研究領域 | ジオラマ環境で覚醒する原生知能を定式化する細胞行動力学 |
研究課題/領域番号 |
21H05305
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
紫加田 知幸 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主任研究員 (40603048)
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研究分担者 |
湯浅 光貴 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 任期付研究員 (00898984)
杉松 宏一 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主任研究員 (10710923)
山口 創一 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (20457493)
西山 佳孝 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (30281588)
北辻 さほ 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主任研究員 (30638713)
吉川 裕 京都大学, 理学研究科, 教授 (40346854)
鬼塚 剛 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), グループ長 (40399647)
青木 一弘 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 主任研究員 (50565570)
内山 郁夫 基礎生物学研究所, ゲノム情報研究室, 准教授 (90243089)
矢野 諒子 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 任期付研究員 (31005135)
高橋 文雄 立命館大学, 生命科学部, 講師 (60332318)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
133,510千円 (直接経費: 102,700千円、間接経費: 30,810千円)
2024年度: 25,610千円 (直接経費: 19,700千円、間接経費: 5,910千円)
2023年度: 26,520千円 (直接経費: 20,400千円、間接経費: 6,120千円)
2022年度: 19,630千円 (直接経費: 15,100千円、間接経費: 4,530千円)
2021年度: 34,970千円 (直接経費: 26,900千円、間接経費: 8,070千円)
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キーワード | 赤潮 / ラフィド藻 / 渦鞭毛藻 / 乱流 / 水質 / 光 / 鉛直移動 / 海洋物理モデル / 光合成 / シミュレーション / 細胞集積 / 日周性 / 栄養塩 / 株 / 風 / パッチ / 遺伝子発現 / 鞭毛運動 / 鞭毛 / 日周鉛直移動 / 栄養欠乏 / 光環境 / 微細藻類 / 数値モデル / 運動 |
研究開始時の研究の概要 |
微細藻の大増殖と集積によって形成される赤潮は、水産業などに甚大な悪影響を及ぼす。本研究では、赤潮被害軽減に必要となる精緻な発生予測技術の開発に向けて、現在ブラックボックスとなっている赤潮藻の集積過程について、生物的要因と物理的要因の両面からアプローチし、解明する。室内における赤潮藻の培養実験により、運動パラメータと生理パラメータから成る日周鉛直移動アルゴリズムを構築する。また、海洋物理モデルに日周鉛直移動アルゴリズムを組み込んだ赤潮動態モデルを構築する。さらに、蓄積されたあるいは新たに取得する実環境データを用いて、日周鉛直移動アルゴリズムと赤潮動態モデルの検証と改良を行う。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、室内実験と現場データの解析を行い、赤潮藻の日周鉛直移動に影響する要因について更なる探索を行った。赤潮の原因となるラフィド藻Chattonellaおよび渦鞭毛藻Karenia mikimotoiについて、各種生理パラメータを12時間明:12時間暗の明暗周期下で24時間計測した結果、光合成活性のうち光化学系の電子の流れ具合の指標となるqPが上昇および下降する時間帯と各種が上昇および下降遊泳する時間帯が一致することを発見した。この関係性は、鉛直移動リズムは維持されるが、細胞分裂は生じない弱い赤色光の恒明照射下においても認められた。さらに、実環境中でのK. mikimotoiの鉛直分布と光合成活性の同時観測データを解析したところ、細胞集積深度とqPが同様の変動パターンを示すことが分かった。以上のことから、上記2種は細胞内で光合成と遊泳運動を同調的に制御している可能性が示唆された。 他方、K. mikimotoiを対象として、海洋物理モデルLESに夏季の環境条件、仮想粒子の自己遮蔽、これまでに室内実験で得られた光強度依存的な昼間の上方遊泳パターンを導入したところ、実環境で観測された本種の亜表層での鉛直集積が再現された。さらに、海洋物理モデルUCHIを用いて室内外で得られた日周鉛直移動様式を伊万里湾に適用した結果、鉛直移動や定位深度が赤潮の拡大に多大に影響することが分かった。 過去の実環境データの解析から、Chattonellaが上昇時と下降時で移動速度が異なることなど、赤潮藻の集積を定式化するうえで重要な情報を得た。さらに、鉛直移動や集積に多大な影響を及ぼし得る乱流の実環境における情報を得るために、八代海の姫戸沖ブイに超音波流速計を設置し海流変動を計測し、風の強い時期に散逸率が大きいなど、散逸率データを約1ヶ月間に渡って得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室内の分子~群レベルや数値シミュレーションを駆使しながら、当初よりターゲットにしてきた赤潮藻2種の日周鉛直移動および細胞集積に有意に影響する要因の絞り込みが進んでいる。また、細胞内の鉛直移動制御メカニズムについても知見が蓄積され始めている。さらに、他の計画班とのコラボレーションにより、生物要因だけでなく、物理要因についても解析を進めており、複数の海洋物理モデルを用いたより実環境に則した定式化が進んでいる。以上より、概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
鉛直移動リズムと光合成の連動について追究するために、令和4~5年度に取得したRNA-seqデータの解析や詳細な光合成解析等を推進し、遊泳パターンと光合成との関係性を精査する。また、過去に実環境中で取得してきた赤潮藻の鉛直分布と光合成活性、その他の水質のデータを解析し、鉛直移動や細胞集積パターンと相関する生物要因を抽出する。また、令和5年度までにA02-2班及びB01-1班と共同開発した乱流発生システム、B02-2班の生物対流解析システム、B02-1班の微生物の電子顕微鏡解析技術を用いて、赤潮藻類の鉛直移動や細胞集積に及ぼす物理要因や他の生物要因について解明する。以上の情報をLESモデルやUCHIモデルへの導入と蓄積された実環境中データによる検証を行い、実環境中における赤潮藻の日周鉛直移動と環境条件の関係性を定量的に解明する。
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