研究領域 | 生物地球化学タグによる回遊履歴復元学の創成 |
研究課題/領域番号 |
22H05027
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
横内 一樹 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 主任研究員 (50723839)
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研究分担者 |
北川 貴士 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (50431804)
青木 かがり 帝京科学大学, 生命環境学部, 准教授 (60526888)
澤山 周平 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 主任研究員 (60761541)
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研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 回遊生態 / 履歴推定 / 生物地球化学タグ / 同位体指標 / 生物地球科学タグ |
研究開始時の研究の概要 |
本計画研究では,近年急速に発展を遂げた先進的な分析・解析を専門とする本領域の研究者と協働し,回遊する海洋生物の生態履歴を復元し,未だ明らかでない「海洋生物がなぜ回遊するのか?海洋生態系における回遊現象とは何か?」という根源的な問いに対し,定量的なデータから回答する新たな学問領域の創出に取り組む.具体的には,サケ・クロマグロ,ニホンウナギ等の河口・内湾魚類,カツオ・マイワシ(先進応用班),鯨類等を対象とし,複数の元素指標を用いて生活史を通じた回遊を正確に復元することで,背景にある環境・生物間の相互作用を明らかにする.
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研究実績の概要 |
沿岸魚類班:昨年度に引き続き、多元素同位体指標の開発のため、環境水試料、底生生物・魚類標本を収集し、以下を進めた。1)通し回遊魚エツについて耳石δ18OおよびSr同位体比の分析を実施し、由来河川の判別と生息範囲を推定法の開発を進めた。2)魚類肝臓のNd同位体比を測定するために、前処理法の検討を進め、魚類肝臓のNd同位体比分析法を確立した。3)イガイ殻を用いた伊勢湾のNd同位体分布地図を作成し、伊勢湾における魚類3種(クロダイ、ハモ、シログチ)の肝臓Nd同位体比の分析を行った結果、両者の対応状況には魚種ごとの食性・回遊が影響する可能性が考えられた。 サケ・クロマグロ班:1)昨年度、サケ稚魚の耳石δ18Oの環境水温履歴としての有効性が確認されたため、今年度は野外で採集された稚魚の耳石を分析し、測定されたδ18O値を水温値に換算して、時期ごとの海水酸素同位体比マップとのマッチングを行うことで稚魚期の回遊経路推定を行った。その結果、日本産個体に見受けられる特徴的移動様式を再現できた。2)クロマグロも同様の分析を行うために高知・岩手県で個体採集を行った。 ハクジラ班:大型鯨類の生息履歴推定手法確立のため,マッコウクジラを対象に次の二つの項目を実施した。1)有機物炭素・炭酸基炭素の安定同位体比分析を実施したところ、オスの成長に伴うδ13Cの変化に個体間で差異が見られたことから,オスの成長段階による生息域や栄養段階の変化は一様ではないことが示唆された。2)九州西方の五島海底渓谷でオス3個体に衛星発信機を装着し、回遊経路を調べたところ、これら個体は7月中下旬に五島海底渓谷から下甑島周辺に南下、または海底斜面沿いに100kmほど南下しその周辺に7月末まで滞在した。今回の結果は、過去の個体識別記録による推定回遊経路と整合的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な分類群にわたる対象生物について、標本収集・同位体分析手法の検討を他の計画班と連携を取りながら、計画どおり進めることができた。指標となりえる同位体の分析、参照する同位体マップの作成、生態履歴との対応の検討等、成果を得ることができた。また、衛星発信器を用いた観測等も引き続き展開し、データ収集を進めることができた。あわせて、学会発表および論文投稿も進めることができた。以上より、今後も研究進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、試料の収集と先進応用班および高度分析班と連携した分析を進める。また、結果の取りまとめを行う。 沿岸魚類班:環境や生態の情報を記録した指標候補同位体比についての分析手法の検討を進める。硬骨魚類の歯の構造炭酸基の同位体組成に及ぼす影響の検討を行う。これまで実施した回遊指標としての応用可能性のある魚類肝臓のネオジム同位体比等についても、魚類試料の元素同位体比組成を分析継続しデータの蓄積を進め、その組成から履歴情報を復元し,魚種ごとの生態との整合性の評価を行う。 サケ・クロマグロ班:代謝量が既知の飼育個体から得られた耳石の炭素安定同位体分析を行い代謝履歴の復元を試みる。具体的には、遊泳運動実験を行って個体の呼吸量を定量化し、対応する耳石の炭素同位体比を比較することで、同位体比の代謝トレーサーとしての妥当性を検討し、野外稚魚の代謝速度履歴を推定する方法を確立する。クロマグロ若魚についても、昨年度入手した個体の耳石を分析し、産卵海域推定を行う。 ハクジラ班:マッコウクジラを対象に安定同位体比分析、衛星発信機の装着を実施する。日本沿岸に漂着・座礁した個体について、上顎歯の成長層による年齢査定を実施し、成長層毎に安定同位体比分析を行い、雌雄それぞれの成長に伴う栄養段階の変化を明らかにする。また、昨年度採取したバイオプシー標本の表皮や個体の漂着地点情報を用いて、海域間の安定同位体比の差異を検出する。体組織の安定同位体比との擦り合わせを行い、雌雄の成長に伴う生息海域の変化を推定することを試みる。窒素炭素安定同位体比の長期的な時系列変化を把握し、栄養段階における長期的な環境変化の影響を調べる。衛星発信機の銛先の改良を行い、衛星発信機の長期装着を目指す。五島列島周辺海域にて衛星発信機を装着し、季節回遊を把握することを目指す。 以上の成果を取りまとめ、国内外の学会で発表し、学術論文として投稿する。
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