研究領域 | 高速電子で拓く次世代ナノ光制御 |
研究課題/領域番号 |
22H05033
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
三宮 工 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (60610152)
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研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
39,000千円 (直接経費: 30,000千円、間接経費: 9,000千円)
2024年度: 16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2023年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2022年度: 9,880千円 (直接経費: 7,600千円、間接経費: 2,280千円)
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キーワード | 透過電子顕微鏡 / カソードルミネセンス / ナノフォトニクス / 電子顕微鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
光ナノデバイスは、次世代の高速情報通信、センサー技術におけるキーテクノロジーである。電子デバイスの小型化が著しく進行する一方で、光デバイスの小型化・高効率化には波長限界を超えて局所に光を閉じ込める必要がある。この「光の閉じ込め」がナノ光デバイス実現の要であり、信号/エネルギー変換を担う光ナノアンテナの最も重要な機能である。しかしこの光閉じ込めを直接観察する方法は限られており、光ナノアンテナにおける指向性や機能性の鍵となる運動量や位相を合わせた計測が行われていなかった。本研究では、電子線を用い、これらの複数の物理量にナノスケールで同時にアクセスする手法開拓を行い、新奇光ナノアンテナを創製する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、これまでの研究において確立された、電子線励起発光(カソードルミネセンス、CL)を用いた空間位置・運動量・エネルギー計測に発光位置分解を加えた系を統合した顕微システムをを用いて、干渉を用いないインコヒーレントな位相抽出法を検討し位相回復アルゴリズムを作成した。いわゆる回折イメージングと同様に、フーリエ変換を用いた反復的な方法により、2枚の画像から位相と振幅の両方を回復するアプローチを適用した。CLシミュレーション像においては、位相回復できており、アルゴリズムの動作確認ができている。すでに実測を開始しているが、位相回復まで至っておらず、2024年度にこれらの実測・解析を引き続き行う予定である。また、確立した4次元計測法に誘電体球ナノアンテナの計測を行った。データ取得できた一方でメカニズム解明ができていないため、これらも2024年度に実施する。 さらにビッグデータ取得を目指して、大量のデータを同時取得するための多重化計測にむけたシミュレーションを実施した。1点ずつのスキャンではなく、複数の点からなるビームを用いて、スキャン点数を減らして計測を行い、適当な前提条件を置くことで、細かいスキャン点数のデータの復元ができると考えられる。これにより、ダメージをうけやすいサンプルの測定点数を減らすことが可能となる。シミュレーションにより、複数の穴をあけた絞りを用いたビームによりある程度像回復が可能であることが実証できた。さらに実測のため、FIBを用いて、複数穴からなる絞りの作製を行った。この絞りを電子顕微鏡コンデンサ絞り位置に導入し、多点ビームの確認、および多点ビームによるサンプルの計測を行った。しかし、多点ビーム調整は想像以上に簡単ではなく、2024年度にこれらのデータの解析、測定方法の再検討をする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画していた位相回復アルゴリズムの作成が予定通り行うことができ、次年度の実測にむけた指針がたった。また、これらの必要なハードウェアの動作も問題ない。また、発光位置計測において、新たな知見が得られつつあり、次年度に向けて新たな研究テーマが立ち上がりつつある。アンテナ計測の一部は論文として出版されており、また蛍光体測定応用も論文化された。 空間位置・運動量・エネルギー計測に発光位置分解を加えた系を統合した顕微システムへ時間分解計測系の導入も行えており、想定以上に進んでいる。 関連内容に関しても、学会においても速報を数多く発表できており、全般に計画以上に進展しているといってよい。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究において、2枚の異なる空間の画像から、反復的な手法による位相回復のためのアルゴリズムがほぼできあがっており、シミュレーションでは位相回復が確認できている。一方で、実測においてはシミュレーションのような完全な測定にはならないため、位相回復可能な測定条件の最適化、それに必要なハードウェアおよび制御・解析ソフトウェアの最適化はいまだ必要であるため、2024年度も引き続き、ハード・ソフトを含むシステム構築をすすめる。また、発光位置分解計測から、プラズモニック結晶における発光位置に関する新たなデータ・知見がえられてきているため、これらの解析・シミュレーションを並行して行っていく。 1点ずつのスキャンではなく、複数の点からなるビームを用いて、スキャン点数を減らして計測を行い、適当な前提条件を置くことで、細かいスキャン点数のデータの復元ができることをシミュレーションでは確認できたため、2024年度はさらなる多重化にむけて実験的にこれらを確認する。また、絞り形状を変化させる中で、半月状の絞りをりようすることで、極めて簡便に電子顕微鏡における位相コントラスト増強ができることがわかってきた。これを用いて、磁性体・生物試料・有機物試料等の測定を実施し、本手法の有用性を確認する。同時にこのコントラスト回復のメカニズムをコントラスト伝達関数の解析的な観点、また電子顕微鏡像シミュレーションから解析を行っていく。あらたな電子顕微鏡手法として実用的に大いに期待できるため、光計測に直接かかわらない派生研究ではあるが、ある程度大きな比重をおいて研究を実施する。
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