研究領域 | 構造不規則系のレオロジー:アナンケオン動力学の確立 |
研究課題/領域番号 |
22H05040
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
岩下 拓哉 大分大学, 理工学部, 准教授 (30789508)
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研究分担者 |
長屋 智之 大分大学, 理工学部, 教授 (00228058)
Ivan Lobzenko 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 博士研究員 (30802293)
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研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
53,040千円 (直接経費: 40,800千円、間接経費: 12,240千円)
2024年度: 17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2023年度: 17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2022年度: 17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
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キーワード | 粘度 / コロイドガラス / 構造解析 / 相転移 / 小角X線散乱 / 大気平衡 / 相図 / レオロジー / 荷電シリカ分散計 / ゼータ電位 / 電気伝導度 / 小角散乱 / 荷電コロイド分散系 / pH / ガラス転移 / 荷電シリカ分散系 / 電気粘性 / コロイド結晶 / 電気粘性効果 / シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
ナノ・マイクロサイズの荷電コロイド粒子が溶媒中に分散した荷電コロイド分散系は,多彩な外場応答性をもつ機能性流体である.塩添加で,その粘度が4桁以上も劇的に低下する電気粘性レオロジーは,流れ易さと動的構造変化を結びつける絶好の特異現象である.しかしながら,粒子配置の不規則性のために,レオロジー特性の理解が十分ではない. 本研究では,計算機シミュレーション,レオロジー測定,小角X線・光散乱実験を融合し,流れ場中の荷電コロイド分散系の動的構造変化の素過程,すなわち,動的素励起(アナンケオン)を特定かつ発生条件を定量化し,ミクロな動的素励起からマクロな電気粘性レオロジー特性の接続原理の解明を目的とする.
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研究実績の概要 |
ナノ・マイクロサイズの荷電コロイド粒子が溶媒中に分散した荷電コロイド分散系は,多彩な外場応答性をもつ機能性流体である.コロイド懸濁液の粘度を高精 度に制御するためには,溶液やコロイド粒子の電気的物性を正確に測定し,流動特性の定量評価,サンプル調整法を確立する必要がある. 令和5年度は,令和4年度に調製した脱塩したサンプルの物性評価とNaOHの添加時の挙動,その粘度測定と構造解析を目的とした.物性評価においては,令和4年度から引き続き電気伝導度, pH, ゼータ電位の物性測定を行い,粒子体積分率依存性について調べた.また,再現性の高い測定と安定な測定を実施するために,理想的な脱塩されたサンプルよりも,むしろ大気平衡下にあるサンプル作製に重点を置いた.速度論に基づいた反応方程式と微粒子分散系の電気伝導度を融合することで,溶液中のイオン強度や有効粒子電荷を得るモデルを構築し,その結果については研究会「凝縮系の理論化学」にて報告した. 一方,レオメーター を用いた粘度測定では,蒸発防止のために銅板を用いた測定環境を冷却する治具を作製し,流動曲線の測定を実施した.低濃度(0.001 %vl)から高濃度(0.35 %vl)までの測定を行い,コロイド溶液のレオロジー測定した.結果,液体相や固体相にともなう典型的な挙動を観測し,粘度に基づいた流動下の相図の作製を行った.さらに,低濃度の粘度が測定できる落下式粘度計を導入し,レオメーター の結果との整合性の確認や低濃度の粘度を高精度に測定した.また,大気平衡下にあるサンプルの相図を作製するために,佐賀シンクロトロン放射光にて小角X線散乱実験を実施し,相図の妥当性の検証を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
荷電コロイド分散系の粘度測定を重点的に実施し,また作成したサンプルの小角X線散乱像を測定することができ,本年度の目的を達成できた.散乱実験用のサンプルセルの改善や小角X線散乱象の定量的な解析,および重点的な粘度測定を実施するには至らなかったが,実施項目の達成度の観点では本研究は順調に進展していると判断できる.また,電気伝導度から粒子間相互作用を導きだすモデルを構築することができ,次年度の計算機シミュレーション研究へと円滑に進めることにつながり,計画で通りに進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は,モデリングにより抽出した粒子間相互作用ポテンシャルを用いて,計算機シミュレーションを実施し,荷電コロイド分散系の粘度発現に至る微視的構造緩和を抽出することを目的とする.また,令和5年度は,粘度測定にかかる装置利用期間が専有ではなく限定的であり,測定時間の確保が今後の課題となる.実験を促進するために,レオメーターの購入を検討している.
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