研究領域 | 糖鎖ケミカルノックインが拓く膜動態制御 |
研究課題/領域番号 |
21H05074
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
真鍋 良幸 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (00632093)
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研究期間 (年度) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
23,140千円 (直接経費: 17,800千円、間接経費: 5,340千円)
2023年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2022年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2021年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 糖鎖 / 膜動態 / 生体適合反応 / エクソソーム / 糖鎖合成 / タンパク質動態 / 免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,合成生物学的手法により,糖鎖修飾膜タンパク質を「つくり」,糖鎖がタンパク質の膜動態に及ぼす影響を解析する.まず,世界的にも類を見ないN-グリカンライブラリを構築する.さらに,この糖鎖をタグタンパク質を用いてノックインし,均一な合成糖鎖で修飾したモデル膜タンパク質を調製する.この動態を解析することで,糖鎖が膜タンパク質の動態に及ぼす影響を明らかにする.膜タンパク質の機能に直結する細胞での表在性に加え,細胞外小胞(EV)への移行や,そのEVの取り込みといった動態にも着目し,糖鎖が細胞間コミュニケーションに果たす役割も明らかにする.
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研究実績の概要 |
本研究では,合成生物学的手法により,糖鎖修飾膜タンパク質を「つくり」,糖鎖がタンパク質の膜動態に及ぼす影響を解析する.まず,世界的にも有数のN-グリカンライブラリを構築する.さらに,この糖鎖をタグタンパク質や種々の生体適合反応を用いてノックインし,均一な合成糖鎖で修飾したモデル膜タンパク質を調製する.この動態を解析することで,糖鎖が膜タンパク質の動態に及ぼす影響を明らかにする.膜タンパク質の機能に直結する細胞での表在性に加え,細胞外小胞(EV)への移行や,そのEVの取り込みといった動態にも着目し,糖鎖が細胞間コミュニケーションに果たす役割も明らかにする. i) N-グリカンライブラリを「つくる」:グリコシル化,ワンポット反応,多様性志向合成戦略を検討し,効率的N-グリカン合成の基盤を築く.これまでの糖鎖合成のノウハウの基盤として,,複数のN-グリカン,O-グリカンの合成を達成した.さらに,新たなグリコシル化法の開発などについても積極的に検討した. ii) 糖鎖修飾膜タンパク質を「つくり」,その動態を「みる」:申請者は,Haloタグを用いて任意の糖鎖で膜タンパク質を修飾する手法を開発した.本システムを用いて,生細胞上,EV上の膜タンパク質に合成糖鎖をノックインし,その動態をイメージングする.さらに,膜表面における糖鎖相互作用ネットワークの分子基盤の解析も検討する.加えて,本年度は代謝標識法,生体適合反応などを用いた新たな糖鎖ケミカルノックイン法の開発にも成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の肝は,N-グリカンの合成である.機能解明には,均一構造のN-グリカンを用いることが必須で,そのために化学合成を検討している.一方で,巨大な糖鎖の合成は大きな困難を伴い,時間,労力もかかる.これまでに,N-グリカンの大量合成を指向し,さまざまな検討を行ってきた.精密条件下でのスケールアップが可能なマイクロフロー反応を有効に利用し,中間体となるフラグメント(2-4糖構造)を10 g以上のスケールで合成した.また,グリコシル化反応でのエーテル溶媒による反応中間体の安定化や,アミド(‐NHAc)のイミド(‐NAc2)保護による反応性向上の効果を見出した.巨大な糖鎖同士のグリコシル化において保護基のパターンを最適化することで,収率,立体選択性が劇的に向上することも示した.これらの手法を基盤としてシアル酸含有4分枝N-グリカンの世界初の化学合成に成功し,これを報告することができた.さらに2分枝のジシアリルO-グリカンの合成も達成した.このようにして確立した合成法は,汎用性が高く,様々な糖鎖の合成に適用可能である. 種々の膜タンパク質にHaloTagを融合したタンパク質を生細胞に発現させ,この細胞を合成糖鎖を含有するハロゲン化アルキル(HaloTagリガンド)で処理することで,細胞表面に合成糖鎖を導入できる.本系の構築にすでに成功しており,本年は,この系でガレクチンと糖鎖の相互作用がタンパク質の動態に及ぼす影響を精査し,この相互作用が膜上でのタンパク質の動態に影響を与えることを示した.加えて,生体適合反応を用いて細胞表層に自在に糖を導入する手法の開発にも成功した.
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今後の研究の推進方策 |
i) N-グリカンライブラリを「つくる」:これまでの糖鎖合成のノウハウの基盤に,種々のNーグリカンを合成する.特に重要な生理活性を持つシアル酸含有糖鎖,糖鎖抗原の合成に注力する.加えて,糖鎖合成を効率化するための方法論の開発も検討する. ii) 糖鎖修飾膜タンパク質を「つくり」,その動態を「みる」:申請者が開発したHaloタグを用いた糖鎖提示システムや近接標識による糖鎖標識により,合成糖鎖を膜タンパク質に導入し,糖鎖がタンパク質の動態に及ぼす影響を調べる.HaloTagの代わりに,小さなサイズのPYPタグを用いた実験も並行して行う.具体的には,糖鎖がタンパク質の動態に及ぼす影響を以下の①-④の観点から調べる. ①EV分泌細胞での表在性:上記の手法で膜タンパク質に合成糖鎖を導入し,その動態を調べる.糖鎖が膜タンパク質の拡散や表在性に及ぼす影響を明らかにする. ②放出されるEVへの移行:合成糖鎖を導入した細胞からEVを回収し,糖鎖を導入した膜タンパク質の量を定量することで,EVへの移行を促進する糖鎖構造を決める. ③レシピエント細胞への取り込み:ここでは,EV上の膜タンパク質に糖鎖を導入し,レシピエント細胞への取り込みに及ぼす影響を調べる. ④レシピエント細胞での表在化:レシピエント細胞に取り込まれたEV上のタンパク質の運命は,不明な点が多い.一部はレシピエント細胞でも機能するが,一部はリソソームで分解される.ここでは,リソソーム分解系から逃れ,膜への表在化を助ける糖鎖構造を探索する.
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