研究領域 | ジオラマ環境で覚醒する原生知能を定式化する細胞行動力学 |
研究課題/領域番号 |
21H05304
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柴 小菊 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70533561)
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研究分担者 |
稲葉 一男 筑波大学, 生命環境系, 教授 (80221779)
守田 昌哉 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (80535302)
吉田 学 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60301785)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
115,180千円 (直接経費: 88,600千円、間接経費: 26,580千円)
2024年度: 20,020千円 (直接経費: 15,400千円、間接経費: 4,620千円)
2023年度: 24,830千円 (直接経費: 19,100千円、間接経費: 5,730千円)
2022年度: 26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2021年度: 16,120千円 (直接経費: 12,400千円、間接経費: 3,720千円)
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キーワード | 精子運動制御 / 精子走化性 / 海産生物 / 受精 / 鞭毛繊毛 / 生殖 / 鞭毛運動 / 海洋生物 / 精子運動 / 3D遊泳 / カルシウムイメージング / 鞭毛波形 / CNGチャネル / カルシウムシグナリング / カルシウム / ホヤ |
研究開始時の研究の概要 |
精子は、さまざまな外的環境因子に対して、走化性、走流性、走温性など多様な応答を示し、受精という最終目標に到達する卓越した原生知能を有する単細胞である。本研究では、精子走化性応答に着目し、誘引物質濃度勾配存在下における精子の運動、遊泳方向変換をもたらす鞭毛波形変化、シグナル受容を測定し、応答メカニズムを解析する。領域内の他班の協力を得ることで精子走化性応答を定量化し、自然環境での受精を理解するためのアルゴリズム構築につなげる。実際の受精環境を模擬したジオラマ環境下での精子応答を計測、解析することで、これまで見出すことのできなかった卓越した精子の行動力、運動能力、適応力の理解を目指す。
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研究実績の概要 |
本領域では、細胞レベルで発現する巧みな環境・状況適応能力の探索、理解を目的としており、本計画研究においては卓越した運動能力を持つ精子に着目し、研究を実施している。精子は、さまざまな外的環境因子に対して多様な応答を示し、受精という最終目標に到達する。精子走化性応答に着目し、誘引物質濃度勾配存在下におけるカタユウレイボヤ精子の運動、遊泳方向変換をもたらす鞭毛波形変化、シグナル受容を測定し、応答メカニズムの解析を行った。またサンゴ、魚類、巻貝に関する生殖戦略、精子運動制御機構に関する研究を分担者と協力して進めた。領域内の他班とともに、3次元的な精子遊泳を解析するためのシステム構築や精子走化性遊泳のシミュレーション、アルゴリズム構築に取り組んでいる。 主な研究成果としては、分担者稲葉、代表者柴らはホヤ精子走化性におけるシグナル伝達経路において可溶型アデニル酸シクラーゼが果たす役割についての知見をBiomolecule誌に発表した。また褐藻配偶子走化性における新たな知見をJournal of Phycology誌に発表した。分担者の守田らはサンゴの配偶子種認識に関与する因子の解析、サンゴの種分化と繁殖形質の関係に関する研究成果をFront Cell Dev Biol.誌、Molecular Phylogenetics and Evolution誌等に発表した。分担者の吉田は精子運動に関与するイオンチャネルの遺伝子破壊ホヤを作製し走化性解析を行った研究成果をFront Cell Dev Biol.誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「ジオラマ環境下における精子走化性の応答計測とメカニズムの解明」を研究課題とし、研究代表者らによって分子機構の解明が進んでいるホヤ精子の応答解析を基盤とし、サンゴ、巻貝、魚類他多様な海産生物精子の運動制御機構について研究を進めている。精子走化性シグナリングに深く関与する因子である可溶型cAMP合成酵素(sAC)の局在および機能解析により得られた研究成果を論文発表した。cAMPによる鞭毛運動制御について追加の実験、解析を行い論文発表準備中である。分担者守田らは海洋生態系において重要な役割を持つサンゴの配偶子種認識、種分化と繁殖形質の関係に関する研究成果を報告した。分担者稲葉は、褐藻配偶子走化性や金目鯛精子冷蔵保存に関する共同研究成果を発表した。分担者の吉田は、精子運動に関与するイオンチャネルの遺伝子破壊ホヤが精子走化性を失うことを報告した。遺伝子破壊ホヤの作製については柴、稲葉班とともに他遺伝子の解析も進めている。領域他計画班との連携も順調に進捗している。R3年度に構築したホヤ精子3Dトラッキングシステムによって得られた実験データを共有し、画像解析、らせん遊泳数値化解析などについてジオラマ製作班、力学徹底化班とともに方法確立およびデータ解析を進めている。また精子走化性数理モデル化に向けてアルゴリズム評価班と共に解析を進めており論文準備を開始している。また領域公募班への生物提供、技術、採集などの支援5件を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究代表者が確立してきたシステムにより、走化性応答時のホヤ精子の遊泳軌跡変化と細胞内カルシウム濃度変化を同時に解析することでホヤ精子が誘引物質を感知してから鞭毛運動を変化させ方向変換を引き起こす全過程を追うことが可能である。これまでの研究進捗により精子遊泳の3Dトラッキングや高精度でのカルシウムイメージングが可能となった。これらの実験系で得られたデータを領域内他計画班に提供し、精子走化性応答の数理モデル化、シミュレーションを依頼し、実験結果との比較検証を進めている。これらの解析結果は現在投稿論文として準備中である。実際の受精環境を模擬したジオラマ環境下での精子応答を計測、解析することで、これまで見出すことのできなかった卓越した精子の行動力、運動能力、適応力の理解を目指す。精子運動調節に関する分子機構の解明、ホヤ以外の多様な生物種の精子運動、受精メカニズム、運動装置である軸糸微細構造についても引き続き分担者と協力して解析を進める予定である。また領域計画班、新規公募班に対する技術支援、生物提供なども積極的に進めていきたい。
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