研究領域 | アプタマー生物学の創成 |
研究課題/領域番号 |
22H05036
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 由起子 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (80610683)
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研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
35,620千円 (直接経費: 27,400千円、間接経費: 8,220千円)
2024年度: 12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
2023年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
2022年度: 12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
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キーワード | 脳神経疾患 / 神経科学 |
研究開始時の研究の概要 |
アルツハイマー病(AD)において脳内Aβ量の増加は発症リスクである。そのためAβホメオスタシス機構の解明は、脳の恒常性維持のための生理学的知見としても、AD発症機構理解の上でも重要である。我々はAβ分解酵素としてKallikrein-related peptidase 7(KLK7)を新規に同定し、アストロサイトがガーディアン分子KLK7の発現を制御するAβホメオスタシス機構を備えていることを見出してきた。本研究ではこの分子機構の全容を同定すると共に、DNAアプタマーを用いて脳特異的かつ分子機能特異的制御を実現し、KLK7を介したAβホメオスタシス機構の意義と創薬応用の可能性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
脳内における異常タンパク質の増加は、脳機能の恒常性維持に破綻をきたし疾患発症に繋がることから、脳には異常タンパク質に応答するホメオスタシス機構が存在する。その一つとして本研究では、脳内の異常タンパク質でありアルツハイマー病(AD)発症原因分子であるAβ量を制御するガーディアン分子Kallikrein-related peptidase 7(KLK7)に着目する。これまで、アストロサイトが細胞特異的にKLK7制御機構を有する可能性を見出しているが、その詳細な分子機構は明らかではない。そこで本研究では、KLK7を介したアストロサイト特異的脳内Aβホメオスタシス機構の解明と、DNAアプタマーによる脳特異的KLK7制御を研究目的とし、脳内Aβホメオスタシス機構の意義を解明する。 これまで、アストロサイトに対してAβを短期間投与して刺激を行うと、KLK7発現が上昇することがわかっている。そこでKLK7発現制御機構解明のために、Aβ刺激に応答するKLK7上流のプロモーター領域を探索したところ、SOX9結合領域が関与する可能性が明らかになった。またプライマリーアストロサイトに対し、SOX9をshRNAでノックダウンするとAβ刺激によるKLK7発現量の増加がキャンセルされること、逆にレンチウイルスを用いてSOX9を過剰発現するとAβ刺激がなくともKLK7発現量が上昇することを見出した。これらの結果から、アストロサイトにはAβをセンシングしたのち、SOX9を介したKLK7転写制御機構があることが示唆された。今後、その詳細なメカニズムを解明していきたい。また、SOX9を介したKLK7発現制御機構が生体内でも起きているか、またそれがAD病態形成制御に寄与しうるかについても検証していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Aβ量を制御するガーディアン分子というKLK7の役割において、アストロサイトがAβを受容しKLK7発現を上昇させるメカニズムが少しずつ明らかになってきたと考えられる。具体的な転写因子を同定することができたことは、今後の制御メカニズム解析の基盤となると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
SOX9を介したKLK7発現制御機構の詳細、およびKLK7を介したAβホメオスタシスへの影響を、プライマリーアストロサイトを用いるだけでなく、ADモデルマウスを用いたin vivo解析によっても検討していきたい。またAβを用いて短期ではなく慢性的に刺激すると、KLK7発現量が減少するという知見も得ている。後期AD患者脳内を模倣しうると考えられる慢性Aβ刺激下でのKLK7発現制御機構にも着目し、検討を行いたい。
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