研究領域 | 新興硫黄生物学が拓く生命原理変革 |
研究課題/領域番号 |
21H05264
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
本橋 ほづみ 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00282351)
|
研究分担者 |
伊東 健 弘前大学, 医学研究科, 教授 (10323289)
|
研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
94,380千円 (直接経費: 72,600千円、間接経費: 21,780千円)
2024年度: 20,410千円 (直接経費: 15,700千円、間接経費: 4,710千円)
2023年度: 18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2022年度: 17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2021年度: 16,510千円 (直接経費: 12,700千円、間接経費: 3,810千円)
|
キーワード | 超硫黄 / ミトコンドリア / 低酸素 / 超硫黄分子 / 慢性低酸素 / 炎症応答 / 硫黄代謝 / エネルギー産生 / 転写制御 |
研究開始時の研究の概要 |
ミトコンドリア型システイニルtRNA合成酵素であるCARS2は、超硫黄分子を活発に産生し、ミトコンドリアの膜電位維持に重要な役割を果たしている。また、ミトコンドリア硫黄酸化系の抑制も膜電位を低下させることから、超硫黄の酸化的排出過程が電子伝達系と膜電位形成に共役していることが示唆されるが、その詳細は不明である。本研究では、ミトコンドリアの電子伝達系における超硫黄分子の役割を解明し、酸素利用の効率化における超硫黄の必要性と、低酸素環境でのエネルギー代謝における超硫黄の貢献を明らかにする。また、細胞系列によってはCARS2と異なる他のミトコンドリア型ARSが超硫黄産生に貢献している可能性を探る。
|
研究実績の概要 |
本研究では、ミトコンドリアの電子伝達系における超硫黄分子の役割を解明し、酸素利用の効率化における超硫黄の必要性と、低酸素環境でのエネルギー代謝における超硫黄の貢献を明らかにすることを目的としている。 1)誘導的CARS2変異がもたらす造血組織への影響 超硫黄産生活性を喪失したCARS2 AINK変異体をノックインしたマウスを利用して、誘導的にCARS2 AINKのみを発現するマウスを作成したところ、重度の貧血と造血幹細胞の枯渇がおこることがわかった。造血細胞のミトコンドリアでは、膜電位の低下と活性酸素種の増加、さらに二価鉄の顕著な増加がみとめられ、鉄利用の障害がおこっている可能性が示唆された。一方、ミトコンドリアDNAにコードされたタンパク質でシステイン残基を有するタンパク質が、CARS2 AINKのみを発現するマウスで激減していることを見出した。興味深いことに、これは、低分子の超硫黄分子を添加しても回復せず、超硫黄分子産生能を有するがシステインtRNA合成酵素活性を失ったCARS2変異体を導入しても相補されないことがわかった。すなわち、ミトコンドリアのリボソームで翻訳されると同時にシステインパースルフィドが組み込まれることが、ミトコンドリアのタンパク質生合成に必要であることが予想された。 2)慢性低酸素がもたらす代謝変化 慢性的な低酸素状態において、炎症応答が増幅することを見出した。詳細な解析から、ピリドキサールリン酸が激減していることがわかった。ピリドキサールリン酸は、超硫黄分子産生に必須の補酵素であることから、炎症の増悪には、超硫黄分子の低下が関与する可能性が考えられた。そこで、低酸素状態における超硫黄を調べたところ、実際に減少していることがわかった。また、低酸素状態において超硫黄分子GSSSGを添加すると、炎症応答が緩和されることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ミトコンドリアにおけるタンパク質翻訳に、翻訳時の超硫黄分子導入が極めて重要で会える可能性が示唆され、全く新規の翻訳制御機構の発見につながる可能性が出てきた。CARS2 AINKのみを発現するマウスを作成してはじめて見出すことができた現象であり、これまでの培養細胞では知り得ないことを明らかにできると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリアにおけるタンパク質の品質管理の目標の1つが、翻訳時に導入される超硫黄化であるという仮説の検証を進める。具体的には、CARS2 AINKのみを発現するマウスの細胞で、ミトコンドリア内のプロテアーゼをノックアウトし、減少しているミトコンドリアタンパク質を増加させることができるかどうか、また増加するなら、それが超硫黄化を欠失しているかどうかを調べる。 また、CARS1についても同様の変異体(CARS1 AIIR)を作成し、CARS1 AIIRのみを発現するマウスを作成したところ、大変興味深い表現系が観察されているので、そのさらなる解析を進める。
|