研究領域 | サイバー・フィジカル空間を融合した階層的生物ナビゲーション |
研究課題/領域番号 |
21H05295
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
飛龍 志津子 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (70449510)
|
研究分担者 |
小林 耕太 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (40512736)
福井 大 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 講師 (60706670)
小川 宏人 北海道大学, 理学研究院, 教授 (70301463)
梶原 将大 北海道大学, 人獣共通感染症国際共同研究所, 准教授 (70711894)
藤岡 慧明 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (00722266)
|
研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
103,480千円 (直接経費: 79,600千円、間接経費: 23,880千円)
2024年度: 20,410千円 (直接経費: 15,700千円、間接経費: 4,710千円)
2023年度: 20,410千円 (直接経費: 15,700千円、間接経費: 4,710千円)
2022年度: 20,800千円 (直接経費: 16,000千円、間接経費: 4,800千円)
2021年度: 22,100千円 (直接経費: 17,000千円、間接経費: 5,100千円)
|
キーワード | 生物ソナー / ナビゲーション / バイオロギング / 音響シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はナビゲーション研究におけるコウモリのモデル動物としての利点を活かし,モノや環境などとのインタラクションを含む個体レベルのナビゲーションから,より複雑な集団レベルに至る様々な階層のナビゲーションを工学から生態学に至る幅広い手法を用いて高度に計測し,動物の意思をデザインする「行動ダイアグラム」を明らかにすることを目的としている.音響数値解析的にコウモリの知覚空間を再現できることに着想した音響サイバー空間を構築し,フィジカル空間での行動実験と連動させることで,コウモリの階層ナビゲーションの包括的理解からその社会応用までを目指す.
|
研究実績の概要 |
室内に様々な障害物空間を構築し,コウモリの飛行軌跡を計測した.データ科学班と共同で飛行軌跡の予測モデルの構築を行ったところ,実測経路と予測経路の良い一致が見られた.またコウモリの注意方向を調べる方法として,飛行中の頭部の方向と飛行経路をモーションキャプチャシステムを用いて,パルス放射方向をマイクロホンアレイシステムを用いて同時に計測した.その結果,音響的視野の狭いコウモリ種と広いコウモリ種で,音響的注意の左右の振り方が異なることがわかった.野外調査では,集団で出巣する際の各個体の飛行軌跡をデータ科学班と共同で分析を行い,機械学習を用いた行動分類を行ったところ,コウモリが出巣か出戻るかの行動決定のタイミングを判断することができた.またグレンジャー因果推定を用いた分析によって,コウモリが前方の個体だけでなく,後方の個体にも影響を受けて出巣をしていることがわかった.さらに他個体とのインタラクションが餌場での入出にどのような影響を与えるかを調べた結果からは,他個体へ餌場を譲る行動が自身の採餌回数によること,またソーシャルコールの分析からは,コールのタイプが餌場を譲る行動とに関連があることもわかった.バイオロギング調査では,音響GPSロガーを用いた結果をまとめて論文投稿を行った.ザンビアの調査も再度実施し,バイオロギングによるデータからは移動の季節性やねぐらからの移動範囲など新たな情報を得ることができた.また本年度はビデオカメラによる出巣場面の撮影も行い,洞窟内の生息数の把握等を行うための映像解析にも着手した. 前年度に製作した無限平面装置上で,コオロギに捕食者の接近を示す視覚的拡大刺激を与えたところ,刺激が41度の視野角に達した時に回避反応が開始し、拡大速度が遅いほど回避反応の確率が高くなることが分かった。また,回避反応に加え,歩行を停止する凍結反応も観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
障害物環境での飛行経路データを効率的に蓄積することができ,そのデータを用いたコウモリの飛行の予測モデルの構築まで進めることができた.野外実験では,音響GPSロガーを用いて計測したバイオロギングの結果をまとめて論文投稿することができた.また集団出巣時の飛行軌跡の分析に関しても,データ科学班との協働で新しい分析手法を取り入れることができ,行動学的にも新たな発見につながった.
|
今後の研究の推進方策 |
●コウモリの経路予測に関して,今後は種間比較や複数個体飛行時での適応も試みる予定である.複数個体で飛行する際,互いに衝突しない飛行軌跡の生成に関するモデルの構築も検討していきたい.●複数種が混在する出巣場面において,種内,種間におけるそれぞれの音響混信回避策について調査を行う.●これまで1か所で計測を行っていた採餌場面での他個体とのインタラクションの観測を,複数個所に跨って行える計測システムを構築し,野生のコウモリが全体として採餌に関する意思判断をどのように行っているのか,大規模に調査する.●沖縄とザンビアでバイオロギング調査も引き続き行う.
|