研究領域 | マルチスケールな生理作用の因数分解基盤構築 |
研究課題/領域番号 |
21H05113
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井上 飛鳥 東北大学, 薬学研究科, 教授 (50525813)
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研究分担者 |
生田 達也 東北大学, 薬学研究科, 助教 (80894815)
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研究期間 (年度) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
32,760千円 (直接経費: 25,200千円、間接経費: 7,560千円)
2023年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
2022年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
2021年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
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キーワード | GPCR / オピオイド受容体 / シグナル伝達 / 計算科学 / オピオイド / バイアス |
研究開始時の研究の概要 |
オピオイド受容体は複数の細胞内情報伝達(シグナル)経路を介してオピオイド薬の薬効や副作用に関わるが、薬理作用とシグナル経路の対応関係は不明な点が多い。本研究ではシグナル応答を網羅的に解析することにより、この対応関係を明らかにする。また、構造情報を元にした計算科学により、特定のシグナル経路を生み出す構造基盤を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究課題の対象GPCRであるカッパーオピオイド受容体(KOR)に対するリガンドとして斉藤班が設計・有機合成した41種類のモルヒナン骨格構造類縁体について、KORを介したGタンパク質活性(GiおよびGo)とアレスチン活性をNanoBiT-GPCRシグナルアッセイを用いて評価した。その結果、約半数の化合物がナルフラフィンと同等かそれ以上の親和性でKORに対する作動活性を示した。高親和性の化合物のうち大半はGタンパク質と比べてアレスチンに対して部分作動活性を示し、Gタンパク質バイアス型であることがわかった。領域内の構造研究の変異体実験を見据えて、デルタオイピオイド受容体(DOR)の検討を行った。その結果、N末にシグナルシークエンスとFLAGエピトープタグを付加したDORコンストラクトにおいて、プラスミドトランスフェクション量依存的に膜発現が低下することを確認した。既存のDOR構造からリガンドドッキングを元に予想したKNT-127のリガンド認識アミノ酸残基について、フローサイトメトリー解析を行い、発現量が同等になる野生型のプラスミドトランスフェクション量を検討し、NanoBiT-GPCRシグナルアッセイを行った。その結果、KNT-127のGi活性が大きく低下する変異体を見出した。この変異体では、内因性リガンドのエンケファリンの活性は維持されていた。従って、リガンドの認識機構と受容体活性化機構に差があることがわかった。関連研究として、ヒトとマウスのオレキシン受容体(OX1R、OX2R)に対するシグナル活性をTGFα切断アッセイを用いて評価する実験系を構築し、斉藤班が合成したオレキシン受容体作動薬がマウス受容体においてもOX1R選択的であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に沿った研究を実施することができた。当初計画外の成果として、オレキシン受容体に関する領域内共同研究の実施、本研究で確立したリガンドドッキングを応用した微生物代謝物カルコンの生合成経路の解明が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究によって得られたKORリガンドの構造活性相関情報を元に、斉藤班が親和性・シグナルバイアス活性を強めた設計の構造類似体を合成しており、本研究者がKORに対する活性評価を行う。同様に、昨年度までに得られたDORの構造活性相関から、KNT-127構造類似体のGタンパク質活性とアレスチン活性を評価し、親和性・シグナルバイアス活性を増強したリガンド取得を狙う。さらに、寿野班が進めているKORとDORの構造解析情報を元に、分子動力学解析によりリガンド結合モデルを検証するとともに、シグナルバイアス性に関わる構造基盤を調べる。さらに、本年度確立した変異体アッセイ系を用いて、KORとDORの変異体解析を進め、リガンド結合やシグナルバイアス活性を担う構造基盤を明らかにする。
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