研究領域 | 新興硫黄生物学が拓く生命原理変革 |
研究課題/領域番号 |
21H05271
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
増田 真二 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (30373369)
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研究分担者 |
清水 隆之 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (90817214)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
81,120千円 (直接経費: 62,400千円、間接経費: 18,720千円)
2024年度: 15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
2023年度: 15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
2022年度: 14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
2021年度: 20,410千円 (直接経費: 15,700千円、間接経費: 4,710千円)
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キーワード | 硫化水素 / 超硫黄 / 光合成細菌 / 土壌細菌 / 転写制御 / 活性硫黄分子種 / 大腸菌 / 転写因子 / 細菌 / 活性硫黄 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞内における硫化水素の認識とシグナル伝達のメカニズム、またその生理的重要性の解明を目的に、細菌の硫化水素応答時のセンサータンパク質の修飾状態と遺伝子発現変化の精査、また硫化水素を基質とした超硫黄分子の合成と代謝過程を調べ、硫化水素のシグナル伝達に超硫黄分子が果たす役割を明らかにする。大腸菌や光合成細菌の硫化水素応答性転写因子の欠失変異株を作出し、その表現型を精査することで、硫化水素に応答した転写調節の生理的重要性を明らかにする。得られた知見を基に、新たな抗生物質のターゲットや腫瘍の診断への応用、さらには海洋エネルギー資源の開発にむけた、硫化水素・超硫黄分子利用の可能性を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究ではいくつかの細菌種を用いて硫化水素応答時のセンサータンパク質の修飾状態と遺伝子発現変化を精査し、細胞内における硫化水素の認識とシグナル伝達のメカニズム、またその生理的重要性を解明することを目指している。2023年度は以下の項目の研究を進めた。
1)大腸菌のYgaVの生化学的解析: 昨年度までに大腸菌のSqrRホモログ(YgaV)は高濃度の硫化水素イオンにより同様の修飾を直接形成しうることがわかった。この反応性の違いが何に起因するのかを、SqrRとの比較生化学的解析により明らかにすることを試みた。その結果、両者共に高濃度の硫化ナトリウム添加により分子内の架橋がかかることがわかった。この結果から、YgaVとSqrRは細胞内においては硫化水素ではなく活性硫黄分子種により主に修飾を受けると考えられた。 2)タマネギ感染菌における活性硫黄分子種の役割:タマネギは抗菌物質として作用するさまざまな硫黄化合物をつくり、タマネギに感染する細菌はこれら硫黄化合物に応答するシステムを有していると考えられる。そこで活性硫黄分子依存のシグナル伝達に関する研究成果の応用的展開を見据え、タマネギ感染菌 Burkholderiaにおけるタマネギ感染時にはたらく転写因子の同定を進めた。タマネギ抽出液をこの菌の培養液を添加し、その際に発現が上昇する遺伝子をRNA-seq解析により網羅的に調べたところ、特徴的に発現が上昇する遺伝子クラスターを同定した。この遺伝子クラスター内に存在する転写因子を同定し、その変異体を調べたところ、タマネギ抽出液を添加した際のこのクラスターの遺伝子発現が変化しなかった。つまりこの転写因子がタマネギ由来の何らかの分子を認識し、必要な遺伝子の発現を調節していることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた実験が遂行できたため
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を踏まえ、2023年度は以下の項目の研究を進める予定。 1)大腸菌のYgaVの生理学的解析: 紅色光合成細菌の硫化水素依存型転写因子SqrRは活性硫黄分子種依存的に分子内テトラスフィド結合を形成することがわかっ ている。一方、 このYgaVの転写制御の生理的役割はよくわかっていない。そこで大腸菌の硫化水素合成酵素(MstA)の過剰発現体を作成し、そのRNA seq解析を行なう。得られた結果から硫化水素過剰合成で発現が変化した遺伝子を同定し、それらの遺伝子発現が上昇する大腸菌内の硫化水素濃度が上昇する条件下において、YgaV依存的に発現上昇する遺伝子かどうかをRNA解析により調べる。 2)紅色細菌の活性硫黄分子代謝とシグナリングの関係性: 紅色細菌内の活性硫黄分子種の組成変化を基にその代謝過程を予想したところ、SQRによる硫化水素酸化後の活性硫黄分子種の代謝過程が2022年度までに予想された。そこでこの代謝に関わると予想されたいくつかの代謝酵素の変異体を作出し、活性硫黄分子種の代謝とそのシグナリングの関係性を調べたところ、いくつかの変異体において硫化水素が酸化された後に蓄積する元素状硫黄が細胞外ではなく細胞内に蓄積するものがあることがわかった。この結果は、変異を加えた遺伝子が元素状硫黄を細胞外へ排出するトランスポータをコードしている可能性が高いことを示している。2024年度はこの遺伝子の解析を進める。 3)Burkholderiaより単離したタマネギ抽出液応答性の転写因子の機能解析を進める。
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