研究領域 | 実世界の奥深い質感情報の分析と生成 |
研究課題/領域番号 |
20H05956
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 匡子 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20271934)
|
研究分担者 |
中内 茂樹 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00252320)
|
研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
75,010千円 (直接経費: 57,700千円、間接経費: 17,310千円)
2024年度: 12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
2023年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
2022年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
2021年度: 11,310千円 (直接経費: 8,700千円、間接経費: 2,610千円)
2020年度: 27,300千円 (直接経費: 21,000千円、間接経費: 6,300千円)
|
キーワード | 深奥質感 / 認知症 / 視覚認知 / 価値判断 / 瞳孔反応 / 視覚性認知 / 高次脳機能障害 / 脳損傷 / 瞳孔計測 / 質感 / 素材 / 高次脳機能 |
研究開始時の研究の概要 |
我が国で確立された質感学は、これまで質感認知のうち主に意 識的(explicit)な処理過程について探ってきた。本研究では、言語化されない無意識的 (implicit)な質感(深奥質感)の認知について、ヒトの脳のしくみから検討する。まず、瞳孔反応などを手がかりに深奥質感を測定する方法を開発し、認知症を含む脳損傷者や高齢者で深奥質感がどのように変化するかを測定する。その結果を神経画像研究と統合して、深奥質感に関わる神経ネットワークを明らかにする。そのうえで、深奥質感機能の低下によって生じた情動・行動変化の改善に、質感生成や仮想現実など本領域の技術が応用できるかを探る。
|
研究実績の概要 |
本研究では、意識されない質感認知(深奥質感)が、脳損傷患者および高齢者においてどう変化するかを知ることを目的としている。ものの質感の一つとして、対象が光輝いて見える明るさや光沢に関する質感がある。グレア錯視は、グラデーションで囲まれた白色領域が、一様な灰色で囲まれた白色領域より明るく輝いて感じられる現象である。グレア錯視では光の強さが変化しなくても縮瞳がみられ、若年成人においては縮瞳の程度はどれだけ明るく感じたかという自覚的な明るさに関連する。すなわち、瞳孔反応という客観的指標が、本人の明るさの感じ方の変化を反映していると考えられる。今年度もこのグレア錯視による瞳孔反応を計測することにより、意識的判断を要しない質感認知について検討を進めた。 まず、神経疾患の既往のない高齢者群(n=10, 73.6歳±3.77)と若年成人群(n=22, 29.0歳±7.18)を対象とした測定結果の解析を進めた。両群を比較すると、高齢者群では縮瞳の程度、定位反応、青刺激に対するpost illuminant pupillary responseともに小さいことが分かった。また、高齢者群では個人間での反応のばらつきが少ないことが観察された。次に認知症者を対象にグレア錯視に対する瞳孔反応の測定を行った。認知症者としては正常圧水頭症、アルツハイマー型認知症などの神経変性疾患を対象とした。その結果、正常圧水頭症患者でグレア錯視に対する瞳孔反応が、健常高齢者、健常若年者に比べて小さい傾向があることが分かった。予備的な評価で、グレア錯視が明るく輝いて見える効果が正常圧水頭症では落ちていることが示唆され、瞳孔反応の小ささに影響している可能性が考えられた。このように、グレア錯視に対する瞳孔反応は、明るさに応じた単純な脳幹経由の縮瞳ではなく、大脳からのtop-downの修飾を受ける反応と考えられ,脳損傷患者では変化することが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ感染症の影響で、患者群を対象とする検討がやや遅れているものの、十分な感染対策を行うことでデータ収集は続けられており、概ね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は正常圧水頭症患者、アルツハイマー型認知症などの神経変性疾患患者を対象にグレア錯視による瞳孔反応の測定を継続し、解析に十分なデータの収集に努める。さらに、グレア錯視による自覚的な輝きの程度を定量的に測定する方法を確立し、患者群における輝きの深奥質感認知と瞳孔反応の関係を解析する。グレア錯視に対する瞳孔反応と、他の自律神経機能、認知機能との関連についても検討を進める。 若年成人群と高齢者群のグレア錯視に対する瞳孔反応の違いについてさらに詳細な解析を進め、加齢が深奥質感認知におよぼす影響について検討する。また、健常高齢者群の中でも認知機能のばらつきが認められたため、軽度の認知機能障害と質感認知、瞳孔反応の関連をみるために、健常高齢者群での認知機能変化とグレア錯視による瞳孔反応の関連の解析を進める。 以上を統合し、深奥質感認知が加齢や認知機能障害によってどのように変化するかを明らかにしていく予定である。
|