研究領域 | あいまい環境に対峙する脳・生命体の情報獲得戦略の解明 |
研究課題/領域番号 |
21H05169
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
雨森 賢一 京都大学, 高等研究院, 特定拠点准教授 (70344471)
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研究分担者 |
斉藤 治美 京都大学, 高等研究院, 特定助教 (20311342)
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研究期間 (年度) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
46,930千円 (直接経費: 36,100千円、間接経費: 10,830千円)
2023年度: 15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
2022年度: 15,990千円 (直接経費: 12,300千円、間接経費: 3,690千円)
2021年度: 15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
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キーワード | 神経生理学 / 認知神経科学 / 計算論的神経科学 / 大脳基底核 / 線条体 / 霊長類 / DREADD / 不安障害 / 意思決定 / ストリオソーム / 接近回避葛藤 / 化学遺伝学 / マカクザル |
研究開始時の研究の概要 |
「予測のあいまいさ」に応じた能動的な試行錯誤・情報獲得に対する理論的な整備が進み、情報獲得の価値を定量的に取り扱うことができるようになってきた。こうした、新奇性や予測誤差の「気づき」は、前帯状皮質(ACC)と前島皮質(AIC)からなる顕著性ネットワークで表現されている。本田班の提案する、報酬・罰・情報獲得などの複数の目的のバランスをモデル化できる新 FEP 理論を用い、サルの好奇心などの内部変数のデコーディングを行い、課題遂行中の好奇心の変化を読み取る。さらに、小坂田班と協力し、ウイルスベクターの作製し、神経刺激法を駆使し 大脳基底核活動が好奇心を引き起こす、という因果性を証明する。
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研究実績の概要 |
ヒトやマカクザルを含む霊長類は、自らの予測のあいまいさに応じて、確信が持てない時に、探索行動を能動的に引き起こすことができる。近年、こうした予測のあいまいさに応じた能動的な情報獲得が、自由エネルギー原理(free energy principle, FEP)から導かれる 「能動的推論」によってモデル化された。これにより「情報獲得の意欲(つまり、好奇心)」を定量的に取り扱うことができるようになってきた。しかしながら、その神経メカニズムは全くわかっていない。不安を伴う人々は、未来が不確実であることを大きなリスクと過剰にとらえ、必要以上にリスク回避的な行動をとることがある。本年度は、3つの大きな進展があった。① 霊長類が、予測の不確実性や将来にリスクがある状況に対して、悲観的な(不安を伴う)価値判断を行う現象に着目した。本年度は、マカクザルにBalloon analog risk task (BART)を訓練し、計算論モデルを導入することで、サルがリスクや予測のあいまいさに対する悲観的な価値判断を行っていることを、定量的に明らかにした。これらのデータをもとに次年度は、本田班の提案する、報酬・情報獲得などの複数の目的のバランスをモデル化できる新 FEP 理論を用いて、好奇心など新規情報処理の定量化をおこなう。また、微小電気刺激法により、脳の局所回路の活動を変化させ、リスク嫌悪に因果的に関わる脳領野を同定する。② 化学遺伝学による経路選択的な神経操作を行い、意欲の操作に成功した。2頭目での実験にも成功し、解析を進めているところである。③ 大規模ネットワークのマルチサイト記録によって得られた神経活動データを解析し、領野間相互作用を明らかにした。腹側前頭前皮質の神経活動を変化させ、行動の変化を解読することで、ネットワークの変化を明らかにし、論文にまとめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、① 小坂田班との共同研究の準備として、化学遺伝学による経路選択的な神経操作を行い、意欲の操作に成功した。② 大規模ネットワークのマルチサイト記録によって得られた神経活動データを解析し、領野間相互作用を明らかにした。腹側前頭前皮質の神経活動を変化させ、行動の変化を解読することで、ネットワークの変化を明らかにし、論文にまとめている。③ 本田班の提案する、報酬・情報獲得などの複数の目的のバランスをモデル化できる新 FEP 理論を用いる準備として、マカクザルにBalloon analog risk task (BART)を訓練し、計算論モデルを導入することで、サルがリスクや予測のあいまいさに対する悲観的な価値判断を行っていることを、定量的に明らかにした。本田班のモデルを導入し、サルの内部変数を読み取り、課題遂行中の好奇心の変化を読み取る予定で、おおむね計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね計画通りに進んでいる。①化学遺伝学研究は、解析をさらに進め、論文の投稿を行う。②大規模ネットワーク研究は、論文の投稿を行う。③予測のあいまいさが価値に及ぼす影響の研究は、新FEP理論を導入した定量化のほか、刺激実験による因果性解析を行う。
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