研究領域 | 新興硫黄生物学が拓く生命原理変革 |
研究課題/領域番号 |
21H05261
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中林 孝和 東北大学, 薬学研究科, 教授 (30311195)
|
研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
72,930千円 (直接経費: 56,100千円、間接経費: 16,830千円)
2024年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2023年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
2022年度: 13,650千円 (直接経費: 10,500千円、間接経費: 3,150千円)
2021年度: 24,310千円 (直接経費: 18,700千円、間接経費: 5,610千円)
|
キーワード | 超硫黄分子 / ラマン顕微鏡 / 非線形ラマン散乱 / タンパク質 / 密度汎関数法 / 膜透過性高分子 / 量子化学計算 / 単一生細胞 / 濃度定量 / 非線形ラマン / SOD1 / 酸化作用 / 機械学習 / 密度汎関数 / 蛍光寿命 |
研究開始時の研究の概要 |
超硫黄分子の生体内での役割を理解するためには、生細胞内にある超硫黄分子のその場観測と動的変化を理解することが必要である。本研究では、ピコ秒パルスレーザーを用いる非線形ラマン散乱と蛍光を組み合わせた新たな顕微システムを構築し、細胞内での超硫黄分子の細胞内分布、濃度、代謝のダイナミクス計測を目指す。さらに、分子動力学計算や機械学習などの様々な解析手法を用いて、超硫黄分子の生理機能の分子論的解明、超硫黄分子の発現と細胞内環境との相関についても検討する。
|
研究実績の概要 |
単一生細胞内に超硫黄分子を導入し、細胞内での超硫黄分子の画像化、代謝過程をラマンイメージングを用いて観測することに成功した。試料としてジメチルトリスルフィドとコントロールとしてジメチルジスルフィドを用い、膜透過性高分子であるリン脂質高分子MPCを用いて水溶化させ、培養下にあるHeLa細胞内の高効率導入を行った。S-S伸縮振動バンドが細胞内で明瞭に観測され、S-Sバンドによるイメージング測定を行った。トリスルフィド体は、脂肪滴とミトコンドリアに選択的に局在することを示した。一方、ジスルフィド体はトリスルフィド体ほど細胞内に導入されず、脂肪滴にある程度局在するものの、ミトコンドリアへの局在は観測されなかった。また、トリスルフィド体に導入された脂肪滴はトリスルフィド以外のS-Sバンドが観測され、テトラスルフィドやペンタスルフィドなど硫黄鎖の伸長反応が生細胞内の脂肪滴で生じることを示した。オレイン酸のような脂質中では伸長反応が生じないことから、脂肪滴内の酵素によって伸長反応が生じたと考えられる。私達が提案することができた水のラマンバンドを用いた濃度定量法を単一生細胞内にある超硫黄分子に適用し、超硫黄分子の濃度定量・濃度イメージングも行うことができた。前年度に製作した非線形ラマン散乱であるCARS顕微鏡に改良を加え感度向上を行い、次年度ではPMCを用いた超硫黄分子の細胞内導入過程をリアルタイムで観測することを予定している。また2次元相関、機械学習などの振動スペクトルの解析法の開発・整備も引き続き行った。超硫黄分子の細胞内導入に伴う細胞状態変化の検出をこれらの解析法を用いて行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超硫黄分子の細胞内ラマンイメージングの測定は硫黄単体であるS8以外では初めてであると思われる。細胞内分布や代謝なども信号雑音比が高く観測することができた。CARS顕微鏡と組み合わせることで超硫黄の動態を明らかにできると考えている。振動スペクトルの解析手法の蓄積も行い、おおむね順調に進展しているとした。
|
今後の研究の推進方策 |
超硫黄分子の細胞内導入と代謝過程のラマンイメージング測定のプロコトルを確立できたため、他の超硫黄分子への展開、製作したCARS顕微鏡への応用を行う。硫黄鎖依存性、量子化学計算を用いた代謝化合物の同定も行う。今年度できなかった蛍光寿命との組み合わせも行う予定である。2次元相関、機械学習、多変量スペクトル解析などのラマンスペクトルの解析法を用いて、超硫黄分子の細胞内導入に伴う細胞状態変化、細胞内分子の濃度変化の定量なども行う。
|