研究領域 | ジオラマ環境で覚醒する原生知能を定式化する細胞行動力学 |
研究課題/領域番号 |
21H05306
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菊地 謙次 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00553801)
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研究分担者 |
宮川 泰明 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (60804599)
中村 修一 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90580308)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
115,570千円 (直接経費: 88,900千円、間接経費: 26,670千円)
2024年度: 29,770千円 (直接経費: 22,900千円、間接経費: 6,870千円)
2023年度: 21,450千円 (直接経費: 16,500千円、間接経費: 4,950千円)
2022年度: 27,300千円 (直接経費: 21,000千円、間接経費: 6,300千円)
2021年度: 15,080千円 (直接経費: 11,600千円、間接経費: 3,480千円)
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キーワード | ジオラマ環境 / 濃蜜微生物懸濁液 / in vivo計測 / 4D-X線トモグラフィー / 次世代放射光 / 濃密微生物懸濁液 / 4D-X線トモグラフィー / 生体流動計測 / 濃密微生物 / X線マイクロCT / 動的粘弾性計測 / X線イメージング / in vivoジオラマ環境 |
研究開始時の研究の概要 |
原生生物の細胞レベルの行動を「ありのままに」に観察する最先端計測手法を開発し、既存観察手法では困難であった濃密微生物懸濁液における世界随一の生体輸送現象の細胞スケールトモグラフィック可視化計測法の創成を目指す。4D SR可視化法を細胞数密度通常の可視光線では透過が困難な濃密な細胞懸濁液における細胞密度分布のリアルタイム非侵襲計測へと拡張する。蠕動運動を伴うゼブラフィッシュ腸内における細胞数密度のin vivo 時空間計測へと発展させ、世界に先駆けてin vivo 4D-X線トモグラフィー可視化法を濃密微生物懸濁液中の微生物流動解析を推進する。
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研究実績の概要 |
腸内細菌を代表する大腸菌に蛍光タンパクを発現させ、腸内における高局在の腸壁近傍において濃密に集積した細胞群の運動や局在分布を計測することにより高密懸濁液中における微生物流動メカニズムの解明を目指す。運動や炎症を伴う腸壁細胞に対する浸潤や免疫応答について細胞分布の計測や、病理観察やシートライト顕微鏡や共焦点系顕微鏡を用いて評価を行い、マイクロ流路内に構築してきた生体外(in vitro)実験系の研究結果(Sebastian et al., Cellular Microbiology, 2021)と比較し、より自然な環境を模倣したin vivoジオラマ環境(ゼブラフィッシュ腸内)との振る舞いの際について生物物理の視点に立って考察をすすめ、生物学的特性と物理的特性を分別可能な数理モデルを構築し、生体内における細菌叢の走性について調査を行う。本研究成果については、Communications PhysicsとBMC Biologyに投稿し、2報とも掲載許可を得ている。また、腸壁近傍における生化学的走性の誘引物質について、糖質に着目し、腸壁近傍における集積性について、モデル生物の線虫を用いた実験研究を行い、Biochemical and Biophysical Research Communicationsに投稿し、掲載許可を得ている。また、顕微観察によってえられた膨大な計測ボクセルデータをGPGPUを用いた画像抽出法および解析法(Miyagawa, Ishikawa et al, American Journalof hysiology, 2016)を拡張し、膨大な三次元細胞数実験計測結果を時空間計測の拡張に成功し、国内会議において口頭発表による報告を行った。放射光を用いた濃密微生物懸濁層におけるトモグラフィーについては、国際会議にて口頭発表を行うとともに、国内最大の放射光施設SPring-8での実験を遂行し、ミリ秒スケールの時空間計測手法の実験条件を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼブラフィッシュ稚魚を用いた腸内リアルタイム微生物流動計測の実験手法を構築し、また腸内壁面形状を模したマイクロ流体デバイスを作成し、腸内における形状を模した環境における大腸菌の遊泳特性を物理的観点から実験条件および数理モデルを構築してきた。本モデルは、生化学的遊泳特性をも導入が可能であり、次年度以降に評価を行う腸内流動における大腸菌の集団遊泳における数理モデルへと拡張可能な基礎を構築することに成功している。 実験分担者の有する遺伝子改変技術を用い、微生物の遊泳特性をリアルタイムで計測可能な実験環境の構築を行ったことにより、遊泳微生物の遊泳特性の異なる株への蛍光たんぱく質発現遺伝子の導入を次年度以降に可能となり、遊泳特性(遊泳速度、遊泳方向変更周期)の異なる場合における生体模倣(ジオラマ)環境における実験環境の整備を構築してきた。 本年度においては、腸壁形状を模したマイクロ流体デバイスを用いた実験系の構築に成功しており、また生体環境における腸壁における大腸菌遊泳の腸壁窪みへの集積条件について、遊泳と周囲流動、腸壁における誘引物質との相互的干渉による物理化学的要因の同定に、数理モデルを用いた数理解析により成功している。当初考案していた数理モデルでは、化学的誘引の寄与については過少評価を行っていたが、本モデルの導入により集積への寄与度は物理的集積理由と比べても十分寄与度は高いことを示す重要な結果を得ている。本手法は、次年度に到達を目標とする生物物理学的濃密微生物懸濁液の挙動を理解するモデル化の基礎となる結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
腸内における細菌叢の挙動については、腸壁形状を模倣したマイクロ流体デバイスを用いたジオラマ環境実験により、物理化学的要因を特定可能な数理モデルの構築を行ってきたため、腸内における流動自身をより精緻に計測をすすめ、その流れの効果による腸壁蠕動運動および腸内細菌叢の挙動計測へと拡張を進める。また、腸内細菌叢の遊泳能の差異による腸壁窪みへの集積能の解析のために、遊泳能の異なる大腸菌を用いた実験系を構築し、すでに作成を行った腸壁形状を模した流体デバイスを用いた比較実験を進める。大腸菌の遊泳を計測するための蛍光標識として、研究分担者の有する遺伝子導入技術を用いて蛍光タンパクを発現させる遺伝子を導入し、これまでに構築してきた高速共焦点レーザー顕微鏡におけるライブイメージングを実施する予定である。 濃密微生物懸濁液中における流動構造の計測のために、これまでにX線を用いたタイムラプス撮影手法の開発に取り組んできた。マイクロX線CTを用いた内部構造計測および追従法を研究分担者と協同して開発を進めており、細胞分布の時間的変化解析が可能となっており、次年度においてはさらに放射光を用いた高時空間分布解析へと拡張を進める予定である。膨大な実験データを効率的に解析を進めるため、GPGPUを用いた並列計算へと本解析手法を拡張し、次世代放射光における実験結果の解析手法の開発の準備を進める。
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