研究領域 | サイバー・フィジカル空間を融合した階層的生物ナビゲーション |
研究課題/領域番号 |
21H05296
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
高橋 晋 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (20510960)
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研究分担者 |
牧口 祐也 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (00584153)
楢崎 友子 名城大学, 農学部, 助教 (30772298)
井出 薫 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (90806671)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
104,910千円 (直接経費: 80,700千円、間接経費: 24,210千円)
2024年度: 19,890千円 (直接経費: 15,300千円、間接経費: 4,590千円)
2023年度: 17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2022年度: 17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2021年度: 28,860千円 (直接経費: 22,200千円、間接経費: 6,660千円)
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キーワード | ナビゲーション / 場所細胞 / 海馬 |
研究開始時の研究の概要 |
脳内にある空間認知細胞群の活動を手がかりとし、階層ナビゲーションを認知神経科学的に理解する。神経活動計測・操作が可能なモデル動物であるラット・マウスの利点を活かし、外的要因だけではなく内的状態をも踏まえ、行動ダイアグラムの要素を詳細に同定する。領域内で共同し、環境型・装着型χログボットを開発する。また、海鳥やサケ科魚類を対象とすることで、自然環境下での階層ナビゲーションに関する神経メカニズムをも解明する。場所細胞や格子細胞の活動をモデル化し、脳内あるいは環境への介入や操作をすることでサイバーフィジカルシステムを構成する。これらを統合することで、階層ナビゲーションの包括的な理解を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、脳内にある空間認知細胞群の活動を手がかりとし、階層ナビゲーションを認知神経科学的に理解することを目標としている。その目標を達成するため、以下の3つの課題を設定している。(A)神経活動計測・操作が可能なモデル動物であるラット・マウスの利点を活かし、外的要因だけではなく内的状態をも踏まえ、行動ダイアグラムの要素を詳細に同定する。(B)領域内で共同し、環境型・装着型χログボットを開発し、活用する。また、(C)渡り鳥やサケ科魚類といった野生動物をも対象とすることで、自然環境下での階層ナビゲーションに関する神経メカニズムを解明する。最終的には、これらの課題を総合することで、階層ナビゲーションの包括的な理解を目指す。 本年度は、ナビゲーションに深く関与する海馬において、VTAドーパミン作動性ニューロンの軸索から放出されるドーパミンを光遺伝学的に介入操作することで、ドーパミンの一過的な放出がナビゲーション目標の迅速な変更に寄与することを示した成果を報告することができた。計画研究の藤井が開発した個体間相互作用の規則を学習する拡張行動モデルから推定された相互作用と脳内情報表現の関係性を調査し、その途中経過として、マウス間の相互作用に関連し、場所細胞が表現する場所情報の変化が観察された。本計画研究が主導的に開発している神経ロガーや再構成可能な迷路に関し、操作方法を含む包括的な解説論文を報告し、今後の展開について議論した。加えて、バーチャルなマーカーをつける姿勢推定手法を考案し、多個体の姿勢を高精度に推定する手法を開発した(Azechi & Takahashi, bioRxiv, 2023)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ナビゲーションに深く関与する海馬において、腹側被蓋野ドーパミン作動性ニューロンの軸索から放出されるドーパミンを光遺伝学的に介入操作することで、ドーパミンの一過的な放出がナビゲーション目標の迅速な変更に寄与することを報告するなど順調に進展している。また、本計画研究が主導的に開発している神経ロガーや再構成可能な迷路に関し、操作方法を含む包括的な解説論文を報告し、今後の展開について議論するなど今後の研究推進についての方策も定まってきた。更に、多個体相互作用を理解するには、画像から多数の動物個体を同時に追跡する必要があるが、個体が群れたり、重なり合ったりし、追跡が困難になる問題があった。物理マーカーは、動物の自然な動きを阻害するなどの問題点があったため、バーチャルなマーカーをつける手法を考案し、多個体の姿勢を高精度に推定する手法を開発した(Azechi & Takahashi, bioRxiv, 2023)。このように来年度以降の研究基盤も整ってきた。 本研究は、公募研究の三好と共同し、群れる集団行動と移動の関連性について研究を実施している。分担の牧口がもつ移動追跡法を活用することで、自由遊泳によって捕食者を回避しながら単独で生活するホタテ貝を対象とし、捕食者の存在が群れ構造に与える変化を明らかにし、ホタテ貝は群れて身を守ることが示唆された(三好ら,日本動物行動学会, 2023)。また、公募研究の坂本と共同し、計画研究の牧野が開発した地磁気介入装着型χログボットを、地磁気コンパスを活用して回遊するとされるウミガメの頭部に装着し、遊泳行動と磁気変化の関係性を示唆する予備的な知見を得た。このように公募研究との共同研究も進展している。以上のように、本研究計画は着実に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに開発してきた環境型・装着型χログボットを土台として、課題を進展させるとともに、以下のように新たな課題にも取り組んでいく。 計画研究の藤井が開発した個体間相互作用の規則を学習する拡張行動モデルから推定された相互作用と脳内情報表現の関係性を調査した。その途中経過として、マウス間の相互作用に関連し、場所細胞が表現する場所情報の変化が観察された(畦地ら, 日本神経科学学会, 2022)。また、計画研究の牧野が開発した地磁気介入装着型χログボットを、サケ科魚類のマスに装着する予備実験を実施し、介入効果を移動や頭部方向性から検証した。今後は、このような新たな研究計画を並行的に推進していく。 また、公募研究の坂本、計画研究の牧野と開発した地磁気介入装着型χログボットについては、様々な動物種に装着し比較検討することを課題としたい。
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