計画研究
学術変革領域研究(B)
創薬ターゲットとして知られているG蛋白質共役受容体(GPCR)の一種であるオピオイド受容体の複合体形成を介したシグナル伝達機構の全貌を、X線結晶構造解析およびクライオ電子顕微鏡の単粒子解析(Cryo-electron microscopy single particle analysis : Cryo-EM SPA)によって原子分解能レベルで明らかにすることを目的とする。また、困難である過渡的タンパク質複合体の構造解析を実現するために、Cryo-EM SPAと自己集合型ナノケージを組み合わせた複合体安定化技術を開発し、迅速な構造解析プラットフォームの構築も目指す。
本研究領域では、多元的アウトプットとして現れる複雑な生理作用を、分子(寿野班)、細胞(井上班)、個体(櫻井班)、制御(斉藤班)といった次元に分解して検証し、分子、細胞、個体各スケールにおける「素過程」の重ね合わせの形にて記述・可視化を実現する。寿野班は分子フェーズを担当し、オピオイド受容体(KOR、DOR)を介したシグナル伝達機構の全貌をクライオ電子顕微鏡の単粒子解析によって原子分解能レベルで明らかにすることを目的とし、KORでは3つ、DORでは1つのバイアスドリガンド結合状態、KOR, DORでそれぞれ1つのバランスドリガンド結合状態の構造を決定した。
μ、δ、κオピオイド受容体(MOR, DOR, KOR)の作動薬は鎮痛効果があり、とくにMORの作動薬であるモルヒネはがん性疼痛などに顕著な効果を示す。一方で、薬物依存などの重篤な副作用を示すため、その使用法は制限されている。多くの製薬企業などの研究機関がMOR作動薬の副作用を軽減する努力が長年行われてきたが未だに成功していない。本研究では鎮痛効果を示すDOR, KORの作動薬に着目し、様々な性質をもつ作動薬が結合したDOR, KORの立体構造を決定した。副作用を示す作動薬と副作用が弱い作動薬の結合状態を比較し、副作用の発現メカニズムを検討した。この構造情報は副作用のない薬剤開発に貢献できる。
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