研究領域 | デジタルバイオスフェア:地球環境を守るための統合生物圏科学 |
研究課題/領域番号 |
21H05315
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
近藤 倫生 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (30388160)
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研究分担者 |
川津 一隆 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20747547)
永田 裕二 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (30237531)
大坪 嘉行 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (40342761)
加藤 広海 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (90727265)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
116,740千円 (直接経費: 89,800千円、間接経費: 26,940千円)
2024年度: 21,320千円 (直接経費: 16,400千円、間接経費: 4,920千円)
2023年度: 21,450千円 (直接経費: 16,500千円、間接経費: 4,950千円)
2022年度: 21,320千円 (直接経費: 16,400千円、間接経費: 4,920千円)
2021年度: 31,070千円 (直接経費: 23,900千円、間接経費: 7,170千円)
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キーワード | 土壌微生物 / 群集ネットワーク / 非線形時系列解析 / 培養実験 / メタゲノム / ネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
土壌微生物の群集構造は有機物分解や土壌呼吸に影響すると示唆されるが、そのメカニズムや原理は不明である。本計画研究では、培養実験系と非線形時系列解析、フィールド実験を組み合わせたデータ駆動型アプローチによってこの課題に取り組む。培養実験により、菌叢・機能遺伝子組成、および生物圏機能の時系列データを獲得、データ駆動型モデリングにより、種間および機能遺伝子間の相互作用ネットワークを構築するとともに、生物圏機能の鍵となる群集・メタゲノム構造・環境要因を特定する。推定の妥当性は、室内実験系と野外において検証されるとともに、土壌微生物群集機能を最大化するための方策構築に利用される。
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研究実績の概要 |
本年度は課題1と2に関する以下の研究を進めた。 ■ 研究課題1 - 実験培養系での解析【永田G】 本研究では、実験培養型から得られる菌相や遺伝子の時系列データ等をもとに、炭素源の資化において重要な役割を果たす菌相や遺伝子を特定しようとしている。この本研究課題において、土壌細菌集団に添加した炭素源の分解資化能と固定能に関わる菌叢・機能遺伝子組成および全有機体炭素量の経時変化のデータ獲得はあらゆる研究の基盤となる重要な核情報である。今年度は、褐色森林土から抽出した細菌群集に、分解し易さの異なる炭素源を添加して培養した際の、菌叢変化に加えて 、機能遺伝子組成の変化、添加炭素源の変動、全有機体炭素量、および各種代謝活性の経時変化のデータ獲得を目標として実験条件の検討を実施した。 ■ 研究課題2 - 種間・機能遺伝子間相互作用の同定【近藤G】培養実験型から得られたデータをもとに炭素源の資化において重要な役割を果たす菌相や遺伝子を特定する上での難しさの一つは、群集の動態を記述する支配方程式は予めはわからないことに一つの理由がある。そこで、本年度はあらかじめ支配方程式を仮定することなく、微生物群集動態の理解に資するデータ駆動型モデリングの手法開発とその実データへの適用を進めた。統計モデリング手法に基づき、微生物群集の相互作用強度とその変動の定量を実施したが、統計的バイアスの問題が生じていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題1については、菌叢および構成遺伝子の変化に関するデータセットを取得することを主な目標としていたが、この目標を達成することができた。特に分解し易さの異なる炭素源を添加した培養実験によって獲得した、添加炭素源分解資化能と固定能に関わる菌叢と機能遺伝子の経時変化データは今後のデータ解析を進める上で特に重要な進捗である。実際、このデータの解析により、炭素源によって菌叢および機能遺伝子の変化パターン、および種間相互作用が大きく異なることが明らかになった。 また、研究課題2については、昨年度の培養実験で得られた菌叢の経時変化データに対して、動的モード分解手法のひとつである非線形ラプラシアンスペクトル解析を適用した。これによって、菌叢の遷移や変動を説明する重要なモードを特定することができた。モードを分解する際に時間遅れを考慮することで、他のOTUより早く遷移や変動の兆候を示すOTUがあることも分かった。一方、培養実験データの一部で、各OTUの割合変化に対して菌叢全体の総生物量変化が100倍以上異なることで、相互作用の推定にバイアスが生じる可能性が示唆された。今後、相互作用構造の推定および相互作用に関わるモードの特定にはバイアスの問題に対して詳細な検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究課題2「種間・機能遺伝子間相互作用の同定」および研究課題3「実験系での検証(培養系・マイクロコズム)を以下の通り進める。 ■ 研究課題2 - 本年度は、動的モード分解を利用することで相互作用ネットワークの主要な相互作用モードとその時間変動の定量を可能にする。さらに、開発手法を微生物培養実験データに適用し、分解能を大きく向上させる機能を持つモード=相互作用の構造を推定する。 ■ 研究課題3 - 課題1で扱った細菌群集から、課題2で同定された炭素源分解資化能の鍵となる細菌種株を単離し(代表的な細菌種株は既に単離済)、モデルから推定された増殖の依存性と炭素源分解資化能における協調関係(あるいは阻害関係)について再構成培養系で検証する。明確な関係性が観察された場合には、その分子機構を生化学・分子生物学・遺伝学的手法を用いて解明する。また、課題2で同定された鍵となる機能遺伝子についても、当該遺伝子を単離された細菌株が有する場合には、その機能について、コードするタンパク質の生化学的解析と、保持細菌株における遺伝学的解析から明らかにする。鍵となる遺伝子を保有する株が単離できない場合には、メタゲノムから当該遺伝子をPCRで増幅し、そのタンパク質産物の機能を生化学的に解析する。
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