研究領域 | 超温度場材料創成学:巨大ポテンシャル勾配による原子配列制御が拓くネオ3Dプリント |
研究課題/領域番号 |
21H05195
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森下 浩平 九州大学, 工学研究院, 准教授 (00511875)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
74,100千円 (直接経費: 57,000千円、間接経費: 17,100千円)
2024年度: 13,650千円 (直接経費: 10,500千円、間接経費: 3,150千円)
2023年度: 13,650千円 (直接経費: 10,500千円、間接経費: 3,150千円)
2022年度: 13,650千円 (直接経費: 10,500千円、間接経費: 3,150千円)
2021年度: 19,370千円 (直接経費: 14,900千円、間接経費: 4,470千円)
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キーワード | 超温度場 / 金属3Dプリント / レーザー / 放射光X線イメージング / 溶解・凝固 / Additive Manufacturing / その場観察 / マイクロダイナミクス / Additive manufacturing / 結晶成長 / レーザー溶融 / 放射光 / 金属3Dプリント |
研究開始時の研究の概要 |
本計画班では時間分解の放射光X線イメージングを駆使し,金属粉体へのレーザー照射における急速溶解・急速凝固現象をその場観察することで溶融池スケールでの溶解・凝固挙動(金属粉体の溶融池への取り込まれ方やその影響・凝固速度とその変化)およびレーザー走査に伴う溶融・凝固相間(隣接走査列間・積層間)の相互作用といった「超温度場結晶成長マイクロダイナミクス」を実証的に明らかにする.得られた実証的データを他の計画班(計算科学・材料創成・評価)へと提供し,超温度場におけるシミュレーションの高精度化・計算結果の妥当性検証および欠陥発生メカニズム解明によってネオ3Dプリントへと昇華させる礎とする.
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研究実績の概要 |
2023年度は,溶融池内の溶質分布に着目しながら,種々の合金の板材および粉体へのレーザー照射およびガルバノスキャナメーターによる高速走査を実施し,その溶融・凝固挙動や移動を高時間分解でその場観察した.これにより,Al-Cu合金での溶質分配挙動,Cu粉体の移動現象,,Al-Si合金の溶融池境界近傍での溶融挙動,SUS316LおよびCo-Cr合金の組織形成過程,CuおよびTi粉体のその場合金化過程等について検討した.主な成果を以下に示す. 「巨大ポテンシャル勾配下における急速溶解・急速凝固のマイクロダイナミクス」では,モデル合金であるAl-Cu合金の溶解・凝固挙動のその場観察を進め,実測した成長速度と観察した凝固組織の初晶率との関係を従来の定常成長における急速凝固モデルと比較した.その結果,凝固初期部および凝固終端部を必ず内包する溶融池の凝固においては,速度の変化をモデル化する必要があること,さらに液相内の溶質濃度の傾斜が組織形成に大きく寄与することが明らかとなった.また,ガルバノスキャナメーターを用いたPBF-LBと同程度の走査速度においてはこの液相内の溶質は混合する時間的余裕がないことが実証的に示された. 「溶融金属と粉体の相互作用」では,Cu粉体へのレーザー照射による溶融池形成過程における粉体の飛散・移動現象を粒子画像流速測定法を用いて定量的に解析した.その結果,粉体の溶融池への移動速度は溶融池の成長段階において上昇した後に下降することが明らかとなった.実測速度から加速度を評価し,運動方程式から作用する力を評価した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は溶融池内の溶質分布に着目しながら,種々の合金の板材および粉体へのレーザー照射およびガルバノスキャナメーターによる高速走査を実施し,その溶融・凝固挙動や移動を高時間分解でその場観察した.これにより,Al-Cu合金での溶質分配挙動,Cu粉体の移動現象,,Al-Si合金の溶融池境界近傍での溶融挙動,SUS316LおよびCo-Cr合金の組織形成過程,CuおよびTi粉体のその場合金化過程等について検討した. 「巨大ポテンシャル勾配下における急速溶解・急速凝固のマイクロダイナミクス」では,従来の凝固モデルと実証的データとの比較を行い,溶融池内に形成される溶質濃度の傾斜の影響が大きいことを明らかにした.また,ガルバノスキャナメーターによる1 m/sでの高速走査における現象のその場観察を実施し,溶解前組織に由来する液相内の溶質分布が均一化することは無いことを明らかにした.通常のPBF-LBでは凝固組織が小さく,溶解前組織の影響は受けにくいことが予想されるが,使用する原料粉末内の溶質分布が特に共晶系合金では無視できないことを示唆している.純金属粉体を用いたその場合金化においても混合不良は観察から明らかとなっており,溶融プロセスの工夫が必要なことが示された. 「実証的データを獲得するためのその場観察手法の確立・発展」についてはこれまでの倍の空間分解能を有する光学系および撮影系を試行し,Al-Si合金の溶融池近傍の観察等に運用可能であることを確認した.また,焦点位置調整が手動ではあるものの,500Wファイバーレーザーとガルバノスキャナをその場観察可能な状態へと装置を組み上げ,運用を開始した.1 m/sを超える走査速度においては溶融池深さが浅いため,より空間分解能の高い拡大光学系と,それによる光量不足を補う装置的・画像処理的手立ての必要性が確認された.
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今後の研究の推進方策 |
【実証的データを獲得するためのその場観察手法の確立・発展】 時間分解能を高める段階になったといえるが,SPring-8の光学系に依るところも大きい.画像解像度を低下させるものの時間分解能の向上は可能性がある.実験系としては加熱機構の導入とその場回折点測定が可能な機構を構築する. 【巨大ポテンシャル勾配下における急速溶解・急速凝固のマイクロダイナミクス】 開発装置によるその場観察手法を駆使し,金属粉体と金属基板へのレーザー照射における急速溶解・急速凝固現象のその場観察を昨年度に引き続き進め,溶融池スケールでの溶解・凝固挙動を実証的に明らかにすることを目指す.各粉体および基板(鋳造まま材・積層造形材)の溶融挙動,溶融池の形成・成長挙動,溶融池と粉体の相互作用,溶融池内での凝固挙動等のマイクロダイナミクスを,レーザーをスポット照射した系および高速走査した系に対して定量的に明らかにする.本年度後半より進めているその場合金化のその場観察を推し進め,均一化される際の溶融池形状および溶融池内の液相流動について議論を進める.A01班のシミュレーションおよびA02b,A03班の組織解析との連携を進める.TiおよびTi合金,SUS316L鋼,CuおよびCu合金やAl-Si,Co-Cr合金等を観察対象に用い,合金種に依らず統一的に急速溶融挙動を説明できるモデルを確立するための基盤データを獲得する. 【隣接走査列間・積層間のマイクロダイナミクス】 これまで鋳造まま材を観察対象とし,それにより液相流動の可視化が可能であった面もあった.次年度はA01班からPBF-LB造型体の提供を受け,XXおよびXYスキャンの溶解凝固現象および溶融池内の濃度分布形成について検証を進める.
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