研究領域 | 非ドメイン型バイオポリマーの生物学:生物の柔軟な機能獲得戦略 |
研究課題/領域番号 |
21H05281
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
伊藤 拓宏 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (70401164)
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研究分担者 |
西増 弘志 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00467044)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
107,380千円 (直接経費: 82,600千円、間接経費: 24,780千円)
2024年度: 20,410千円 (直接経費: 15,700千円、間接経費: 4,710千円)
2023年度: 20,540千円 (直接経費: 15,800千円、間接経費: 4,740千円)
2022年度: 20,540千円 (直接経費: 15,800千円、間接経費: 4,740千円)
2021年度: 25,220千円 (直接経費: 19,400千円、間接経費: 5,820千円)
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キーワード | 立体構造 / クライオ電子顕微鏡 / トモグラフィー / 単粒子解析 / X線結晶構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では非ドメイン型バイオポリマーが形成する非膜オルガネラの内部構造や、実際にそれらの分子が機能する際の構造を、構造生物学の視点から明らかにする。クライオ電子トモグラフィー解析を行って内部の微細構造並びに非ドメイン型バイオポリマーの非膜オルガネラ内の配置を調べる。得られた情報を基により詳細な部分構造解析・相互作用解析を行うほか、質量分析を用いた解析や計算機を用いた解析を相互に参照し、種間で保存された配列を持たない分子がどのようにして分子機能を発揮するのか、その法則の検証を行う。
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研究実績の概要 |
伊藤は核内非膜オルガネラであるパラスペックルのマーカーとしてPSP1を、細胞質内非膜オルガネラであるヌアージュのマーカーとしてVasaを選択し、それぞれのタンパク質をGFPラベル化した細胞を準備し、クライオFIB-SEMによる薄層化に成功した。しかしながら、クライオTEM測定・解析の際にターゲットがトモグラムに含まれているのか、どの位置に存在しているのかを明確にするまでには至らなかった。それと同時にリボソームタンパク質メチル化酵素METTL18によるメチル化が施されていないヒトリボソームの立体構造解析を行った。 III-E型CRISPR-Cas免疫機構に関与するCas7-11タンパク質はガイドRNAと複合体を形成し、標的となる1本鎖RNAを切断するRNA依存性RNA切断酵素(ヌクレアーゼ)として機能し、Csx29タンパク質と複合体を形成することが報告されていたが、Csx29の機能は不明だった。西増は、Cas7-11-ガイドRNA-Csx29複合体は標的RNAが結合すると活性化し、Csx30タンパク質を切断するRNA依存性タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)であることを発見した。さらに、クライオ電子顕微鏡を用いて、Cas7-11-ガイドRNA-Csx29複合体およびCas7-11-ガイドRNA-Csx29-標的RNA複合体の立体構造を決定し、標的RNAが結合するとCsx29の構造が変化し活性化することを明らかにした。また、機能解析の結果、Csx30はRpoEと結合し転写を制御することにより、細胞の増殖を阻害することが示唆された。したがって、III-E型CRISPR-Cas免疫機構において、Cas7-11-Csx29複合体はウイルス由来RNAを切断するとともに、Csx30の切断を介して細胞増殖を停止させることにより、細胞集団をウイルス感染から守るという分子機構が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
伊藤の計画に少し遅れはあるものの、西増は計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
伊藤はクライオ電子トモグラフィー観測を行い、非膜オルガネラのトモグラム再構成とその解析を行う。具体的には、非膜オルガネラのマーカー蛋白質にGFPが付加されている細胞株を培養し、昨年度導入された蛍光顕微鏡を搭載したクライオFIB-SEM装置を用いて、GFPシグナルを指標に目標を含んだ凍結薄膜を作成する。作成した凍結薄膜をクライオTEM装置によりクライオ電子トモグラフィー測定を行う。3次元構造トモグラムを再構成し、それに応じてさらなる解析のための手法を検討し、非膜オルガネラ内の立体構造を獲得することを目指す。 西増は昨年度までの研究から、III-E型CRISPR-Cas免疫機構に関与するCas7-11-ガイドRNA-Csx29複合体は、(1)ガイドRNAと相補的な標的RNAを切断するヌクレアーゼ活性、および、(2)標的RNAと結合すると活性化しCsx30タンパク質を切断するプロテアーゼ活性、という2つの酵素活性をもつRNA依存性ヌクレアーゼ-プロテアーゼであることが明らかになった。しかし、 Cas7-11-ガイドRNA-Csx29複合体がCsx30を認識するメカニズムは不明である。また、 機能解析の結果、Cas7-11-ガイドRNA-Csx29複合体はウイルス由来RNAを切断するとともに、Csx30の切断を介して細胞増殖を停止させることにより、細胞集団をウイルス感染から守ること、および、 Csx30、Csx31、RpoEは複合体を形成することが示唆されているが、そのメカニズムは不明である。そこで、本年度は、 Cas7-11-ガイドRNA-Csx29-標的RNA-Csx30複合体および、 Csx30-Csx31-RpoE複合体のクライオ電子顕微鏡構造を決定し、構造情報を利用した変異体解析を行い、 III-E型CRISPR-Cas免疫機構の分子メカニズムの解明を目指す。
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