研究領域 | 素材によって変わる、『体』の建築工法 |
研究課題/領域番号 |
20H05945
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大澤 志津江 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (80515065)
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研究分担者 |
田尻 怜子 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (70462702)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
130,780千円 (直接経費: 100,600千円、間接経費: 30,180千円)
2024年度: 29,510千円 (直接経費: 22,700千円、間接経費: 6,810千円)
2023年度: 29,510千円 (直接経費: 22,700千円、間接経費: 6,810千円)
2022年度: 29,510千円 (直接経費: 22,700千円、間接経費: 6,810千円)
2021年度: 27,950千円 (直接経費: 21,500千円、間接経費: 6,450千円)
2020年度: 14,300千円 (直接経費: 11,000千円、間接経費: 3,300千円)
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キーワード | 折り畳みとその展開 / ECMリモデリング / ショウジョウバエ / 折り畳み / 一体成型 |
研究開始時の研究の概要 |
外骨格生物の多くは、脱皮前の外皮を折り畳んだ状態で作り、それを脱皮後に展開させることで形態形成を行う。しかしながら、「折り畳んだ状態で最終形態を作る仕組み」や、「折り畳まれた形態を展開する仕組み」はほとんど分かっていないのが現状である。本研究グループは、ショウジョウバエをモデル生物として導入し、折り畳み形成と展開の分子機構を、主にミクロレベルに焦点を当てた解析により明らかにする。得られた結果を、マクロレベルの解析を主に行う新美班の研究成果と統合させ、数理モデルとも組み合わせることで「折り畳みを介した形態形成」の基本法則を明らかにすることを最終目標とする。
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研究実績の概要 |
外骨格生物の外部形態は、「折り畳み」とその「展開」による「一体成型」方式で形成されることが、新美班らのカブトムシ角をモデルとした研究により明らかになりつつある。研究代表者はこれまでに、ショウジョウバエ成虫原基(外部形態を形成する幼虫期の上皮シート)をモデル系とし、折り畳まれた成虫原基が外部形態へと展開する上で、基底膜の分解が重要な役割を果たす可能性を見いだしてきた。本年度は、基底膜の分解が引き起こされる分子基盤を明らかにするために、成虫原基の展開を評価する定量方法の確立をまず行い、その上で、基底膜の分解を担う細胞集団の同定を行った。その結果、基底膜の分解は上皮シートを構成する細胞群ではなく、その周囲に存在する細胞集団により引き起こされることが明らかとなった。この結果は、上皮シートの折り畳み構造の展開が、上皮細胞自身ではなく、その周囲の非上皮シート細胞群(“作業員”)による基底膜分解により引き起こされるという新しい仕組みを示唆している。一方で、ショウジョウバエ幼虫の外骨格ECM(クチクラ)の折り畳み構造の形成に必要なキチン結合タンパク質Obstructor-E (Obst-E)、および展開に必要な分泌型メタロプロテアーゼSol narae (Sona)に着目している。研究分担者は当該年度において、Obst-Eのキチン結合能と互いに集まる性質(集合能)がクチクラの折り畳みにどのように寄与するのかを探るために、Obst-Eの三つのキチン結合ドメインそれぞれにキチン結合能を低下させる変異を導入して幼虫表皮で発現させ、クチクラ中の局在を解析した。その結果、各変異型タンパク質がそれぞれ異なる局在パターンを示した。この結果は、Obst-Eがクチクラ中でキチンと結合しながらダイナミックに振る舞うこと、その振る舞いがObst-E自身のアミノ酸配列に依存することを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、ショウジョウバエ成虫原基をモデル系の解析により、上皮シートの折り畳み構造の展開において重要な役割を果たす基底膜の分解が、上皮シートを構成する細胞とは別の細胞集団により引き起こされることをライブイメージングおよび遺伝学的解析により見いだすことに成功した。この成果は、「一体成型」方式による形態形成原理を解明していく上で重要な知見であり、研究推進が順調に行われていると言える。また研究分担者は、前年度に作製した変異型Obst-E発現系統を用いて、各変異型タンパク質のクチクラ中での動態を示す結果が得られてきた。これは、Obst-Eのキチン結合能と集合能がクチクラを折り畳む機能にどのように寄与するかを明らかにするための基盤となる結果であるため、当初の計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は、非上皮シート細胞群の挙動を制御する遺伝子群を同定し、上皮シートの折り畳み構造の展開に果たす役割を詳細に解析する。また、佐藤良勝博士(名古屋大学)および野中茂紀博士(基礎生物学研究所)との共同研究によりライトシート顕微鏡を導入することで、基底膜が分解される過程と非常非シート細胞群の挙動をより高解像度で明らかにする。得られたデータをもとに、非上皮シート細胞群の挙動と基底膜の分解の関係を明らかにする数理モデルの構築を開始する。一方、研究分担者は上述の使用した変異型タンパク質がそれぞれクチクラを折り畳む機能をどの程度保持しているのか、obst-E変異体バックグラウンドで各変異型タンパク質を発現させるレスキュー実験を行う。その結果をもとに、Obst-Eのキチン結合能と集合能が折り畳みの形成に果たす役割を明らかにする。また、クチクラの展開時に一過的に発現上昇を示すことが見出されたいくつかの遺伝子について機能解析を進め、クチクラ展開への寄与を探る。
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