研究領域 | 神経回路センサスに基づく適応機能の構築と遷移バイオメカニズム |
研究課題/領域番号 |
21H05245
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
|
研究機関 | 兵庫県立大学 (2023-2024) 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究 (2021-2022) |
研究代表者 |
郷 康広 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 教授 (50377123)
|
研究分担者 |
二階堂 愛 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (00383290)
|
研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
88,140千円 (直接経費: 67,800千円、間接経費: 20,340千円)
2025年度: 15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
2024年度: 15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
2023年度: 15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
2022年度: 19,630千円 (直接経費: 15,100千円、間接経費: 4,530千円)
2021年度: 22,360千円 (直接経費: 17,200千円、間接経費: 5,160千円)
|
キーワード | シングルセル / オミクス解析 / バイオインフォマティクス / 細胞型 / 神経回路 / オミックス / 遺伝子発現 / 神経細胞 / オミックス解析 |
研究開始時の研究の概要 |
環境に適応する過程で構築・遷移する神経回路の導出とそれを担う細胞タイプをセンサスするために、①高出力1細胞RNA-seq解析による数十万細胞の細胞タイプセンサス、②高感度1細胞RNA-seq解析による細胞タイプセンサス、③完全長1細胞RNA-seq解析による網羅的RNA種センサス、④多階層1細胞オミックス解析による回路・細胞活動・遺伝子発現同時センサス、⑤空間1細胞RNA-seq解析による細胞分布センサス、の5次元細胞センサス技術開発を高度化させ、領域内連携研究として3次元モダリティー(細胞分布seq・神経回路seq・神経活動seq)に応用し、適応回路の構築と遷移の設計原理の解明に挑む。
|
研究実績の概要 |
研究代表者の郷らは多様な細胞種から構成される脳を対象とし、同一細胞から複数の分子情報を取得すべく技術開発を行った。脳は、空間的(脳領域)にも時間的(発達・加齢)にもダイナミックに細胞の種類や構成が変化する。研究の再現性を担保するために必要なサンプル数(生物学的反復実験数)の向上が実験コストの観点からハードルが高いため、一度の実験に用いるサンプルから、可能な限り複数の異なる分子情報を取得し、多面的に解析・理解することが望ましい。そのために、10X Genomics社Chromiumを用いて同一細胞核から遺伝子発現情報(Single-nucleus RNA-seq)とクロマチンアクセシビリティ情報(Single-nucleus ATAC-seq)を取得するシステムを確立した。加えて、ロングリード型NGSを用いた完全長RNA配列情報も同一細胞核から取得する技術開発も行なった。 研究分担者の二階堂らは、一般的に困難とされる成体脳での1細胞RNAシーケンスを実現するための技術開発を実施した。成体脳はアクソンのミエリン由来のデブリなどが多く含まれるため1細胞採取が困難であり、一般的には1細胞核を対象としたRNAシーケンスが用いられる。しかし1細胞核RNAシーケンスは細胞を用いた手法と比較して、細胞質に含まれるRNAを検出できないため、検出される遺伝子が相対的に少なくなる。そこで、パッチクランプのような電気生理実験で用いられる手法をQuartz-Seq2法に応用し、成体脳から健康な1細胞を採取することで、1細胞RNAシーケンスを行う手法を開発した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の郷らは、同一細胞から複数の分子情報を取得すべく技術開発を行っている。同一細胞核から遺伝子発現情報とクロマチンアクセシビリティ情報に加えてロングリード型NGSを用いた完全長RNA配列情報も取得する技術開発を行っている。完全長RNA配列情報の取得とスプライシングバリアント解析は、発達、細胞タイプ、疾患感受性、種間差など様々な細胞の状態を規定する重要な情報を含むため、それらの情報を加味したマルチモーダルな解析を進め多面的に現象の理解を進めることが重要である。実例として、ヒトと類人猿の死後脳や疾患霊長類モデルを用いた解析に適用した。ヒトと類人猿の比較解析から、ヒト特異的エクソンを持つ遺伝子を約600個同定し、エピゲノム制御を含めた遺伝子制御ネットワークとそれが基盤となり生み出される「ヒトらしさ」の統合的な解析を進めている。 研究分担者の二階堂らは、二階堂らが開発した世界最高性能を誇るQuartz-Seq2法をアクソンのミエリン由来のデブリなどが多く含まれる成体脳に適用し、成体脳から健康な1細胞を採取することで、1細胞RNAシーケンスを行う手法を開発した(Shima Y. et al. Cell Reports. 2023)。マウス精神疾患モデルの視床室傍核(PVT)ニューロンから平均8,700遺伝子を検出した。これは既存手法の4倍程度の遺伝子検出率である。この手法で得られたPVTニューロンの遺伝子発現パターンから5つの細胞種に分類できることが明らかになった。それぞれの細胞型の投射パターンを解析したところ、別々の脳領域に投射しており、そのうちのひとつは食欲関連神経ペプチドと強い関連があることが明らかになった。このように成体脳から高感度の遺伝子発現と取得し神経投射の解析と統合することで、神経回路と細胞型の関連を明らかにできることを示した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究代表者の郷と研究分担者の二階堂で開発した、マルチモーダル解析、高感度解析をさらに高度化し領域内の連携研究に活用する。
|