研究領域 | 社会変革の源泉となる革新的アルゴリズム基盤の創出と体系化 |
研究課題/領域番号 |
20H05965
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
河原林 健一 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 教授 (40361159)
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研究分担者 |
岩田 覚 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (00263161)
吉田 悠一 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 教授 (50636967)
福永 拓郎 中央大学, 理工学部, 教授 (60452314)
平原 秀一 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 准教授 (80848440)
Avis David 京都大学, 情報学研究科, 非常勤講師 (90584110)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
132,470千円 (直接経費: 101,900千円、間接経費: 30,570千円)
2024年度: 32,240千円 (直接経費: 24,800千円、間接経費: 7,440千円)
2023年度: 32,240千円 (直接経費: 24,800千円、間接経費: 7,440千円)
2022年度: 32,240千円 (直接経費: 24,800千円、間接経費: 7,440千円)
2021年度: 30,550千円 (直接経費: 23,500千円、間接経費: 7,050千円)
2020年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | グラフアルゴリズム / 組合せ最適化 / 計算量 / グラフ理論 / グラフ / アルゴリズム / 計算理論 / 組合せ最適 / 離散最適化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、理論的解析に基づき、 新たなアルゴリズムを提案することに主眼を置いている。これらの研究を通して研究領域に対して、次のような学術、技術寄与を目指す。 1.数学的解析に基づく理論ベースのアルゴリズムによって、従来の手法では対応できなかった大規模グラフ・ビッグデータの実社会の諸問題を解決可能にする。 2.離散数学、理論計算機科学、組合せ最適化研究者によるアルゴリズム科学ための国際的研究拠点が構築される。また現在のコロナ期の状況に応じた国際拠点形成も目指す。 3.数学、情報学の個別分野で開発されたアルゴリズム手法を整備、標準化し、各分野に提供できる体制が確立される。
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研究実績の概要 |
本研究グループは、理論計算機科学のトップ国際会議であるSODA’13, SODA’15,FOCS’15, STOC’17にて最優秀論文賞受賞するなど、過去7年間で世界の当該分野をけん引するような研究成果をあげてきた。今回の研究提案は、理論分野のさらなる強化、特にグラフアルゴリズム、計算量理論、組合せ最適化のそれぞれの分野での世界的な研究成果発信を目指し、かつアルゴリズム研究における世界的拠点の構築も目指す。以下では、具体的な学術的背景を述べたい。現在の理論分野(STOC, FOCS, SODA等)で活発に研究されている分野は、以下の通りである。 1. 離散アルゴリズム、計算理論において現れる構造の解析(特にグラフ構造理論と「学習」における計算可能性と不可能性の解析) 2. 組合せ最適化分野における高速アルゴリズム開発、精度保証改善と機械学習への応用(特に多面体論的アプローチの深化と「想定外設定」での組合せ最適化問題) 3. 巨大データ(ハイパーグラフ、高次元データなど)解析のための「(sparsification)」 これらの分野は、それぞれがすでに理論分野のみならず人工知能分野の中核をなす機械学習、データマイニングにも大きな影響を与えている。本研究では、上記の問いに関して、本質的な進展をあげるような研究成果を上げてきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算理論において「どのような関数であれば効率的に学習できるか?」という問いは非常に基礎的な問題であるが、いまだに解明されていない課題が多い。ここでいう「学習」とは、未知のブール値関数が与えられたときに、その関数を近似的に表現するような最小の論理回路を求める、という問題である。一般的にはこの問題は「困難である」と信じられているものの、最も強い意味での計算困難性、すなわちNP困難性は多くの関数クラスについて未解決である。具体的には、深さ2段の論理回路を(深さ2段の論理回路で)学習する問題はNP困難性が解決されているが、深さ3段以上においてNP困難であるかどうかは未解決である。 学習の困難性や可能性を見極めることは理論的にも実用上も重要である。理論的には困難性を示す証明手法はいまだ発展途上であり、上述の通り未解決問題が山積している。学習の計算困難性は、計算量理論の中心的問題である回路最小化問題や、データの圧縮(時間制限付きコルモゴロフ記述量)に深く関連しており、計算困難性を示す証明手法を開発することは計算量理論における中心的課題である。一方で実用的には、関数クラスが学習可能だと示すことができれば、複雑なデータを効率的に圧縮可能になり、予測することも可能になる。 今回の研究では、分担者の一人である平原が、この分野に関して数多くの研究業績を残した。
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今後の研究の推進方策 |
現代の組合せ最適化研究は、Edmonds による最大重みマッチング問題の解決で導入された多面体論的アプローチを基盤としている。多面体的アプローチとは、実行可能解に対応する組合せ構造を高次元空間における整数ベクトルと捉え、実行可能解全体に対応するベクトル集合の凸包の線形不等式表現を追究することを主眼としている。最大重みマッチング問題においては、不等式と呼ばれる指数個の妥当不等式を導入することによってマッチング多面体が正確に記述され、この上での最適化を行う線形計画問題を解く組合せ的なアルゴリズムを設計することによって、多項式時間解法が得られた。しかしながら、組合せ最適化問題の古典的な問題である「フロー問題」や「点素バス問題」などに関しては、いまだに解明されていない課題が多い。実際に多面体論的アプローチの深化による理論構築は、組合せ最適化における中心的研究課題である。 このような背景の元、多面体的アプローチを深化させてその限界を見極めると共に、多面体的アプローチを超えた新たな手法を探求することにある。具体的には、グラフ理論における古典的なMader の定理を出発点として、組合せ的多項式時間解法の開発を進めることによって、多面体論的な構造を究明する。
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