研究領域 | 高速電子で拓く次世代ナノ光制御 |
研究課題/領域番号 |
22H05032
|
研究種目 |
学術変革領域研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
秋葉 圭一郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子技術基盤研究所 量子機能創製研究センター, 主幹研究員 (80712538)
|
研究分担者 |
弓削 達郎 静岡大学, 理学部, 准教授 (70547380)
|
研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
43,810千円 (直接経費: 33,700千円、間接経費: 10,110千円)
2024年度: 13,000千円 (直接経費: 10,000千円、間接経費: 3,000千円)
2023年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2022年度: 20,280千円 (直接経費: 15,600千円、間接経費: 4,680千円)
|
キーワード | 電子線励起発光 / 光子間時間相関計測 / ナノ光学 / 光子バンチング / 光子統計 / 電子‐光子間の量子相関 / 光子相関測定 / 光量子状態 / 電子顕微鏡法 |
研究開始時の研究の概要 |
電子線を励起プローブとしたナノ発光に対して、量子光学の光子相関計測を適用することで、その発光の時間局在性が明らかとなり、ナノ分解能で発光寿命測定が可能となった。本研究では、光も物質も量子論で取り扱う理論構築を基盤として、この相関計測を発展させ、光の量子性の観点を取り入れた上で、ナノスケールでの光と物質の相互作用を可視化し、その本質的な理解を目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究では、電子線によって励起されたナノ発光に対して光子相関計測を行うことで、実現・展開されてきた電子線時間分解計測法について、量子論的に取り扱うことで相関計測を発展させ、ナノ空間分解能の光計測を革新する。 第2年度となる2023年度の補助事業では、前年度に得られた光量子状態モデルで理解される電子線励起コヒーレント発光の光子バンチングについて、様々な実験を行い、その一般性を示すことができた。この実験結果の解析を通して、電子線のショットノイズに起因する特有なバンチングは光子計数率の補足データによって分離することが可能であり、電子線励起発光の“真の”光子統計性を抽出できることを発見した。 また並行して、前年度に新たに見出された電子と光子の量子相関の活用を明らかとするため、電子線中の電子が光子を生成する過程についても量子論的な記述を行った。これによって、電子‐光子系の量子状態を書き下すことが可能になり、単一の電子によってコヒーレントに生成される光量子状態はポアソン分布の光子統計性を持つことが示せた。さらに、前述した“真の”光子統計性の抽出によって、実験的にポアソン分布となることを検証し、その妥当性を示すことに成功した。 さらには、電子線励起発光の“真の”光子統計性の抽出をインコヒーレント発光にも適用することで、電子線励起と光励起の違いを実験的に明らかにすることができた。 以上の結果により、本研究でナノ空間分解能光計測の新たな礎とすべく取り組んできた、電子線励起発光の光子相関計測の量子論的な取り扱いが完成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究においてナノスケールでの光と物質の相互作用をプローブするために活用する電子線励起発光について、当初の想定と異なる形で本質的な理解ができた。さらに、広く用いられている光励起による発光とブラウン管テレビの発光原理に用いられてきた電子線励起の発光には、これまで考えていた以上の明確な違いがあることが明らかとなった。学術的な意義も高いと考えられ、想定外ではあるが、大きな進展があったと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに本研究で狙いとしていた電子線励起発光の光子相関計測の量子論による基礎付けが既に完成したといえる。今後は、これをベースにしたナノスケールの光と物質の相互作用の観察を進める。電子線照射位置毎に得られる各種の測定値から、相互作用に関係する情報を引き出すシステムを開発し、パーセル効果などの測定を通して、システムの確認とともに現実的な測定条件について詰めていく。また、得られる計測情報と相互作用の関係性の確認も行いながら、角度分解分光測定を組み込むなどし電子線励起発光顕微鏡自体もアップデートする。このようにして、ナノスケールの光と物質の相互作用の可視化を行う。
|