研究領域 | 間質リテラシ―:間質の細胞多様性に基づく疾患メカニズムの統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
22H05063
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
内藤 尚道 金沢大学, 医学系, 教授 (30570676)
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研究分担者 |
田井 育江 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90749508)
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研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
31,980千円 (直接経費: 24,600千円、間接経費: 7,380千円)
2024年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
2023年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
2022年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
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キーワード | 間質性細胞 / 血管 / リンパ管 / 腸 / 多細胞間クロストーク / 恒常性 |
研究開始時の研究の概要 |
全身の組織及び臓器は、機能の中心を担う実質細胞と、実質細胞を支持する間質に存在する様々な種類の細胞(間質性細胞)で構成される。これまで様々な生命現象や疾患病態は、実質細胞の機能を主体に理解され、実質細胞との関係性という観点から間質性細胞の意義は見出されてきた。本研究では間質性細胞に焦点を当て、複数の間質性細胞が織りなす多細胞間クロストークを解明することで、間質性細胞の活動が生命現象に及ぼすインパクトを解明する。1細胞解析、3次元イメージングなど最先端の解析手法を駆使して、間質性細胞の重要な構成要素である血管・リンパ管に着目し腸を解析対象として、間質性多細胞間クロストークが持つ意義を解明する。
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研究実績の概要 |
全身の組織及び臓器は、機能の中心を担う実質細胞と、実質細胞を支持する間質に存在する様々な種類の細胞(間質性細胞)で構成される。これまで様々な生命現象や疾患病態は、実質細胞の機能を主体に理解され、実質細胞との関係性という観点から間質性細胞の意義は見出されてきた。 本研究は、腸を主たる研究対象として血管とリンパ管に焦点を当てると同時に、組織を構成する実質細胞、および他の全ての間質性細胞との細胞間相互作用を解析することで、間質性細胞は単なる実質細胞の支持組織という既存の概念から脱却し、間質性細胞に主眼に置いて研究する。腸の生理機能と疾患病態は、複数の間質性細胞がクロストークすることにより形成される複雑系により制御されるという仮説をもとに研究を進め、炎症と腫瘍をモデルとして、病態の形成と進行における複雑系間質性細胞クロストークの意義を血管・リンパ管研究の観点から解明することで、間質を再定義(間質リテラシー)することを目的とする。実験方法としては1細胞解析、3次元イメージングなど最先端の解析手法を駆使して、間質性細胞の重要な構成要素である血管・リンパ管に着目し腸を解析対象として、間質性多細胞間クロストークが持つ意義を解明する。 また領域内で連携して各班が専門とする免疫細胞、神経系細胞、間葉系細胞に関する専門的知見を取り入れることで、血管・リンパ管と複数の間質性細胞を統合的に解釈して、腸の機能と疾患病態における間質性細胞の機能に関する概念の変革を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに腸管の血管内皮細胞とリンパ管内皮細胞の網羅的遺伝子発現解析と形態学的解析に取り組んだ。その結果、血管とリンパ管の形成に関与する可能性がある候補遺伝子を同定した。そのうちの複数の因子は血管内皮細胞での機能は不明であった。またそれらの因子に関連する遺伝子には、発生過程における血管の構築に重要と報告される遺伝子を同定した。これらの遺伝子の機構解析を行うため、血管内皮細胞特異的KOを作製した。また病態モデルを解析することで、これらの遺伝子群が、特に炎症応答に関与していることが明らかになった。 また本学術変革研究のテーマである多細胞間クロストークに着目して解析に取り組んだ。血管内皮細胞は特に血球細胞と相互作用していることが明らかになった。血球細胞の中で組織常在型マクロファージと血管の研究は盛んに行われているが、本研究ではある種のリンパ球が、炎症反応の制御に重要である可能性が示された。特に、そのリンパ球とマクロファージ、血管のクロストークが、炎症制御に重要である可能性も得られている。そしてその炎症が制御できない場合は、実質細胞および組織の機能異常につながった。 すでに血管内皮細胞特異的KOマウスの解析に着手し、本研究のテーマである間質性細胞の多細胞間クロストークに、血管内皮細胞という点からアプローチできている点を踏まえると、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は2年間の研究成果を総括し、さらに以下の3つの研究をさらに発展させる。 1. 腸における生理的な間質性多細胞間クロストークの包括的理解に取り組む。 腸は血管とリンパ管を含む多彩な間質性細胞が、規則的に配置され細胞間相互作用が生じることで組織の恒常性が保たれていると考えられる。その生理的な間質性多細胞間クロストークを理解するために、胎仔期をモデルに解析する。胎仔期から新生仔期にかけて腸では機能が劇的に変化し、さらに腸内細菌叢に対する免疫応答が開始する。この変化の前後を比較することで、腸の全間質性細胞に生じる変化を解明する。2年間で腸管の免疫染色と網羅的遺伝子発現解析を行なった。遺伝子発現解析の結果、腸の血管内皮細胞の恒常性維持に重要である遺伝子を同定し、その遺伝子の血管内皮細胞特異的KOマウスを作製した。その結果、小腸と大腸は血管の維持機構が異なり、その維持機構にはリンパ球が関与している可能性が明らかになった。本年度は、そのリンパ球の特徴を明らかにする。 2. 腸炎モデルと腸腫瘍モデルを用いて、血管内皮細胞とリンパ管内皮細胞に着目して、間質性多細胞間クロストークの解明をおこなう。昨年度までに炎症モデルと腫瘍モデルで、組織に遊走する血球細胞に着目して、その細胞分布を解析した。炎症モデルでは計画1の結果から示されているように、特定のリンパ球を多く認め、また小腸と大腸では、炎症時に認めるリンパ球が異なる可能性が得られた。腫瘍モデルでは、炎症モデルと異なり、その特定のリンパ球の関与は低い可能性が得られた。計画2でも、計画1と同様に、その特定のリンパ球に着目して、どのように遊走するのか、あるいは局所で分化・増殖するか、骨髄移植モデルマウスを作製して解析を行う。 3. リンパ管の発生過程に重要な遺伝子の解析を通じて、腸管のリンパ管内皮細胞と間質細胞とのクロストークに関して解析を継続する。
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