研究領域 | 大規模計測・シミュレーションによる脳の全体性の理解 |
研究課題/領域番号 |
21H05136
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
堤 新一郎 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 副チームリーダー (20862676)
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研究期間 (年度) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
32,760千円 (直接経費: 25,200千円、間接経費: 7,560千円)
2023年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
2022年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
2021年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 2光子イメージング / 全体性の崩壊 / 前頭連合野 / メルトダウン症状 / 認知タスク / 神経活動シークエンス / 転移学習 / 大規模2光子イメージング / メルトダウン / 脳の全体性の崩壊 / 前頭野 / 視床 / 精神疾患 / 自閉症スペクトラム障害 / 前頭前野 / 小脳 / 認知機能 / 大脳小脳大規模イメージング / 全体性崩壊 |
研究開始時の研究の概要 |
統合失調症や自閉症スペクトラム障害などの精神疾患における多彩な病状は、単一遺伝子・脳部位の異常だけでは説明できず、脳の「全体性」を考える必要がある。これらの疾患でヒトレベルでは複数脳領域間での機能結合の低下が示唆されているが、神経細胞レベルでの知見は少ない。一方、疾患モデル動物で神経接合部シナプスの異常が示されているが、回路レベルの機能異常との関係は不明である。本研究では、認知行動中の精神疾患モデル動物の複数の脳領域において細胞レベルの解像度で大規模に異常回路連関を記録し、全脳・身体シミュレーションとデータ統合を行うことで、精神疾患における脳の「全体性」の崩壊が認知行動障害に果たす役割に迫る。
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研究成果の概要 |
自閉スペクトラム症(ASD)モデルマウスにおいて、一旦成立した認知学習が突如崩壊する、ASD児のメルトダウンに酷似した症状を発見した。前頭連合野(FrA)第2/3層神経細胞の大規模2光子イメージングにより、メルトダウン様症状特異的に発火する細胞群を同定した。さらに薬理遺伝学的介入により、FrA神経回路の脱抑制の程度がメルトダウン様症状と相関することが分かった。以上の結果は、遺伝的負因と認知負荷とが組み合わさることで、高次脳領野において興奮・抑制性神経回路の相互作用が破綻し、異常回路活動が生じることが、メルトダウン症状をはじめとする精神疾患における全体性の崩壊の回路基盤であることを示唆した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究では、大規模2光子イメージングにより精神疾患における「全体性」崩壊の機序に細胞レベルで迫った。薬理遺伝学的介入により、前頭連合野が興奮-抑制-興奮回路を形成していることを発見した。自閉スペクトラム症モデルマウスが臨床症状に酷似したメルトダウン様症状を示すことを発見し、この症状に特異的に発火する細胞群(メルトダウン細胞)を突き止めた。抑制性神経細胞の機能低下によりメルトダウン細胞が増加することから、大脳高次領野の興奮-抑制-興奮回路の破綻が、精神疾患における「全体性」の崩壊を引き起こしていることが示唆された。これらの結果は、精神疾患の新たな診断・治療法の開発に向けた重要な基礎的知見となる。
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