研究領域 | サイバー・フィジカル空間を融合した階層的生物ナビゲーション |
研究課題/領域番号 |
21H05301
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
牧野 泰才 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (00518714)
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研究分担者 |
高坂 洋史 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (20431900)
増田 祐一 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任研究員 (20856231)
藤原 正浩 南山大学, 理工学部, 講師 (30825592)
野田 聡人 高知工科大学, システム工学群, 准教授 (60713386)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
108,160千円 (直接経費: 83,200千円、間接経費: 24,960千円)
2024年度: 19,500千円 (直接経費: 15,000千円、間接経費: 4,500千円)
2023年度: 19,630千円 (直接経費: 15,100千円、間接経費: 4,530千円)
2022年度: 20,800千円 (直接経費: 16,000千円、間接経費: 4,800千円)
2021年度: 30,550千円 (直接経費: 23,500千円、間接経費: 7,050千円)
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キーワード | 空中超音波 / 行動介入 / 遠隔給電 / バイオロギング / 盲導犬 / 超音波フェーズドアレイ / ショウジョウバエ / 無線給電 / 盲導犬訓練 / バーチャルリアリティ / 二次元通信 / ワイヤレス給電 / 行動予測 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では,(1)刺激前に動物に気づかれない介入プラットフォームの実現として,(1-a)空中超音波による不可視遠隔介入と,(1-b)二次元通信による行動観察プラットフォームの2つの基礎技術の研究を行う.前者では特にショウジョウバエ幼虫を対象に,超音波刺激がどのように知覚されているかを観察しながら検証を行う.これら2つの技術は,領域全体を横断的に繋ぐ,環境配置型の計測・介入のための基盤技術として利用されることを想定している.2つめの課題として,(2)ヒトと動物の間の相互介入の理解と応用を目標に,熟達した盲導犬訓練士と初心者との間で,ヒトの指示動作が誘起する犬の行動の違いを解析する.
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研究実績の概要 |
本課題では1)動物行動への新しい介入としての超音波刺激の利用,2)バイオロギング端末への遠隔給電,3)盲導犬訓練の人と犬のインタラクションの定量評価と訓練の効率化,を大きな課題として取り組んでいる. 1)については,a)ショウジョウバエ幼虫を対象として,画像フィードバックにより特定の領域を超えた際に超音波を照射し,安定して1時間程度のトラップに成功.b)アリの疑似餌に超音波で負荷を与え,運搬行動の変容を観察.c)トンボの捕食行動のモデル化のための疑似餌の3次元制御.を行っており,それぞれ基礎的検証を終え,今夏の昆虫の活動時期に実際の行動観察実験を実施できる状態まで進んでいる.これらとは別に,小動物の周囲に動くターゲットを提示する目的で,遠隔から1cm程度の小物体を駆動する手法についても実現している. 2)については,オオミズナギドリに搭載したバイオロギング端末に対して,人工巣での遠隔給電を実現することを目標に,実際に巣箱内の想定される位置で給電が可能であること,必要な磁場環境下で対象の鳥の行動に影響が少ないことを確認した.また,RFIDを利用したアリの行動計測のための高周波アンテナの解析と開発も行っており,従来よりも安定に長い距離の計測を可能とするための検証を行っている. 3)盲導犬訓練の解析では,人と犬との相互遮蔽の課題に対して,複数の移動カメラで撮影された映像から人と犬の3次元骨格情報を抽出する手法を実装し,特定の訓練の成否を評価できる指標を抽出した.また,訓練を追体験するための360度カメラでの撮影と,力センサの情報の可視化,ヘッドマウントディスプレイでの映像表示と,それを実際に訓練士に体験してもらってのコメントの収集などを行い,盲導犬訓練のより効率的な実施を目的としたVRシステムの開発を進めている. 以上,それぞれの課題について当初の想定以上に進んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
超音波での遠隔介入については,領域内の他の計画班との共同研究が進み,当初想定していたショウジョウバエ幼虫の他に,アリやトンボについても実験が進んでおり,それぞれ異なる目的で超音波を利用できている.それぞれの昆虫に即した装置の実装と,季節性のある昆虫を対象とした短い期間での実証という制約のため,現時点では生態学研究としての成果の発表までに至っていないが,今夏の昆虫の活動時期に実験を行うための準備は整っており,順調に進んでいると考えている.また超音波を利用した軽量物体の制御という観点で,生物研究にも応用可能な手法を実装でき論文投稿中である.介入という観点で超音波とは別に,装着型の磁場制御装置による局所磁場変化に対する行動変化の研究も領域内で共同研究をしており,ウミガメとマスについての基礎検証を行っている. 遠隔給電については領域内公募班の協力のもと,遠隔給電に必要な強度の磁場条件下でのオオミズナギドリの行動変化についての観察を行っており,今夏の活動時期には実際のバイオロギング端末に対しての給電実験が可能な状態まで準備が整っている.RFIDを利用したアリの行動計測については,より性能の高い超小型RFIDの利用と,そのためのアンテナの性能評価,改良が進んでおり,こちらも順調に進展している. 盲導犬訓練については,カメラで撮影した際に人と犬とが常に近くにいることで相互に遮蔽しあうという課題があったが,複数の移動カメラ間の位置関係を,人の骨格をもとに更新する手法を実装してこの課題を解決し,実際に特定の訓練課題についての定量評価が出来ることを確認した.日本盲導犬協会の協力もあり,360度映像をもとにしたVR体験に対するコメント収集も行えており,より効率的な訓練のための要件や活用方法についての知見も蓄積されている. 以上の観点から,それぞれの課題について,当初予定した計画以上に進展している
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今後の研究の推進方策 |
超音波による介入実験については,昨年度までに昆虫に対する影響などの基礎特性の検証は終えることが出来ているので,本年度は生態学研究として価値のある実験へと進む予定である.ショウジョウバエについては,現状1匹についてのトラップが実現されているため,これを複数匹に拡張し,複数のショウジョウバエ幼虫の相互作用を安定して観察できるためのプラットフォームを実現する.このような介入実験から派生した軽量物体の遠隔制御については,人のインタラクティブ環境への発展も可能な技術であるため,そのような応用も視野に入れながら,実際の動物実験への適用可能性を検証する. 遠隔給電については,今夏オオミズナギドリの渡ってくる時期に,巣箱の中でバイオロギング端末に対して給電することを目標に,給電性能の評価や効率向上などを目指す.RFIDを利用した計測については,検出ミスが少なくなるようなアンテナ配置の検証などを行い,実利用に向けた検討を行う. 盲導犬訓練の評価については,訓練種目を拡張し,より一般化した犬と人の訓練の評価を行えるようにする.最終的には,人の介入によって犬の行動がどのように変化するのかを説明できる数理モデルの実現を目指すため,機械学習技術を適用し人による介入と犬の行動変容の解明につなげる.VRシステムによる追体験については,盲導犬訓練士により視線情報可視化の重要性を指摘されているため,訓練時に視線情報を計測する手法を採用し,その有効性を検証する.特にベテランと初学訓練士との視線の違いを定量化し,暗黙的技能の継承につなげる. このような人の行動解析の観点で,歩行を予測する際に両踵と胸部の3点の情報があれば短期の予測が可能なことを明らかにした.これを利用し,上部から撮影された歩行者の映像について,その進路の予測が可能であると考えており,複数歩行者のすれ違いにおける予測モデルの活用を目指す.
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