研究領域 | 非ドメイン型バイオポリマーの生物学:生物の柔軟な機能獲得戦略 |
研究課題/領域番号 |
21H05277
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
稲田 利文 東京大学, 医科学研究所, 教授 (40242812)
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研究分担者 |
今高 寛晃 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (50201942)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
92,170千円 (直接経費: 70,900千円、間接経費: 21,270千円)
2024年度: 17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2023年度: 17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2022年度: 17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2021年度: 20,410千円 (直接経費: 15,700千円、間接経費: 4,710千円)
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キーワード | 非典型翻訳 / dORF / 非ドメイン型RNA配列 / mRNA非依存翻訳反応 / 非典型翻訳システム / 品質管理機構 / 非ドメイン型RNA / 非典型翻訳反応 / 試験管内翻訳再構成系 / 翻訳開始機構 / 非定型翻訳開始機構 / 非定型翻訳開始 / 翻訳開始因子 |
研究開始時の研究の概要 |
解析が手つかずのdORF規定配列は、ゲノム中に数百から数千のオーダーで存在すると予想されるため、新規機能性非ドメイン型翻訳開始RNAを飛躍的に拡張できることが期待される。本研究により、非ドメイン型翻訳開始RNAの生理機能や細胞機能、あるいは分子機構に関する知見が蓄積することで、特定の構造をとりにくいRNA分子が機能を発揮する際の共通の動作原理の理解に貢献したい。また、得られた構造情報に基づいて高活性の人工非ドメイン型翻訳開始ユニットを設計し、企業との連携も視野に入れながら、RNAワクチンでその威力が明らかになった、RNA創薬における抗原の発現効率を制御する技術開発などの応用につなげたい。
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研究実績の概要 |
正確な遺伝子発現は生命現象の根幹である。稲田は、翻訳の正確性を保証する品質管理機構RQC(Ribosome-associated Quality Control)の分子機構を解明し、タンパク質恒常性維持における機能を明確にした。真核生物の普遍的な修飾であるポリ(A)鎖が翻訳された場合の異常について解析し、異常翻訳の実体が衝突リボソームであることを遺伝学的・生化学的・構造学生的解析から明確にした。mRNAで3‘非翻訳領域mRNAの3‘非翻訳領域は、生物学的に重要な役割を果たしているにも関わらず、種間で広く保存された機能ドメインをほとんど持たない未開拓の領域である。代表者の稲田は、dORFの翻訳開始機構を解析し、翻訳開始因子eIF4Gが直接dORFを規定する配列に結合して翻訳を誘導することを見いだした。哺乳細胞の翻訳系の試験管内完全再構成を確立した分担者の今高と共同で翻訳開始機構を解析し、翻訳開始因子eIF4Gが直接dORFを規定する配列に結合して翻訳を誘導することを見いだした (NAR 2020:32941651) 。本計画研究ではdORFの翻訳に必須な非ドメイン型RNA配列の網羅的同定と機能解析を目的とし、領域の目的の達成に貢献する。当該年度には、①細胞と試験管内翻訳反応を用いて、eIF4Gによる翻訳開始活性を担う非ドメイン型RNAの構造機能相関解析を進めた。ストレス条件下等のCap依存の翻訳が低下した条件での非定型翻訳を同定し、哺乳類翻訳開始完全再構成を用いて分子機構を解明した(稲田・今高)。領域内連携として中川が、dORFのタグ付加したマウスを作製し発現解析を行った(中川・稲田)。また、②mRNAによらない非典型翻訳システムの分子機構について、翻訳品質管理RQC経路の1つであるCAT-tailingを中心に分子機構の解明を進めた。また、非ドメイン型タンパク質HEROが翻訳品質管理機構に関与する可能性を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非ドメイン型RNA配列の網羅的同定と機能解析を行い、以下の研究成果を得た。 ①翻訳開始活性を担う非ドメイン型RNAの構造機能解析:細胞と試験管内翻訳反応を用いて、eIF4Gによる翻訳開始活性を担う非ドメイン型RNAの構造機能相関解析を進めた。ストレス条件下等のCap依存の翻訳が低下した条件での非定型翻訳を同定し、哺乳類翻訳開始完全再構成を用いて分子機構を解明した(稲田・今高)。 ②非典型翻訳系であるmRNAによらない翻訳システムの分子機構:RQC経路の最終段階で異常タンパク質にCATテールと呼ばれるタグ配列が付加される分子機構を出芽酵母の系を用いて解析した。eIF5Aの新規機能を明らかにした(Petr, Ebine et al., Mol Cell 2023)。またCATテール付加反応の前提となる翻訳品質管理RQCについても分子機構の理解が進んだ(Ishimura and Ito, Ito 2023)。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下である。①翻訳開始活性を担う非ドメイン型RNAの構造機能解析:eIF4Gによる翻訳開始活性を担う非ドメイン型RNAの構造機能相関解析を進める。② mRNAによらない非典型翻訳システムの分子機構:哺乳類細胞におけるCATテール付加反応を解析する系の構築が完了した。tRNAの特異性を決定する分子機構を解明する。また、CATテールが付加された異常タンパク質の運命(分解か凝集)を決定する非ドメイン配列を明らかにする。さらに、疾患の原因となるCATテールの異常の分子実体を解明する(稲田)。さらに、③非ドメイン型HEROタンパク質の1つであるHERO45が停止中の80Sリボソームに結合し、翻訳品質管理機構を抑制する可能性が示唆されたため、その分子機構と生理機能の解明を進めた。
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