研究領域 | 非ドメイン型バイオポリマーの生物学:生物の柔軟な機能獲得戦略 |
研究課題/領域番号 |
21H05275
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
甲斐 歳恵 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 教授 (40579786)
|
研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
96,070千円 (直接経費: 73,900千円、間接経費: 22,170千円)
2024年度: 17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2023年度: 17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2022年度: 17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2021年度: 24,310千円 (直接経費: 18,700千円、間接経費: 5,610千円)
|
キーワード | 非ドメイン型タンパク質 / 非膜オルガネラ / ヌアージュ / piRNA |
研究開始時の研究の概要 |
非膜オルガネラは、天然変性領域を持つタンパク質や、強固な二次構造をとらないRNA分子(総称して非ドメイン型バイオポリマーと呼ぶ)が集合して形成される分子凝集体である。非膜オルガネラの形成には、非ドメイン型バイオポリマーが仲介する多価の弱い相互作用の関与が報告されているが、その具体的な生理機能や生体内における制御機構に関しては不明なものが多い。本計画研究では、ショウジョウバエをモデル系として、組織および個体レベルでのドメイン型バイオポリマーの生理機能を解明する。また、生理機能の対応づけが確立しているヌアージュをモデルシステムとして、非膜オルガネラ構成因子の動作機構を個体レベルで検証する。
|
研究実績の概要 |
非膜オルガネラ・ヌアージュの構造因子であるTdrd5(Tej)は、他のヌアージュタンパク質、Vasa、Tdrd9 (SpnE)とそれぞれ LOTUSとSRSという別個のモチーフを通じて相互作用し、それらをヌアージュへリクルートしていることを明らかにした。またそれらのタンパク質のTdrd5によるヌアージュへのリクルートは、piRNA前駆体をヌアージュへリクルートするために必須である。すなわち、Tdrd5は、ヌアージュ形成とpiRNA前駆体のプロセシングの中核を担う因子として機能していることが明らかとなった。この成果は国際一流誌のJCBに掲載された。 また、ショウジョウバエの精巣生殖細胞で観察されるタンパク質コード領域からpiRNAと呼ばれる非コードRNAが産生される「非コード化」現象を見出した。この非コード化にはAgo2とDcr2が関与し、特定のmiRNAが相互作用して非コードRNAの産生を誘導すること、および非コード化により産生されるCDS-piRNAがクロマチン制御やスプライシング因子を標的にすることを明らかにした。この成果は国際一流誌のScience Advances誌に掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【フェーズI】 領域内の稲田らとの共同研究である、RNAの一次配列に依存しない翻訳終結制御機構を国際一流誌Developmentでリバイズ中であり、軽微な追加実験を行っている。今後、1ヶ月以内のアクセプトを目指している。國枝らとの共同研究では、耐乾燥性など、本来高等生物が持たない特性を与えうるクマムシタンパク質を発現するトランスジェニックハエを引き続き作成する予定である。 【フェーズII】 同領域内の尾山らとは、PIWIファミリータンパク質及びTdrd5、Vasa、Tdrd9 (SpnE)の近位性タンパク質ラベル法による新たなヌアージュ構成因子の探索を行い、有望な候補タンパク質について機能解析を進めている。それらのタンパク質をコードする遺伝子のノックダウンによって、piRNAのプロセシング及びヌアージュ形成へ影響が出ているものもあり、今年度中に論文投稿を目指している。RINGモチーフを持つTdrd4(Kumo)については、試行錯誤の末、大腸菌で発現させた精製Tdrd4タンパク質を用いて試験管内でのユビキチン化活性測定系を立ち上げつつある。また、このユビキチン化活性中心を変異させたKumoタンパク質はヌアージュへの局在が失われたことから、ユビキチン化活性がヌアージュへの集積に重要でことが示唆されている。今後は上述の試験管内ユビキチン活性測定系を用いて、ユビキチン化標的タンパク質の試験管内凝集体への集積を解析する。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、ヌアージュのアセンブリーについては、タンパク質因子とRNA因子の両方を解析している。前者については、進捗状況で述べたとおり、既知タンパク質の近位性ラベリング法によって同定された因子の遺伝学的解析が進行中である。RNA因子については、領域内の木村らとの共同研究としてPICによる解析を進めつつある。具体的には、野生型ヌアージュに集積しているRNA及びTDRD5欠損の形成不全ヌアージュに集積しているRNAをPICでシーケンス解析し、ヌアージュ形成不全によるpiRNAプロセシングへの影響を精査する予定である。また、ショウジョウバエヌアージュタンパク質のBoYbやSquについても、piRNA生合成経路における分子機能を解析しており、それぞれ他のヌアージュ因子との結合や、結合に必要なドメインの同定、piRNAピンポン経路やフェージング経路における機能についてのデータを得るため、piRNAシークエンス解析等を進めている。現在、PIWIファミリータンパク質の翻訳後修飾の有無や、その修飾の生理学的意義の解析を進めている。今後は、ヌアージュタンパク質の翻訳後修飾による、それらのヌアージュへのアセンブリーとpiRNA生合成への影響を解析予定である。
|