研究領域 | 生物を陵駕する無細胞分子システムのボトムアップ構築学 |
研究課題/領域番号 |
21H05229
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
川野 竜司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90401702)
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研究分担者 |
川村 出 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20452047)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
141,180千円 (直接経費: 108,600千円、間接経費: 32,580千円)
2024年度: 22,750千円 (直接経費: 17,500千円、間接経費: 5,250千円)
2023年度: 22,880千円 (直接経費: 17,600千円、間接経費: 5,280千円)
2022年度: 25,610千円 (直接経費: 19,700千円、間接経費: 5,910千円)
2021年度: 47,710千円 (直接経費: 36,700千円、間接経費: 11,010千円)
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キーワード | De novo細胞膜 / 膜分子システム / 電気化学 / マイクロ流体 / 固体NMR / De novo設計 / 人工細胞膜 / ナノポア計測 / 進化工学 / 膜輸送体 / 脂質二分子膜 / マイクロデバイス / 人工二分子膜 / マイクロ工学 / de novo設計 / 合成高分子膜 / 二分子膜 / 無細胞合成 / 膜ペプチド |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、タンパク質、核酸、脂質など生物を構成するバイオ分子および、関連化合物を組み合わせ、天然の細胞にはない分子システムをボトムアップに作るための学理を構築することにある。そのために、単なる生細胞の再現ではなく、細胞機能の一部を取り出し、その本来の機能を制御し、応用可能・社会実装可能な超越分子システムを構築する。それを実現するため、変異と選択を繰り返し最適解を得る進化工学と、有機合成、統計科学、デバイス工学など技術を融合させる。
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研究実績の概要 |
本研究では、天然には存在しない人工の細胞膜をボトムアップ的に設計(de novo設計)し、一分子計測や環境中で作動するマイクロロボットの開発を行う。
具体的には、これまでリン脂質で構成されてきた脂質二分子膜部分を両親媒性の人工分子に置きかけ、より高機能な人工細胞膜を構築する。そこに人工的に設計した膜輸送体の組み込みを目指す。例えば、de novo設計したアミノ酸配列のペプチドを、細胞膜を構成する脂質二分子膜中に埋め込むことで、標的分子を検出可能なナノポア(ナノ細孔)や、脂質膜内外の物質輸送を制御可能な膜輸送分子を開発する。また、これら構築したペプチド-脂質膜を分子同士で作るシステムとみなし、進化工学と組み合わせ探索による複数の分子で構成された分子システムの最適化のための学理を構築する。
これまで申請者は、de novo設計ペプチドナノポアによる一分子計測(Nature Nanotech. 2022)や、βアミロイドの神経細胞膜モデル膜でのポア形成機構に関する研究(PNAS Nexus 2024)を行ってきた。本研究では膜の内外を輸送する人工輸送体、および膜自体を工学的に設計再構築する手法について、それぞれの要素の相互作用解析により検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始から、毎月一度の総括班会議・領域セミナーを開催し、領域の運営、領域内共同研究について打ち合わせを継続して行っている。ジョンズホプキンス大やローマ大(Tor Vergata)から本分野で著名な研究者による国際シンポジウムを開催した。申請者らが構成するC01班では、無細胞膜システムの構築を行っており、de novo設計ペプチド二分子膜の構築、マイクロ流路による細胞サイズリポソームの大量作製、DNAコンピューティングを内包したリポソーム型分子ロボットの開発を目指し研究を進めている。
領域内共同研究として、B01班と新規βバレル膜タンパク質の再構成の試み、B02班と進化工学による膜ペプチドのセレクション、膜輸送体の改変について検討を行い、D01班とは膜輸送体分子と二分子膜構成分子との組み合わせ最適化について議論中である。これらの共同研究に伴い、博士学生の海外派遣、研究員さんのプロモーション活動などを促進している。また第2回目の領域会議・若手の会を高野山@和歌山で開催し、定期的に領域のニュースレターを発行した。日本生物物理学会年会において領域シンポジウムを組織し、シンポジウム内容についてBPPB誌にCommentaryを発表した。アウトリーチ活動として学部生を中心に行う国際サイエンスプログラムBIOMOD2023をサポートし、サポート学生の成果が銀賞に入賞した。
分担者の川村グループでは、細胞膜分子システムの固体NMR構造解析法の開発を目指して研究を行っている。固体NMRを用いた抗菌ペプチドの動的構造解析やロドプシンの極大吸収波長とシッフ塩基の窒素15の化学シフト相関をさらに深化させた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、マイクロ流体デバイスで作製した細胞サイズリポソームを利用し、癌マーカーを検出し自律的にがん抑制薬剤を合成する人工細胞/分子ロボットを開発する。また膜ペプチドや膜タンパク質ナノポアに関しては、進化工学及び組み合わせ最適化により、高機能なポアのセレクション手法確立を目指す。
川村グループでは、細胞膜分子システムの反応場である水和膜環境において、種々の生体分子同士の分子間相互作用検出のための固体NMR実験技術最適化についてさらに検討を進める。
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