研究領域 | DNAの物性から理解するゲノムモダリティ |
研究課題/領域番号 |
20H05939
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡田 由紀 東京大学, 定量生命科学研究所, 教授 (60546430)
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研究分担者 |
元池 育子 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 准教授 (70347178)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
131,820千円 (直接経費: 101,400千円、間接経費: 30,420千円)
2024年度: 27,690千円 (直接経費: 21,300千円、間接経費: 6,390千円)
2023年度: 27,690千円 (直接経費: 21,300千円、間接経費: 6,390千円)
2022年度: 27,690千円 (直接経費: 21,300千円、間接経費: 6,390千円)
2021年度: 27,170千円 (直接経費: 20,900千円、間接経費: 6,270千円)
2020年度: 21,580千円 (直接経費: 16,600千円、間接経費: 4,980千円)
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キーワード | 精子クロマチン / クロマチン凝縮 / 男性不妊 / in vitro再構成 / ex vivo再構成 / ATAC-seq / プロタミン |
研究開始時の研究の概要 |
多くの脊椎動物の精子クロマチンは高度に凝縮しているが、この構造の詳細は未解明である。本研究課題では、精製タンパク質や生化学的に抽出した精子クロマチンを用いて、以下の3つの目標を設定する。(目標1)DNA物性の観点から、精子クロマチンの局所構造を明らかにする; (目標2)精子核内における染色体配置を明らかにし、動物種間比較によりその生物学意義を探る; (目標3)プロタミン凝集異常を定量化し、男性不妊症の理解に繋げる。このように、精子クロマチンを多階層から解析し、その構造や機能を明らかにすることで、ゲノムモダリティ制御の観点から、従来の学術枠では成し得なかった新たな精子学を展開する。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目標:(1)DNA物性の観点から、精子クロマチンの局所構造を明らかにする; (2)精子核内染色体配置を明らかにし、種間比較によりその生物学意義を探る; (3)プロタミン凝集異常を定量化し、男性不妊症の理解に繋げる。当該年度の実績は以下である。
目標1:精子クロマチンの試験管内再構成と、ex vivo再構成を計画している。再構成ヌクレオプロタミンのAFM観察(Wong班)、リポソーム内での再構成(瀧ノ上班鈴木グループ)を領域内共同研究で実施した。その結果、AFM観察では再構成ヌクレオプロタミンの二価イオンに対する反応とその構造を観察することに成功した。Ex vivoは精子クロマチン構造に対する二価イオンの影響の検討が終了し、研究は精子エピゲノム改変にシフトした。膨化精子に試験管内で脱メチル化酵素を加えた結果、処理精子は当該メチル化が完全に消失し、さらに様々なヒストンの存在量に異常をきたした。この精子を顕微授精に供した結果、雄性前核のクロマチン構造異常が認められた。 目標2:本項目は目標3のATAC-seqの結果に基づいてFISHでヒト・マウス・ブタの染色体配置を検討する予定であったが、今年度から領域内前澤班と連携し、核膜結合クロマチンの変化を追跡している。当班では精子核凝縮時にダイナミックに変化する核膜分子に着目し、ノックアウトマウスを作製した結果、核内ヒストン局在の変化と精子運動障害が観察された。 目標3:プロタミン凝集異常を定量化する目的で、マウス精子形成過程のATAC-seq、RNA-seq、ChIP-seqを行い、精子形成過程におけるクロマチン構造と転写、プロタミン置換との時空間的な関係を明らかにすることができた。ヒト精子のATAC-seqデータは既に取得済みである。翌年度はプロタミンKOマウスを用いた確認実験を施行し、論文発表とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標1:In vitro再構成では、AFMで新規の知見が得られた(論文準備中)。Ex vivo再構成では二価イオンの検討が終了した。精子エピゲノム改変では、標的としたエピゲノム以外にも変化が見られるという、予想しなかった知見が得られた。
目標2:FISH解析を中断し、核膜ダイナミクスに着目した研究にシフトしたが、速やかにKOマウスが得られ、興味深い表現型が得られた。
目標3:データ取得がおおむね終了し、あとはKOマウスを使ったコントロール実験を残すのみとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
目標1:ex vivoエピゲノム改変に注力する。現在のプロトコルでは、実験処理に起因する精子DNA傷害が否定できず、ここを解決することが今後の課題である。In vitro再構成は共同研究を主体に進める。
目標2:前澤班と連携して、精子形成における核膜ダイナミクスの解明を精力的に進める。現在、前澤班の実験に必要なKOマウスを作製している。当班の研究項目では、既に、作製したKOマウスから表現型が得られているため、このマウスの解析を進める。核膜因子のため、Wong班との連携を予定している。
目標3:論文発表を行う。
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