研究領域 | 2.5次元物質科学:社会変革に向けた物質科学のパラダイムシフト |
研究課題/領域番号 |
21H05235
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 一成 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (40311435)
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研究分担者 |
末永 和知 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00357253)
西堀 英治 筑波大学, 数理物質系, 教授 (10293672)
坂野 昌人 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70806629)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
180,570千円 (直接経費: 138,900千円、間接経費: 41,670千円)
2024年度: 32,500千円 (直接経費: 25,000千円、間接経費: 7,500千円)
2023年度: 35,230千円 (直接経費: 27,100千円、間接経費: 8,130千円)
2022年度: 36,790千円 (直接経費: 28,300千円、間接経費: 8,490千円)
2021年度: 43,030千円 (直接経費: 33,100千円、間接経費: 9,930千円)
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キーワード | 2.5次元物質 / 分析技術 / 先端分光 / X線回折 / 電子顕微鏡 / 光電子分光 / X線構造解析 / 分光 |
研究開始時の研究の概要 |
学術変革領域(A)「2.5次元物質科学」において、本分析班(A03班)の役割は、2.5次元物質で発現する特異な構造や電子状態の解明に資する分析手法や技術を開発し、2.5次元物質科学の学術の発展を支えることにある。具体的には、本班が供する先端分析技術やそこから明らかとなる学術的知見を通して、集積化を含む物質創製や新奇物性、機能創出によるデバイス応用研究などを支援するとともに、「2.5次元物質科学」の基盤となる分析科学の学理を担う。
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研究実績の概要 |
学術変革領域(A)「2.5次元物質科学」において、本分析班(A03班)の役割は、2.5次元物質で発現する特異な構造や電子状態の解明に資する分析手法や技術を開発し、その学術の発展を支えることにある。具体的には、本班が供する先端分析技術やそこから明らかとなる学術的知見を通して、集積化を含む物質創製や新奇物性、機能創出によるデバイス応用研究などを支援するとともに、「2.5次元物質科学」の基盤となる分析科学の学理を担う事を目的としている。 昨年度に引き続き、2.5次元物質の研究に資する先端光学などの分析手法の高度化を進めた。特に、二次元物質を積層した際に生じるモアレ構造などの特異な系を対象として、第二高調波発生、極低温発光分光、時間分解分光などの先端光学手法が可能な装置群を広く整備し、領域内外の共同研究に供した。また、X線回折技術として、グラフェンインタカレーションのその場観察実験を開始した。SPring-8の薄膜X線回折のビームラインで最初の回折実験を行った。その結果を基に、次回以降の実験計画を策定した。加えて、10マイクロメートルサイズのデバイスの構造評価が領域内で重要であることがわかってきたため、その実験を行うための調査を進めた。電子顕微鏡技術および分光技術に関して、可視光領域の吸収スペクトルを角度分解能をもち測定する技術の応用に着手した。それによって、単層グラフェンのギャップやπ励起の分散関係の情報が実験的に得られつつある。角度分解光電子分光を用いたバンド構造の精密測定手法の確立によって、対称性の変化や層間距離の増大に伴う電子構造の変化といった2.5次元物質に特有な物性現象を観測することに成功した。また、電子回折およびX線回折を用いた結晶構造の超高速変化の観測や精密構造評価を行うことによって、電子構造と結晶構造を相補的に分析する技術の開発に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2.5次元物質の研究に資する先端光学手法を広く領域内外の共同研究に提供し、昨年度に引き続き複数の領域内のグループと共同研究を進めている。実際に、非接触・破壊で結晶の空間反転対称に関する情報が得られる第二高調波発生などの情報は、様々な系でその特異な物性と関連しており、必要不可欠な計測ツールであることがわかった。また、グラフェンインタカレーションのその場観察実験については、X線回折を行いながらインタカレーションの行う手順を確立し、データを測定することには成功しつつある。一方で原子層二層からのシグナルの変化を解析で明らかにすることが難しく、シミュレーターや解析方法の開発を進めている。10マイクロメートルサイズのデバイスの構造評価については、ナノビームが利用可能なビームラインの利用などについて、放射光施設の研究者と打ち合わせを行った。加えて、2次元材料の角度分解電子エネルギー損失分光においては、多くの実験結果と知見がまとまりつつある。またGW-BSEに基づく励起状態の理論的なサポートも得られるようになってきた。さらに、原子層物質やツイスト積層体を研究対象として、顕微角度分解光電子分光を用いた未解明電子構造の精査、超高速電子顕微鏡を用いた層間距離の超高速ダイナミクスの観測、超短パルスX線自由電子レーザーを用いた電荷密度波の超高速融解現象の観測に成功した。また、金アシスト劈開法を用いて得られる単層試料について角度分解光電子分光測定が可能な測定試料の条件の精査を開始した。 上記を鑑みて、当初の計画以上に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、2.5次元物質の研究のための様々な分析手法の開発と高度化を進め、それを領域内外に広く提供し共同研究を推進する予定である。特に、先端光学計測を利活用し、モアレ構造における特異な量子光学特性に関する情報を得る。また、共同研究を進めるにつれ、必要な装置のスペックやX線の性能など様々なことが判明してきている。2次元物質の放射光構造評価はほぼ無い状況の中で手探りではあるが、手法の構築が進みつつある。施設研究者と連携し、施設の最新状況を把握しながら研究を進めていく。また、インターカレーションなど層状物質の吸収スペクトルと原子レベル構造変化の関連付けを行う。電子顕微鏡技術に関して2.5次元物質の断面TEM観察にも取り組む予定である。顕微角度分解光電子分光、超高速電子顕微鏡および超短パルスX線自由電子レーザーや放射光光源を用いたX線構造解析を相補的に組み合わせることによって、2.5次元物質における電子構造と結晶構造の精密測定を行い、対称性の制御に伴うバンド構造の変化や光誘起構造相転移の直接観測を目指す。また、金アシスト劈開法を用いて得られる2次元物質やヤヌス遷移金属ダイカルコゲナイドにおける未解明電子状態の精査に取り組む。
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