研究領域 | 微生物が動く意味~レーウェンフックを超えた微生物行動学の創生~ |
研究課題/領域番号 |
22H05066
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
中根 大介 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (40708997)
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研究分担者 |
菅 哲朗 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (30504815)
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研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,540千円 (直接経費: 35,800千円、間接経費: 10,740千円)
2024年度: 14,300千円 (直接経費: 11,000千円、間接経費: 3,300千円)
2023年度: 14,300千円 (直接経費: 11,000千円、間接経費: 3,300千円)
2022年度: 17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
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キーワード | べん毛 / 光学顕微鏡 / 微小流体デバイス / 感染共生 / 動態計測 / 感染 / 共生 / ドリル運動 / 巻き付け / ドリル / 細菌 / らせん / イメージング |
研究開始時の研究の概要 |
べん毛は細菌に普遍的な運動装置である。水中にたなびく細い繊維構造を回転させて推進する。しかし、ある種の細菌はべん毛繊維を体に巻き付けて、巻き付けたままドリルのように進むことができる。このドリル戦車運動の真の意味を理解するために、in vivo すなわち自然環境下で細菌1個体におけるべん毛繊維の「動き」と「かたち」を光学顕微鏡下で可視化する。
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研究実績の概要 |
本研究では細菌の「ドリル運動」に注目して研究を実施した。一般的に細菌はべん毛というらせん繊維構造を水中にたなびかせて遊泳する。しかし、近年、感染・共生に関与する細菌の多くはべん毛を自身の体に巻き付けて、巻き付けたまま推進するというユニークな運動を持つことが明らかになってきている。本研究では、このドリル運動の動態を光学顕微鏡下で可視化することで、このユニークな運動の仕組みと役割を明らかにすることに挑戦した。 ドリル運動をする細菌であるCaballeronia insecticolaと、ドリル運動ができないBurkholderia anthinaを実験材料とした。両者のべん毛繊維の熱ゆらぎを測定することで、繊維の根元に存在するHookの柔らかさを比較したところ、ドリル細菌は非ドリル細菌よりもHookが7倍柔らかいことが明らかになった。また、Hookの構成タンパク質であるFlgEを交換することで柔らかさも入れ替わることを明らかにした。この変異株の構築はA03班の菊池グループにより、Hookの柔らかさの違いによるべん毛巻き付けのシミュレーションはA02班の和田グループとの共同研究により実施した。加えて、宿主であるホソヘリカメムシの体内でもべん毛を巻き付けながら運動する様子をとらえることに成功した。また、宿主体内の狭小空間を微小流体デバイスによって再現し、その中に細菌を閉じ込めることで、空間的な制約により細菌がドリル運動へと移行する様子を明らかにした。 このような細菌のドリル運動を評価する微小流体デバイスを、Burkholderia近縁種だけでなく、サルモネラやビブリオといった多数の細菌種にも適用させた。約10種の細菌種を細い通路に閉じ込めて「細菌オリンピック」を開催し、運動を定量的に評価した。これらの一連の研究を学術論文として準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度に立ち上げた微小流体デバイスを軸に、研究を大きく発展させることができた。申請者のA01班が、A02班のシミュレーション、A03班の遺伝子工学実験と組み合わさり、学問分野横断的な研究を進めることが可能となっている。この内容に関連する研究は学会等でも高く評価されており、発表した複数の学生が1年の間に計8件の学生発表賞を受賞した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最後の1年であるため、これまで得られた成果を論文としてまとめ、国際的な科学誌に掲載をする。申請書で提案した内容はこの2年の間に達成できているため、今後はさらに本領域研究を発展させるべく研究を進めていく。例えば、本研究で構築した微小流体デバイスは、べん毛のドリル運動に限らず、走化性や走流性といった微生物の応答全般に対する研究において広く使われる可能性があるため、積極的に共同研究を進めていく。
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