研究領域 | ジオラマ環境で覚醒する原生知能を定式化する細胞行動力学 |
研究課題/領域番号 |
21H05310
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中垣 俊之 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (70300887)
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研究分担者 |
棟朝 雅晴 北海道大学, 情報基盤センター, 教授 (00281783)
田中 良巳 金沢学院大学, 経済情報学部, 教授 (10315830)
國田 樹 琉球大学, 工学部, 准教授 (20645478)
佐藤 勝彦 富山大学, 学術研究部理学系, 特命教授 (90513622)
堀 学 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (00253138)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
120,120千円 (直接経費: 92,400千円、間接経費: 27,720千円)
2024年度: 25,610千円 (直接経費: 19,700千円、間接経費: 5,910千円)
2023年度: 24,830千円 (直接経費: 19,100千円、間接経費: 5,730千円)
2022年度: 20,540千円 (直接経費: 15,800千円、間接経費: 4,740千円)
2021年度: 22,360千円 (直接経費: 17,200千円、間接経費: 5,160千円)
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キーワード | 物理行動学 / 原生生物 / ジオラマ環境 / 数理モデリング / 原生知能 |
研究開始時の研究の概要 |
生物の知能情報処理は、単細胞生物に端を発する天与の情報処理手法として情報技術にヒントを与えてきた。原生生物には神経系がなく、細胞の運動法則がそのまま環境応答のアルゴリズムに直結している。原生生物は、いかにややこしい環境でも、局所的かつ短期的な応答を繰り返すだけのようあるが、案外上手に振る舞えることがわかってきた。本研究では、ほふく性アメーバの集団交通ネットワークと遊泳性繊毛虫の集団移動に焦点を当て、どちらも空間の形に適応的であることから、空間の探査と活用性能について、原生知能のアルゴリズムを定式化し、工学的に利用可能な形まで具体化することを目指す。
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研究実績の概要 |
生物の成す知能情報処理は、単細胞生物に端を発する天与の情報処理手法として情報技術にヒントを与えるいわば宝の山である。真核単細胞生物、いわゆる原生生物に見られる行動知の探究は、その根源を問うものである。本研究では、ほふく性アメーバの集団交通ネットワークと遊泳性繊毛虫の集団移動に焦点を当て、どちらも空間の幾何学的形状に適応的であることから、空間の探査と活用性能について、原生生物の知能のアルゴリズムを定式化し、工学的に利用可能な形まで具体化することを目指す。
以下の成果を得た。 (1) 多彩な空間構造に適応したコロニーと輸送網の共発展について、粘菌とヒトの比較行動学的見地より、集住地の形成とそこをつなぐ輸送網の発達モデルを構成した。(2) 粘菌の体内循環輸送網の流体力学的特性の一端を実験的に解明した。その性質を、真菌/動物/植物の体内輸送網と比較検討するために、文献調査を行った。(3) 粘菌のネットワーク最適化から読み解く樹木の力学構造、特に振動エネルギーの巧みな散逸機構に注目して、フィールドにて樹木の揺動実験を実施した。(4) 繊毛虫・微細藻類の三次元空間軌跡を簡易的に自動追跡する双眼立体視顕微観察法を考案し、OPTICS EXPRESS誌に論文発表した。この装置を援用するなどして、鞭毛虫・繊毛虫個体の空間探査行動を調べる実験を行った。(5) 這い回る運動の基本的な力学機構を追求するために、ムカデの這行運動の力学模型を考案し、実験結果と比較しながら、アメーバ運動につながる環境依存的這行のしくみについて考察した。BIOINSPIRATION & BIOMIMETICS誌に公表した。(6) 繊毛や仮足による細胞運動を計測するための顕微鏡とカメラ一式を導入し、アメーバ運動による推進力発生や繊毛遊泳に伴う流れの可視化を定量化する装置を組み上げた。また、そのデータ解析用の計算機も導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した実施計画項目をおおむね実施できたから。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 多彩な空間構造に適応したコロニーと輸送網の共発展について、粘菌とヒトの比較行動学的見地より、集住地の形成とそこをつなぐ輸送網の発達シミュレーションの成果をとりまとめて論文発表する。(2) 粘菌の体内循環輸送網の流体力学的特性に関する実験的研究成果をとりまとめて論文発表する。(3) 粘菌のネットワーク最適化から読み解く樹木の力学構造、特に振動エネルギーの巧みな散逸機構に注目した実験結果を理論的に考察し、力学模型を構成する。(4) 鞭毛虫・繊毛虫個体の空間探査行動を調べた実験結果をとりまとめて論文発表する。(5) 繊毛虫や精子がしばしば旋回遊泳することに注目して、旋回遊泳による走性発現の力学的な一般的特性について理論的に研究する。(6) 多様な生物種の原生知能を探索するために、これまで行動研究が行われていない原生生物を野外から採集し培養方法を試行錯誤する。
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