計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
スフィンゴミエリン合成酵素1(SMS1)は、セラミドからスフィンゴミエリンを合成する酵素であり、スフィンゴ脂質の細胞内局在を調節する重要な役割を担っている。前年度までに、我々は、SMS1欠損マウス(SMS1-KOマウス)の解析を行い、SMS1-KOマウスが、1)離乳以降の死亡率が高いこと、2)脂肪蓄積の減少に伴う体重増加不良を示すこと、3)耐糖能異常を示すこと、などを明らかにしていた。また、耐糖能異常に関する解析を進めてきた結果、SMSI-KOの膵島では、インスリン分泌能の低下、ATP合成量の低下、ミトコンドリア膜電位の異常、活性酸素種(ROS)の増加などの現象を見出していた。これらの結果から、SMS1-KOでは、膵β細胞のミトコンドリア機能に異常が生じて酸化ストレス状態になっていると考えられた。このことから、『SMS1-KOマウスでは、他の各種臓器においても、酸化ストレスの上昇が起きており、それがSMS1-KOマウスの多彩な表現型の原因になっている』可能性が考えられた。そこで、本研究においては、SMS1-KOマウスに抗酸化ストレス剤(N-アセチルシステイン、NAC)を投与することにより、SMS1-KOマウスの表現型が改善されるか検討した。その結果、NACをSMS1-KOマウスに摂取させることにより、1)生後死亡率が改善されること、2)脂肪組織の萎縮が若干改善されること、3)SMS1-KOマウスが示す高トリグリセリド血症が改善されること、などが明らかになった。また、現在、本領域の班員との共同研究により、ヒトSMS1の一塩基多型(SNPs)解析を進めており、ヒトSMS1のSNPsが高トリグリセリド血症や糖代謝異常などと相関関係にあるか解析中である。
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The Journal of Biological Chemistry
巻: 286 ページ: 3992-4002