研究領域 | サイバー・フィジカル空間を融合した階層的生物ナビゲーション |
研究課題/領域番号 |
21H05302
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
川嶋 宏彰 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 教授 (40346101)
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研究分担者 |
波部 斉 近畿大学, 情報学部, 教授 (80346072)
新里 高行 筑波大学, システム情報系, 助教 (00700163)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
83,460千円 (直接経費: 64,200千円、間接経費: 19,260千円)
2024年度: 16,380千円 (直接経費: 12,600千円、間接経費: 3,780千円)
2023年度: 16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2022年度: 19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2021年度: 16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
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キーワード | 魚群計測 / 群モデリング / 映像刺激提示 / 環境型χログボット / 行動ダイアグラム / 魚群追跡 / 群泳行動モデル / 個体間相互作用推定 / 視覚刺激提示 |
研究開始時の研究の概要 |
魚類をはじめとする生物のインタラクション(個体間相互作用)のモデルを計測データから獲得し、さらに実際に生物群へ介入して検証を行うことで、群知能を支える群れ内部の動的な因果構造や社会構造の解明を目指す。本研究では、フィジカル空間における計測と介入、およびサイバー空間における計測結果からのモデリングや介入方策決定を密に結合させたフィードバック・ループの枠組みを設計し、実際のシステムとして構築することを目的とする。主に魚群に対し、詳細なインタラクションモデルをデータ駆動で学習するとともに、各種の生物群でモデリング技術の汎用性を検証する。
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研究実績の概要 |
本課題の目的である,魚群や様々な種の生物におけるデータ駆動型インタラクション・モデリング技術を開発するために,2023年度は,2022年度までに開発および整備した群れの相互作用モデルや追跡手法,実験環境を拡張させるとともに,領域内の共同研究によりその応用可能性の検証を行った.具体的には次の通りである. 1. 昨年度開発した個体間相互作用のネットワーク推定手法を発展させ,他個体との協調項を,アトラクション項とアラインメント項に分離できる手法を開発した.これにより,並進する個体間関係の自然なモデル化が可能になった. 2. 統合情報理論を用いたアユの群れのダイナミクス分析により,局所的な臨界現象の特定が可能となり,群れ内でハブとなる個体が他の個体からの影響を受けにくいことを見出した.これは,ハブ個体が群れ内での情報の媒介者として機能している可能性を示唆している.また,拍手の同期現象を通じて集団内の時間統合窓に関する洞察を行い,集団内で個人が「同時である」と感じる時間幅が,グループサイズに比例して増加することを明らかにした. 3. 魚群の高精度な個体追跡を実現するために,断片的な移動軌跡(トラックレット)を対応付けてより長い時間での移動情報を獲得する手法,および体軸推定を用いる手法を開発した. 4. アユが異なる光環境(色)において集団ダイナミクスに顕著な違いがあることを発見した.本研究は,魚の群れのナビゲーションメカニズムを理解する上で重要な視点を提供する可能性がある. 5. 公募研究・岸田班との連携により,エゾアカガエル幼生の形態的表現型の誘導(形状の違い)と遊泳特性との関係を,画像を入力とした個体の姿勢追跡を通じて定量化する手法を開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の目的である,データ駆動型のSwarm-Machineインタラクション構築に必要な構成要素として,2022年度までに開発した手法を発展させ,頑健性の高い個体追跡手法や,統合情報理論を用いた群れのダイナミクス分析のモデリング,光環境(色)やプロジェクターを用いた介入実験の整備などが順調に進んでいる.さらに,モデリングでは魚種だけでなく人の集団相互作用までを扱う数理モデルを開発し,群れの計測や行動の定量化については,公募研究との共同研究でもその応用可能性を示すなど,当初の計画以上進捗しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度以降は,2023度に開発および整備した手法や実験環境を引き続き発展させながら,特に以下の点について研究を推進する. (1) 昨年度までに開発した魚群の個体間相互作用推定とその動的変化とを統合的にモデル化する手法を開発することで,介入方策との統合を目指す. (2) 領域内の共同研究を進め,群れの記述手法などの応用可能性を,ショウジョウバエやアリをはじめとする様々な生物種で検証する. (3) 集団相互作用における新たな数理モデルを発展させ,群れや集団内での情報の流れを説明するとともに,魚群や人など様々な生物種に応用可能であることを示す. (4) 個体追跡手法の高精度化を引き続き行うとともに,介入実験に用いるためのリアルタイム性を向上させる. (5) 主に魚群を対象とした介入実験を進め,データ駆動型Swarm-Machineインタラクション技術の基盤を構築する.
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