研究領域 | 素材によって変わる、『体』の建築工法 |
研究課題/領域番号 |
20H05949
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 早稲田大学 (2022-2024) 大阪大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
山崎 慎太郎 早稲田大学, 理工学術院(情報生産システム研究科・センター), 教授 (70581601)
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研究分担者 |
坂下 美咲 東京理科大学, 創域理工学部生命生物科学科, 助教 (70907394)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
67,730千円 (直接経費: 52,100千円、間接経費: 15,630千円)
2024年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2023年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2022年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2021年度: 13,130千円 (直接経費: 10,100千円、間接経費: 3,030千円)
2020年度: 13,260千円 (直接経費: 10,200千円、間接経費: 3,060千円)
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キーワード | 構造最適化 / トポロジー最適化 / 形態形成 / 適応進化 / 魚類椎骨 |
研究開始時の研究の概要 |
生物の形態は、長い年月をかけた適応進化の結果得られた構造である。その一方で、数学理論に基づいて、工業製品の最適な構造を計算機で導出する設計方法論として、構造最適化が提案、研究されている。生物の適応進化を、環境への適応を目的としたある種の最適化と捉えれば、工学理論である構造最適化を用いて、生物の形態形成の謎に迫ることが可能であろう。この仮説に基づき、本研究では、構造最適化により、様々な生物の形態形成原理の解明に挑む。
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研究実績の概要 |
生物の形態は、長い年月をかけた適応進化の結果として得られた構造である。一方で、数学理論に基づいて、工業製品の最適な構造を計算機で導出する設計方法論として、構造最適化が研究されている。生物の適応進化を、環境への適応を目的としたある種の最適化と捉えれば、工学理論である構造最適化を用いて、生物の形態形成の謎に迫ることが可能であろう。本研究の目的は、構造最適化により様々な生物の形態形成の仕組みを解明し、この仮説について検証することにある。2023年度は、具体的研究テーマとして、①構造最適化による魚類椎骨の形態形成原理の解明、②構造最適化によるオタマボヤハウスの形態形成原理の解明、③生物の形態形成の仕組みに学ぶ工学応用の検討、に取り組んだ。
研究テーマ①では、以前よりトポロジー最適化と呼ばれる構造最適化法の一種を用いて、魚類椎骨の形態を計算機上で再現する取り組みを行った。2023年度には、深層学習と構造最適化法を組み合わせ、魚類椎骨の形状に対して、それに作用する外力荷重を推定するシステムの構築に取り組み、比較的簡単なケースにおいて、外力荷重の推定が可能であることを確認した。さらに、マグロ椎骨の側方構造の形態形成の様子を実験観察から捉えることに成功し、ゼブラフィッシュ椎骨の形態形成について外力荷重が与える影響を実験的に確認した。研究テーマ②では、オタマボヤハウスの3Dスタック観測データをもとに3Dプリンタ造形用データを作成する方法を確立し、観測データのノイズを除去したデータから、より詳細な3D模型を作成することに成功した。研究テーマ③では、ある種の生物の形態形成が、外部刺激により展開を行う4Dプリンティング構造として理解できるという発想のもと、4Dプリンティングで形成される円筒型テンセグリティ構造をベースとした血管ステントの可能性の探求を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、工学分野で研究・開発されている構造最適化理論を用いて、生物の形態形成の仕組みの解明を試みるものである。現在は、魚類椎骨とオタマボヤハウスを具体的な対象として、その形態形成の仕組みを構造最適化の観点から解明することを目指して研究を推進している。さらに、生物の形態形成の仕組みにヒントを得た新たな機能構造物を考案し、その工学応用を実現するべく、研究に取り組んでいる。2023年度は、魚類椎骨の形態形成が椎骨に作用する荷重に依存して変化するという仮説を検証するための実験を前年度から継続して行っている。さらに、魚類椎骨の形状から椎骨に作用する外力を推定する数理的なシステムとして、構造最適化法と深層学習を組み合わせた荷重推定システムを構築し、比較的簡単なケースについてその妥当性を確認した。また、オタマボヤハウスのマクロ構造は極めて複雑であり、従来の2次元画像と動画のみでは、その理解が困難であったが、オタマボヤハウスの詳細な3Dモデル化に成功した。ただし、現状では3Dモデルが過度に複雑であるため、本質的に重要な機能のみを保持しつつ3Dモデル自体を単純化する方法について検討している。また、生物の形態形成の仕組みに学ぶ工学応用として、円筒型テンセグリティ構造をベースとした血管ステントへの応用を考え、基礎検討を行っている。このように、本研究は順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度までの研究の進展を受けて、2024年度は主に3つの研究テーマ:①構造最適化による魚類椎骨の形態形成原理の解明、②構造最適化によるオタマボヤハウスの形態形成原理の解明、③生物の形態形成の仕組みに学ぶ工学応用の検討、について更に研究を進めていく。
研究テーマ①では、2023年度に構築した、構造最適化法と深層学習に基づいて椎骨形状から外力荷重を推定するシステムの更なる高精度化を目指す。このために、システムが取り扱う外力荷重を表現するモデルの改善と、構造最適化法において想定する力学モデルの改善(より現実に近い力学モデルの導入)を行う。そして、システムから推定される外力荷重と、実験系の観察を照合し、「魚類椎骨の形態は椎骨に作用する外力に応じてある種の最適構造となるよう形成される」という仮説の検証をさらに進めていく。研究テーマ②では、現在得られている極めて複雑なオタマボヤハウスの3Dモデルに対して、主要な機能を実現する構造的特徴は保持しつつ、過度に複雑な詳細構造は極力削除して3Dモデルを単純化することを目指す。これを実現するために、画像処理においてノイズ除去に用いられる各種フィルタリング手法を用いること等を検討している。また、単純化された3Dモデルに対して数値流体解析を行い、オタマボヤハウスを流れる海水の様子を可視化し、オタマボヤハウスのマクロ構造の理解を更に深めていく。研究テーマ③では、生物の形態形成の仕組みに学ぶ工学応用として、4Dプリンティングで形成される円筒型テンセグリティ構造をベースとした血管ステントへの応用について、テンセグリティ構造の最適設計法の構築や、シミュレーションベースのステントの性能評価法の確立を目指していく。
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