研究領域 | 新興硫黄生物学が拓く生命原理変革 |
研究課題/領域番号 |
21H05259
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
中川 秀彦 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (80281674)
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研究分担者 |
異島 優 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (00457590)
梅澤 啓太郎 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30505764)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
85,670千円 (直接経費: 65,900千円、間接経費: 19,770千円)
2024年度: 13,650千円 (直接経費: 10,500千円、間接経費: 3,150千円)
2023年度: 14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
2022年度: 14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
2021年度: 29,120千円 (直接経費: 22,400千円、間接経費: 6,720千円)
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キーワード | 超硫黄分子 / 翻訳後修飾 / ポリスルフィド / 蛍光プローブ / プロテオミクス |
研究開始時の研究の概要 |
硫黄原子が複数連なった構造を持つ分子・官能基を超硫黄という新しいカテゴリーで捉えなおし、細胞など多成分が混在する夾雑系での超硫黄化学を追求して、超硫黄in-cellケミストリーを確立することを目指す。参画研究者が有する質量分析・オミクス解析等の技術および蛍光・質量分析マルチタグ試薬等の独自新技術を融合・駆使して細胞内超硫黄分子の反応性を解析し、古典的硫黄化学と対比しつつ細胞内超硫黄分子の化学を明らかにする。さらに超硫黄オミクスを含む多様な解析技術に研究展開する。
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研究実績の概要 |
本研究では、細胞系(細胞内及び細胞表面・細胞間質)における超硫黄分子・超硫黄修飾の化学的性質、すなわち存在様態と反応性を明らかにし、超硫黄in-cellケ ミストリーを確立することを目指す。 今年度は、これまでの独自の知見に基づいて引き続きシステインパースルフィドに反応選択性が高いタグ化試薬を設計合成し性能を比較した。その結果、キサンテン環上の置換基効果として嵩高い置換基が選択性向上に有効に寄与することを見出した。また蛍光ラベル化可能な反応点を有するラベル化蛍光プローブについて反応性を検証するためのモデル化合物を合成した。 本年度も引き続き、細胞外成分に着目し、超硫黄修飾タンパク質の存在やそれらの病態時での変動を明らかにすべく、全酸化型超硫黄分子を定量可能な EMSP法や全還元型超硫黄分子のDTT-MB法を用いた解析を行った。これら方法論の妥当性を中川博士が開発した蛍光プローブでの評価も併せて行った。今回は皮膚における超硫黄化を検討すべく、角質層をテープストリップ法にて採取した後、可溶化したサンプルを各種方法にて検討超硫黄量を評価したところ、角質層に超硫黄分子が存在し、乾癬の病態でその量が増加することが観察された。超硫黄分子の特異的検出蛍光プロー ブを用いた解析によっても、同様の結果であった。本結果は角質における超硫黄分子の病態変動に関する初の報告である。 本年度は、昨年度開発したタグ化試薬群をもとに、タンパク質解析を指向したタグ化試薬の機能化および、タグ化試薬の適応性・反応性の評価を実施した。アルキニル基を導入した新規タグ化試薬群の合成を行い、これを超硫黄修飾タンパク質へ適応したところ、タンパク質の超硫黄化修飾部位への反応性を損なうことなく標識が可能であり、かつアルキニル基を足場としたクリックケミストリーによる機能性分子のライゲーションが可能であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
システインおよびグルタチオンについて、パースルフィド化したモデル化合物に対してプローブの立体効果が選択制に有効であることを見出し、基本的分子設計の有効な指針を追加することができた。 また、酸化ストレス刺激として紫外線を用いて血清アルブミンの超硫黄分子の反応性を評価することで、酸化ストレス下で酸化型超硫黄分子が減少し還元型超硫黄分子が増大することを見出した。さらに、タグ化試薬を用いたMS解析やタンパク質パースルフィド化の特異的検出蛍光プローブを用いた解析によって還元型超硫黄分子の増大を見出した。 これらの開発・発見により当初の目的に向けて着実に知見が得られているから。
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発したパースルフィド反応性プローブの知見に基づいて、パースルフィド反応点の立体障害および脱離能を様々な方法で変化させた誘導体を設計合成し、反応性の差を検討する。これによりタンパク質中のシステイン残基との選択性をさらに向上させることが可能と考えられる。また、タグ化試薬の構造展開により、超硫黄修飾タンパク質を蛍光タグ化する超硫黄タグ化プローブを開発するため、蛍光ラベル化可能な反応点を有するラベル化蛍光プローブの構造活性相関を明らかにし、これを応用したプローブを用いてタンパク質蛍光ラベル化の効率を検証する。 昨年度行った生体液や毛髪に追加して、本年度は皮膚における超硫黄分子をEMSP法やDTT-MB法を基軸に、タンパク質パースルフィド化の特異的検出蛍光プローブ等の確立した方法での裏付けを取りながら、超硫黄分子の存在量や存在様式の全体像が見えてきた。今後、角質における具体的な超硫黄分子化されているタンパク質の同定やその反応性をMS解析によっても網羅的に明らかにしていく予定である。 今後は、今年度開発したタグ化試薬及び標識技術の階層的超硫黄プロテオーム解析への応用展開実験を予定している。具体的には、これまでに開発した反応性の異なる複数のタグ化試薬を用いた階層的解析手法の確立を通じて、超硫黄プロテオーム解析の深化や階層化を目指すとともに、EMSP法やDTT-MB法をはじめとする複数の分析手法との複合による多様な超硫黄情報の取得を目指す。
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