研究領域 | 非ドメイン型バイオポリマーの生物学:生物の柔軟な機能獲得戦略 |
研究課題/領域番号 |
21H05274
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中川 真一 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (50324679)
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研究分担者 |
荒木 喜美 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 教授 (90211705)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
176,930千円 (直接経費: 136,100千円、間接経費: 40,830千円)
2024年度: 26,390千円 (直接経費: 20,300千円、間接経費: 6,090千円)
2023年度: 26,520千円 (直接経費: 20,400千円、間接経費: 6,120千円)
2022年度: 26,520千円 (直接経費: 20,400千円、間接経費: 6,120千円)
2021年度: 70,720千円 (直接経費: 54,400千円、間接経費: 16,320千円)
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キーワード | 超天然変性タンパク質 / ゲノム編集 / 天然変性領域 / ノンコーディングRNA / lncRNA / 相分離 / ノックアウトマウス / 選択的スプライシング / Neat1 / パラスペックル / 4.5SH / UGS148 / Tanycyte / 超解像顕微鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
「重要な機能を持つRNAやタンパク質などの生体高分子の一次配列は、種間で高度に保存されている」。これが分子生物学の発展を支えてきた基本的なドグマです。ところが、種間で保存された配列や機能ドメインをほとんど持たないにもかかわらず、細胞内あるいは試験管内の反応で重要な分子機能を発揮することが確認された遺伝子産物が、近年相次いで報告されています。本研究では、一次配列から機能を予測することができないようなノンコーディングRNAや超天然変性タンパク質に注目し、それらのマウスの変異体を作製して表現型を解析することで、「非ドメイン型」遺伝子の生理機能を明らかにしてゆきます。
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研究実績の概要 |
ヒトやマウスなどの高等真核生物のゲノムからは、長鎖ノンコーディングRNAを始めとする、種間で高度に保存された領域を持たない「非ドメイン型RNA」が大量に転写されている。本研究では巨大な分子集合体を形成する非ドメイン型RNAに注目し、それらの変異マウスを作製して表現型解析を行うことで、核内非膜オルガネラを始めとした柔軟な分子集合体の生物学的な意義を明らかにする。また、領域における変異マウスの作製と表現型解析の支援を行う。 Neat1によるパラスペックル形成が幅広い種で保存されているか調べるために、ハダカデバネズミにおけるNeat1の発現解析を行った。、マウスにおいては大脳皮質の神経細胞や小腸粘膜上皮基部の細胞、胃のParietal細胞などでは、パラスペックルの骨格として機能するNeat1_2の発現は見られない。ところが、ハダカデバネズミにおいてはこれらの細胞でNeat1_2の強い発現が見られ、さらにパラスペックルマーカーであるNonoの濃縮も見られた。一方、小腸の粘膜上皮の先端部の細胞において、パラスペックルの必須構成タンパク質因子であるFusの発現が見られなかった。そこでFusと類似のドメイン構造を持つTaf15やEwsr1の発現を調べたところ、Fusの発現が見られない細胞でこれらのRNA結合タンパク質が発現していることがわかった。これらの結果から、パラスペックルの構成成分は種特異的な制御を受けており、それぞれの種において特有の機能を発揮していることが予想された。 また、非ドメイン型バイオポリマーの変異体を国内外の研究者に提供し、その生理機能の解明に貢献した。 さらに、領域で同定された新規非ドメイン型ポリマーの変異マウスを作製し、複数のものが胎生致死となることを明らかにしたほか、機能未知のノンコーディングRNA、4.5SHの変異マウスも胎生致死の表現型を示すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度新たに作製した非ドメイン型バイオポリマーの変異体で複数のものが胎生致死となることが確認できた。一般に、長鎖ノンコーディングRNAの変異体の多くは外見上顕著な異常を示さないものが多いが、新規の非ドメイン型RNA、非ドメイン型タンパク質、それぞれについて、胎生致死となる変異体が得られたことで、今後大きく領域研究が進展することが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
変異体が胎生致死となるような非ドメイン型バイオポリマーが複数得られているので、それらの遺伝子産物の詳細な分子動作機構について領域内の研究者と連携を深めながら解析をすすめる。具体的には、常法であるRNA-Seq解析によって遺伝子発現の変化を調べるほか、それぞれの遺伝子産物と相互作用する分子を近位ビオチンラベル法等の手段を用いて同定する。また、同定された相互作用分子の動態が変異体において変化しているかどうかを調べるために、変異マウスの胚盤胞からES細胞を作製し、そのES細胞に相互作用分子のEGFP融合タンパク質を発現させ、FRAP等のライブイメージング解析を行う。
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