研究領域 | ジオラマ環境で覚醒する原生知能を定式化する細胞行動力学 |
研究課題/領域番号 |
21H05307
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
篠原 恭介 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20527387)
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研究分担者 |
武田 洋平 帯広畜産大学, グローバルアグロメディシン研究センター, 准教授 (30804447)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
112,580千円 (直接経費: 86,600千円、間接経費: 25,980千円)
2024年度: 13,130千円 (直接経費: 10,100千円、間接経費: 3,030千円)
2023年度: 20,150千円 (直接経費: 15,500千円、間接経費: 4,650千円)
2022年度: 17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2021年度: 51,090千円 (直接経費: 39,300千円、間接経費: 11,790千円)
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キーワード | 気道繊毛運動 / 新型コロナウイルス / 気道 / 繊毛細胞 / 気道繊毛細胞 / 細胞骨格 / 細胞外環境 / 環境応答 / 繊毛 / 細胞運動 / 気道繊毛 / 精子 / ミドリムシ / 呼吸器 / 細菌 / ウイルス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では代表者の持つマイクロ流体工学・細胞生物学および領域内メンバーが持つ細胞の行動アルゴリズムを抽出する技術を融合する事で『気道繊毛細胞はどのくらい賢いのか?』を見出す事に挑戦する。現在社会問題となっている新型コロナウイルスと非結核性抗酸菌に対し、気道繊毛がどのように反応しまた細胞間で協調しながら体外へ排出しているかを明らかにする。気道を模擬した生体外培養系(ジオラマ環境)を開発し、病原体と気道繊毛運動を同時に観察する事で相互作用を可視化する。計画班と連携し実験データを数理解析する事により気道繊毛細胞が病原体に対しどのような行動原理で排出を達成しようとしているかについて明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年度は前年度に引き続きマウス気道細胞が持つ環境変化に対応する仕組みの解析を行った。[1]アクチン束化因子Dpcdの機能解析においては、前年度までに得ていたモデル:気道の繊毛細胞の細胞内構造が損傷を受けた際にDpcdがアクチン束化を介して短時間で細胞内構造を修復する、という仮説の妥当性をさらなる新規の実験により検証した。DpcdのC末端に蛍光蛋白質Venusが融合した蛋白質を発現するBACトランスジェニックマウスと気道組織を経時的にライブイメージングできる観察系を用いて細胞内構造損傷時の観察を行った。結果、気道繊毛細胞の内部表層の細胞構造が損傷した直後にDpcd蛋白質が損傷部位に集積し構造を再生する挙動が観察された。これまでの予備データから得た仮説モデルを強く支持する観察結果であるといえる。[2]微小管関連因子Tppp3の機能解析においては、Tppp3遺伝子欠損マウスにおいて新たに脂質の輸送異常の表現型がある事を見出した。ある特有の種類の脂質の細胞内局在が正常に維持されない結果、気道細胞の異常の一つを引き起こす事を示唆する実験データを得た。[3]新型コロナウイルスと気道繊毛細胞の関係性の解析においては、気道繊毛運動に異常を示す2種類の変異マウスから摘出した気道組織を用いて繊毛運動とウイルス増殖の関係性について検証を行った。その結果、正常な繊毛運動を示す野生型マウスではウイルス処理後、細胞外部表層に留まるあるいは少数の細胞において内部でウイルスが増殖するという観察結果を得た。その一方で繊毛運動が停止する変異マウスにおいては、ほぼ全ての細胞でウイルスが細胞内で増殖し細胞内構造と形態を大きく変化させるという観察結果を得た。新型コロナウイルス感染症にとって気道繊毛運動は重要な役割を担っている事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞内構造・細胞内環境を修復する分子の研究課題について、仮説を裏付ける証拠が確実に得られており外部発表する段階に到達している。また、新型コロナウイルスと気道繊毛細胞の関係性の研究課題については、前年度までに構築してきた遺伝子改変マウスとウイルス感染実験の研究体制がうまく機能し、研究目標の達成を見通す事のできる実験データを本年度に得る事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
[1]アクチン束化因子Dpcdの機能解析においては、本年度得られた気管細胞内における細胞構造修復時のDpcdの動態の再現性について動物の例数を増やす事で確認する予定である。また、再構成(in vitro)の系においてDpcdの存在下で形成されるアクチン束を液中原子間力顕微鏡の針やレーザーアブレーションにより損傷させた際にDpcdが示す動態について今後検証し本課題をまとめる予定である。[2]微小管関連因子Tppp3の機能解析においては、本年度に見い出したTppp3遺伝子欠損マウスにおける脂質の異常のメカニズムを説明する仮説を薬理学的実験と免疫組織学実験により検証する予定である。[3]新型コロナウイルスと気道繊毛細胞の関係性の解析においては、免疫組織学のデータの再現性の確認・電子顕微鏡による細胞形態とウイルス粒子の観察・繊毛運動の活性化を介してウイルス感染を予防する化合物のスクリーニング、の3つを実施する予定である。
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