研究領域 | 生物を陵駕する無細胞分子システムのボトムアップ構築学 |
研究課題/領域番号 |
21H05228
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
松浦 友亮 東京工業大学, 地球生命研究所, 教授 (50362653)
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研究分担者 |
木賀 大介 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30376587)
三浦 夏子 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 准教授 (80724559)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
226,200千円 (直接経費: 174,000千円、間接経費: 52,200千円)
2024年度: 39,260千円 (直接経費: 30,200千円、間接経費: 9,060千円)
2023年度: 40,300千円 (直接経費: 31,000千円、間接経費: 9,300千円)
2022年度: 40,170千円 (直接経費: 30,900千円、間接経費: 9,270千円)
2021年度: 67,600千円 (直接経費: 52,000千円、間接経費: 15,600千円)
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キーワード | 進化分子工学 / 無細胞分子システム / 分子システム / ボトムアップ構築 / 無細胞タンパク質合成系 / 組み合わせ探索 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、自然界では不可能な進化を実験室で実現する無細胞分子システムをボトムアップに構築する。更に、これを用いて社会実装に資する分子・分子システムを創生する。具体的には、1)受容体膜タンパク質の実験室進化を可能とする分子システムを構築し、創薬研究に資する膜タンパク質変異体を導出する。2)人工コドン表を持つ無細胞タンパク質合成系を用いて実験室進化を可能とする分子システムを構築し、長寿命バイオセンサーを導出する。3)無細胞タンパク質合成系を用いた人工酵素集合体の酵素活性の実験室進化を可能とする分子システムを構築し、産業上重要な化合物の高効率生産系を導出する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、GPCRの進化実験、膜タンパク質合成に適した無細胞系の評価、要素間相互作用計測のための予備検討を行った。 これまでにGタンパク質共役型受容体(GPCR)の進化分子工学を実現する分子システムを構築した(Nakai et al., Anal Chem, 2022)。2022年度は、2つのGPCR、エンドセリンレセプターtypeB(ETBR)とアデノシン受容体(A2aR)のどの位置に変異を導入すると熱安定化や基質認識能力が変化させることができるかを計算科学を用いて推測した。前者は、千葉大学の村田研究室と、後者は、名古屋大学の清中研と共同で実施した。その結果、変異を導入する位置を決定した。また、GPCRの進化に重要な適切な選択圧を与える実験系の構築を行った。具体的には、熱安定性の進化については、適切な温度条件を、基質認識能力の進化については、適切なリガンドを化学合成した。 共同研究者の岩手大の西山研では、これまでに無細胞タンパク質合成系PURE systemを膜タンパク質合成用にカスタマイズしたシステムを構築している。一方で、一回膜貫通タンパク質でしか試験されない。そこで四回膜貫通のEmrEを用いて、活性のある膜タンパク質を合成できるかの検討を行った。プロテアーゼ処理では、EmrEの膜挿入が西山らのシステムは向上していることがわかった。今後、活性を有するのかを検討してゆく。 分子システムの要素間相互作用を測定するために、非接触分注機(Echo)のセットアップを行った。本研究課題は、分担者の木賀研究室と共同で実施した。分注コマンドファイルを生成するプログラムを作製した。次に、Echoを用いて3種類の蛍光物質を様々なパターン、濃度で分注するコマンドを実施して、分注の精度と再現性を確認した。今後、分子システムを構成する要素間相互作用を計測するために使用する準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GPCRの進化実験に関しては、進化実験が成功するときと失敗するときがあるという実験の再現性に問題があり、現在トラブルシューティングしているところ。また、要素間相互作用を測定するために大量の実験データを取得する必要があるが、分注ロボットの制御などに苦戦している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、GPCR遺伝子ライブラリーの作製と評価、膜タンパク質に最適化したPURE systemの評価、PPK2を用いた分子システムの構成要素間の相互作用測定を行う。 これまでにGタンパク質共役型受容体(GPCR)の進化分子工学を実現する分子システムを構築した(Nakai et al., Anal Chem, 2022)。2023年度は、遺伝子ライブラリーの構築に取り組む。これまでに理論計算から機能向上に寄与する可能性が高いと予測された場所に飽和変異を導入したライブラリーを作製し、作製したライブラリーが狙い通りの多様性を持っていることを次世代シーケンサー解析により確認する。 岩手大の西山研との共同研究では、EmrEの膜挿入メカニズムをプロテオミクスとトランスポート活性測定を組み合わせて解明する。 ポリリン酸キナーゼ2(PPK2)を用いた新しい分子システムを構築することを目指す。PPK2は、ポリリン酸を供与基質として、NMP及びNDPをNTPにリン酸化する酵素である。NTPを精製する酵素には様々あるが、PPK2はポリリン酸という非常に安価な基質を利用するため、最も安価にNTPを生成する反応を触媒する。従って、無細胞タンパク質合成系のエネルギー再生(ATP、GTP)反応を担う酵素として有望である。PPK2を用いたNTP合成反応は、10成分から構成される無細胞分子システムである。そのうち7成分の濃度を網羅的に変化させてNTP合成活性を向上させるため、分担者の早稲田大学の木賀研究室と共同で384 wellで反応液混合、反応させ、生成したNTP濃度を計測する方法論を確立した。今後システムの最適化と要素間相互作用を解明してゆく。
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