリボソームの変異解析を進めた結果、共通配列を持つ3つのアレストペプチドの多様なリボソーム-新生鎖相互作用の存在を明らかにしつつあり、さらに、類似の配列を持つ新規アレスト因子の存在を示唆する結果を得つつある。 内藤は、細胞質リボソームタンパク質uL4に変異をもつトランスジェニック・シロイヌナズナ株の作出に成功し、変異型リボソームのみを持つ株の構築に向けた解析を進めた。また、これまでに確立した植物に加えて、動物の無細胞翻訳系における翻訳アレストを生化学的に記述する実験系の確立にも成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
千葉は、ApcA、ApdAについて、放線菌を宿主としたin vivoの系で、下流遺伝子の発現制御への関与を検討する。また、海外の共同研究者とともに、ApcA、ApdA、ApdPの構造解析を進める。 内藤は、細胞質のリボソームについて、変異型リボソーム遺伝子を導入したトランスジェニック・シロイヌナズナのホモ接合体個体で、染色体上の遺伝子導入位置の同定、並びにmRNA、タンパク質、およびリボソームレベルでの発現量の解析等を行い、変異型リボソーム遺伝子のみを持つ株の構築へと進める。葉緑体とミトコンドリアのリボソーム遺伝子についても変異型リボソーム遺伝子を導入したトランスジェニック・シロイヌナズナのホモ接合体個体の構築を行う。シロイヌナズナにおけるN末端メチオニンの除去酵素の欠損変異株、および、新たな翻訳アレスト系の解析を行い、「機能性新生鎖」の生理機能の研究へ展開する。
|